第5話-②

「言われてみればそうだね。そう考えられてればお父さんお母さんにもイライラしないで済みそう。そういえば先生、最初にいい反応は期待しないでくれって言ってたものね。今のところいい感じよ。カワイソがったりしないし、無駄に慰めようとしたりしないし」

「だって君は、自分のことできちんと折り合いをつけているように見えるから。でも辛くなった時は言ってくれ」

 僕だって、勝手にカワイソがられたくはない。僕は自分が幸せだと思っている。確かなことはわからないが恐らく、彼女も。

「お父さんお母さんはね、きっといつか治療法が見つかるよ、ってよく言うの。二人が私のために言ってくれてるのはわかるけど、望みの薄いことを言われてもねって思ったり?」

 少し悲しげに笑う。こういった表情は非常に大人っぽい。

「確かに希望も大切だ。でもあまり現実的に思えないならそれを心の拠り所にはすべきじゃないかもね。それが実現したら素晴らしいことだけど。現実的な希望を持つのはとってもいいことだと思うよ。一日一日を生きる力になるような」

 さて、君の希望はなんだろう?

 彼女はしばらく考えてから顔を上げた。

「面白そうな小説を見つけたの。でもそれ、図書館に入ってないみたいで。まだ読めてないんだけど、それを全部、最後まで読み切りたい」

 連載物なのだろうか。読み切りたいという願いは、素朴で実現可能な願いに思えるが、彼女にしては少し大きな希望を言ってみたのかもしれない。

「とっても素敵な希望だ」

 笑う顔はやはり、小学生らしく無邪気だ。

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