10月12日(水) 16:44

「――というわけで、インタビューをさせてもらいたいんですけど」


 翌日の放課後。準備をしてから生徒会室を訪れた俺は、そこにたたずむたったひとりの女子生徒にそう言った。

 たったひとりの女子生徒――生徒会長。彼女は俺の言葉にくすくすと笑って反応する。


「正直だね、君」

「早く記事を書かないと〆切シメキリがやばいんで」


 部長の巻きえを食らって一緒に怒られるのはゴメンだし。


「ふふふ。私は嫌いじゃないけどね、そういうの」


 俺の答え方がお気にしたのか、今度は声を上げて破顔はがんした。あわせて、ふんわりとカールした髪が揺れて、うっすらとられたリップが光る。

 生徒会長というからにはもっとおカタい人だと思っていたけど、意外にもフランクな人物のようだ。だからこそ生徒会長に選ばれたのかもしれないが。


 まあそれはいい。今回俺がインタビューしたいのは生徒会長じゃない。彼女がもつもうひとつの一面、つまりは『5分探偵』の方だ。


「でも、せめてアポはとってほしかったかな」

「すみません。こっちの事情でいきなりになってしまって」


 生徒会長からしてみれば迷惑めいわくもいいところだろう。


「無理そうでしたら、また日をあらためますけど」


 〆切までさらに余裕よゆうがなくなるのは痛いけどしかたない。インタビューは相手があって成り立つのだから。


「うーん、じゃあそうさせてもらおうかなあ……と思ったけど、せっかく来てくれたんだし、いいよ」

「本当ですか?」

「もう少ししたら先生との打ち合わせがあるんだけど、それまでの間ならね。運のいい君にめんじて」

「運がいい? 俺がですか?」

「うん」


 生徒会長はニコリと笑う。


「ちょうど昨日にひとつ、事件を解決したところなんだよ」


 まだそんなにウワサになってないから、スクープもののネタかもしれないよ? なんてウィンクしながら言う。そして、


「よかったらそのインタビューがてら、現場に行く?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る