第3話-①

 今日は勉強を教えていた。

 と言ってもとても小学生の勉強ではない。相対性理論を教えてくれと言われたのだ。僕だってろくにわかっていない。二人で頭を痛めながら考えることになった。

「つまりどういうことよ!」

 彼女が声を荒げると、後ろでグラフが少し跳ねた。

「少し休もう。僕も疲れた」

 僕らみたいなのが広すぎる宇宙なんかを理解しようとするのが悪い、そんなことできるわけがないと言い合い、なんとなくふわっとわかればいいということに落ち着いてしまった。

 こんなことは恐らく心臓によくない。やめにしよう。

「にしてもどうしてまた相対性理論なんて」

「読んでたSFものに出て来たのよ。辞書の説明ではよくわからなくて」

「辞書に書いてるのかい?」

「書いてるわよ、少しなら。見る?」

「いや、いいよ、お腹いっぱいだ」

 漢字辞典、国語辞典が積まれた所に手を伸ばすので慌てて言った。

「でも、それなら百科辞典があってもいいと思うよ」

「この部屋に置ける?」

 彼女の知識欲ではたしかに、買うなら相当立派な辞典が必要になりそうだ。なんとかここに収められても、もし地震が来たら雪崩の如く崩れてしまう。何かの時に器具などを運び込みにくくなってしまってもいけない。

 今時なら辞典がなくてもタブレットなどで調べられるが、彼女の親は電子機器の悪影響を恐れているようだ。彼女は小学生だし、辞書だけでも特別不満はないようなのでいいだろう。

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