第84話
屋敷全体が寝静まった夜の談話室。
そこでバーンズ伯爵夫妻とローラン、私兵の隊長が集まり、リリーと三人の男達の処遇について話し合いが行われた。
談話室は暖炉の中で火がパチパチと燃える音以外は何も音はせず、静かだった。
まず、私兵の隊長が四人を尋問して聞き取った情報を交えて事件の詳細を報告する。
リリーと男達が事件を起こした動機や目的等についても、当然その報告の内容に含まれている。
それを踏まえた上で、処遇をどうするか話し合いが行われた。
サンティア王国内では何か事件や揉め事が起きた場合、基本的に事件が起きた場所を治めている者の裁量で事件の犯人や揉め事を起こした者は処断される。
処断する前に調査した結果、国家全体に関わるような悪事だったと判明した場合は騎士団が動くが、そうではない場合については国は報告だけ受け取り、基本的には関わらない。
今回の場合で言うとバーンズ伯爵領内で起きた事件なので、バーンズ伯爵が犯人を処断する権利を持つ。
それ以上に今回の事件はバーンズ伯爵家の令嬢を平民が誘拐し、人身売買しようとするという極めて悪質な事件だ。
バーンズ伯爵が犯人達を処断しない理由がない。
四人で話し合いをした結果、アデレードにしようとしたことをリリーと三人の男達にするということで、全員の見解は一致した。
人を呪わば穴二つ。
人を誘拐して、身体を弄び、変態趣味の金持ちに売ろうとしたのだから、同じことをされても文句は言えない。
まさに自業自得だ。
ただ、身柄に対して金銭のやり取りが発生するのは色々と問題がある為、表向きはバーンズ伯爵から譲渡という形になる。
バーンズ伯爵は三人の男達をそれぞれ別々の変態趣味の男色家に送り、リリーは若い娘を性的に甚振ることが大好きで、口に出すのも憚られるような変態趣味の金持ちに送ることにした。
三人の男達は去勢された上で、その道のプロに男色家が喜ぶような調教を施され、リリーはリリーで娼婦顔負けの調教を施されてから送られる。
因みにリリーが送られる予定の変態趣味の金持ちとは、とある伯爵家の当主で、”これまで妻と三回死別している”、”死別した妻はまだ若いのに死因は衰弱死である”等数々の不穏な噂のある人物だ。
そして、見た目は頭部から顔面にかけてギトギトに脂ぎっており、でっぷりと脂肪で肥え、特に腹回りは弾けんばかりに突出している。
顔の造作もぼんやりとした横長の目に低い鼻、たらこ唇と所謂醜男と言われる部類だ。
そんな男の元にリリーを送ろうというのだから、これだけで伯爵一家の怒りが途轍もなく凄まじいことがわかる。
リリーが今回の事件よりも前に、自分の立ち位置を弁えず、居候という分際で不相応な待遇を要求し続けたことや、アデレードの婚約者を奪ったこと、”こんなケチな伯爵家には戻らない”と大口を叩いた癖に自分の都合が悪くなると手の平を返したかのように再度住まわせてくれと訪ねてきたこと。
これまでリリーがバーンズ伯爵家で起こした事態の全てに対する復讐であるかのようだった。
今回、変態趣味の金持ちの元にリリーを送ることで、やっと完全にリリーとは縁が切れる。
リリーを送る先の伯爵が治める領地は、バーンズ伯爵領からは物理的に距離が離れ過ぎている為、もう今度は戻ってくることも考えられない。
それどころか今後、五体満足で過ごせるのかどうかも怪しい。
リリーはバーンズ伯爵邸を飛び出し、ベンの婚約者としてトーマス伯爵邸で暮らそうとしたが、トーマス伯爵からベンと共に追放されて、生活費を稼ぐところから完全に自分のことは自分でやらねばならない平民の生活に逆戻りしたが、それまでとは比にならないおぞましい日々が待っていることだろう。
そして、絶対に手を出してはいけないことに手を出したと途轍もない後悔に
リリーの地獄はこれから始まるのだ。
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