悪魔との取引

@Rys

第1話 犬も歩けば悪魔に出会う

世界が溶けてしまえばいいのにと思うような夏、僕は彼に出会った。

仕事終わりの橋の上、僕は考え事をしながら川の音を聞いていた。

「すいません、犬飼さんですか。」

横を見ると、男でもドキドキするようなスーツ姿の美男子がいた。

「えっ、はい、犬飼ですけど。」

「僕と契約しませんか。」

えっ

「いや怪しいものではありません。リョウといいます。あなたの願いを叶える代わりに、あなたの大事な人からあなたの記憶が消えるというだけの話です。」

怪しさしかなかった、けどなぜだろう自分の置かれた環境からか、彼があまりにも現実離れをした話をしていたからか話を聞いてしまった。

「うーん、僕これから夜食べるんでその時お話を聞いてもいいですか?」

もちろんです。お供いたします。女の人が見たら卒倒しそうなスマイルを浮かべて彼は言った。


「レバニラ定食一つ、あなたは?」

「同じの一つお願いします。」


「じゃあレバニラ定食2つお願いします。」

「えっ、かしこまりました。ではレバニラ定食2つですね。」

「で、さっきの話は何の冗談なんです?」僕は悪魔に聞いてみた。

「いや冗談ではありません。私は悪魔で、先程の通りあなたの望みを叶えさせてた抱きたいという次第です。」

はっ?笑

イケメンは相変わらずイケメンで、今よく見るとこんなに真夏なのにしっかりとスーツを羽織っている。

「えーつまり?どーゆーこと?」

あなたの望みを叶えさせて頂きたいということです。でも私は悪魔なので、代償を払って頂きます。私の場合は誰かから貴方の記憶が無くなることになります。

「うーん?お金は払わなくていいの?」

「はい一切頂きません。」

僕は童顔でよく宗教の勧誘やら、マルチやら色々頼まれるのだが、こんな勧誘は初めてだった。

それだから逆に少々面食らってしまった。

「おまちどうさま。レバニラ2つです。」


「まー食べようか、でどうしたらいいの?」

イケメンはもはや話を聞いていない。レバニラ定食なんてそんなに珍しいものでもないのに。

「うわ~こんなに美味しそうなの食べるの久しぶりです。頂きます!」

笑まーいいか食べようか。

イケメン悪魔は相変わら眩しいぐらい二コニコしながらレバニラを口に運んでいる。

なんだか声をかけづらいぐらい。

少し食べ終わってペースが落ちてきた事を見計らってから、再び声をかけた。

「で、僕はどうしたらいいの?」

「田中さんは、願いを言ってもらうだけで大丈夫です。そうしたら誰かから田中さんの存在が消えます。願い事の大きさよって、その範囲は大きくなります。」

「えっ願い事を言うだけでいいの?」

「はい。」

「じゃーさーこのレバニラ定食無料にならないかな?」

「かしこまりー!」

「テンション高くない?笑

しかもそれだけでいいの?何もして無さそうだけど。」

「はいもう上には届いていますので、手続きは大丈夫だと思います。」

「えっほんとに?」

「本当です。レジに持っていって見てください。

分かったよ!」

イケメン悪魔は口をナプキンで拭きながらそう答える。

「すいませ~ん、すいませ~ん。」

お店の人はいるのに全然答えてくれない。

「田中さん大丈夫ですよ、ここは無料なので、あと無視されるのは、多分あのレジの人から田中さんという存在が消えたからだと思います。存在が消えると言動すべてが認知できなくなりますので。」

「えっじゃあこのまま出てもいいの?」

「はい大丈夫だと思います。」

「でも君の分は?」

「私は悪魔なので頼むことも出来なければ、請求されることもありませんので大丈夫です。」

あーだからあんなに美味しそうにレバニラ定食食べてたのか。

「じゃあ出て見るからね、もし捕まったら君のせいって言うからね。」

「はいー。もちろんです。」

お店を出ても店の人には何も言われず、何も問題なかった。

もはや彼の言うとおりなのかはまだ半信半疑だが、彼は嬉しそうに寄ってきて。

「ねっ大丈夫だったでしょ。」

僕は決意した。彼が悪魔だろうとなんだろうと構わない。彼に頼ってみようと。

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