第4話-③
ふと思った。黒い髪、白い肌、小説の読みすぎで定まらない口調。
「なんだか君は彼女に似ているね」
「え、そうなの? 私が百合なのかしら」
「君、前世の記憶はあるかい?」
半分冗談で言ったにもかかわらず、少し考え込んで、それから首を振った。
「なら違うな。それにまだ百年は経っていない」
「本当の百年なんて死んじゃうよ」
「きっとあれは、死んだその先でまた会いましょうってことだったのかな。どんな形にせよ」
「それって先生、早く死にたくなったりしない?」
「残念ながらそれは許されていないんだ。あなたが見た百年をきちんと教えてね、と念を押すように言われて、僕はうっかり『わかった』と言ってしまった」
でも教えられることなんて、それこそ日が昇った沈んだくらいだ、と言っても無駄だった。こんな小説が出た、とかそんなのでいいからね、と。これは百年で済むだろうか。
よく考えてみれば、『私のこと、待っていてね』ではなく、『私、百年待っているからね』と言った気がしてきた。百年分の報告をできるようにしておかなくては。
遥か遠くの百年後を思い描こうとしてみるが、よくわからない。
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