第172話
エンリールさんに迎えられマスター室にはいる。
オランさんが驚いて聞く。
「リオン君。まさかと思うけど暇潰しじゃないよね」
「はい、違います」
オラさん、どれだけ僕を暇人だと思っているんですか?
確かに、暇なときギルドに顔をだすげど。そこは否定できないけど。だからと言って会う度に聞く必要あります?
「まあまあ、オラン。折角挨拶に来たんだ、そんな怒るな。お前は自分が気に入った男に直ぐ怒る。だから何時までも春が来ないんだぞ」
エンリールさんの話しに顔を真っ赤にして否定するオランさん、その姿がある意味、言葉以上に物語っている気がする。
「リオン、お前宛に手紙を預かっている、見知らぬ者から預かった物だか、何を書いているかも不明だ。
一応、私は和議やナーラ、アルメニアの言葉もわかっているがこれが何語かわからなかった」
そう言って、エンリールさんから手紙を渡される。手紙見て驚いた。古代ドラゴンの文字。
今時わかるはずがない。僕ですら、真竜のギルや弟のガンスと知り合っていなければわかから無い文字だ。
「エンリールさんこれは誰が?」エンリールさんに聞く。
「タイナ-殿下についているドラゴン族の娘だ。ラーネと言ったか?
その娘からお前宛に預かった。でもドラゴン族の娘もわからないと言っていたぞ。その文字は読めないってな」
「わかった。ありがとう、わるいけどぼくは戻るよ」
手紙を持ち、エンリールさんとオランさんに伝える。2人がヤバい事だと言って、慌ててしまった。
これはエバーヤルトからの救援要請だ。真竜である、ギルに最も近い存在のドラゴン。
漆黒の金竜と呼ばれ、神と崇められ、その存在が世界を滅ぼすと恐れられたあのエバー ヤルトからの救援要請だ。
「待ちなさい。リオン君。それは緊急事態ですね」オランさんが必死の形相で止めに入る。
「何が有ったのですか?」オランさんが僕を見る。
「四聖獣教団と思われる連中と、僕の家族が戦っています。それも戦況は良くない。おまけにフォルスメン中央ギルドが四聖獣教団に加担していると思われます。
誰であれ、僕の家族を敵に回す者は許せません」
そう言って、マスター室を出る。念のためギルドに見えない連中がいるかを確認。見当たらなかった。
ギルドを出て、ライズの屋敷に向かう。普段は空間移動を使うが、わざわざ歩いて向かう。見えない連中はこのマリエラの街にはいないと思うが念のためだ。
ライズの屋敷についた。僕を知る兵士がおりすんなり通してくれた。そしてライズのところまで案内してくれる。
コンコン。
「なんだ?」「失礼します。リオン様がお越しです」
僕が入ると、マリアに抱きついてご満悦のライズがいた。
「なんだ、くる…モゴ」
アルネがライズの口を塞ぐ。
「何怒ってるの リオン?」
アルネが敏感に感じ取ったのだろう。ライズに余計な事を言わせないように押さえる。
「悪い、ここじゃ言えない。それと出来れば直ぐに出かけたい」
出来るだけ落ち着いて話す。
アルネが立ち上がり僕の所に来た。
「リオン、ちょっと落ち着いたら行こうか? ここは、ライズの屋敷だしね。
カーリ、マリアと拠点に移動。飛ばして行ってね。リーンハルとルーニーは余計な人を排除してね」
アルネがみんなに声をかけるが、カーリは恐怖の影響で動けなくなっている。
そんなカーリを見てアルネが激を飛ばす。
「カーリ、何時までもボサッとしてる。あたしらが恐れていたら、誰がリオンを守るんだ。シャキッとしろ」
「ハイ!!」何かを言い聞かせるように返事をして立ち上がる。その様子を見たライズが驚いている。
カーリが起き上がりマリアをつれてベランダに出る。ベランダから一気に飛び出すと拠点に向けて走り出しだ。
「ライズ。生きて戻れたらまた会おう」
僕がボソッと言って部屋を出ていく。アルネはずっと僕の手をつなぎ歩いている。
ルーニーとリーンハルが僕達の後を付いてくるが僕が怒っているのに疑問があるらしい。でも、震えていたカーリの行動を見て何も言わずについてきた。
ライズの屋敷を出て、マリエラの街中を歩いている時にアルネが指示をだす。
「さあ、移動するよ。リーンハル。ルーニーおいで」
アルネが空間移動魔法を使い拠点まで移動する。
マリアとカーリが先について旅支度を済ませて待っていた。
「で、何処に行くの?」
アルネが簡素に聞いてきた。
「マンチャタ国に有るドラゴンの村」
僕も簡素に答える。
「了解。そこなら恐らく、私とカーリは行ったことがあると思う。間違っていても近くだろうか行こうか」
「アルネ、何も聞かないの?」
僕が思わず聞いてしまった。アルネの気持ちも考えずに。
でもアルネは笑って首を振った。
アルネは何も聞かない、理由は僕が怒るのはいつも理由があるから。だそうだ。
本当に助かる。ギル、ガンス、エバー、ガード バハルの4人(ドラゴン)は、僕が記憶無くし、おじいさんと帰って来た時、ずっと僕に寄り添い、僕に言葉を教えてくれ、人として生きていく為に尽力してくれた人達だ。
子供の頃の記憶はほぼ無い。そんな中、僕に付き添い、言葉を教えてくれていつも側にいてくれたのがこの4人だ。
僕の親である。スカルプやリーナと比べ物にならない程、僕は愛情を感じ育ってきた。そのエバー ヤルトからの緊急の救援要請だ。
あのエバーが死を覚悟した連絡。僕が行かなくて誰が行くのだろう。
「リオン、準備出来た。
ごめんね。私上手くリオンの気持ちに寄り添え無くて」
カーリが僕をハグする。心がチクッとする。カーリのせいではないのに。
「カーリ、ありがとう。僕のわがままだ。ごめんね、怖い思いさせて」
反省していると、頭を撫でられた。
「よしよし。私達は家族だよ。1人で抱え込まない。リオンが苦しいと私達も苦しいし、リオンが楽しいと私達も楽しいの。それが家族だよ。リオンの家族は私達の家族なの。だから気にしない。
もっと、私達を頼りなさい。私達はリオンが思うより強いし、頼りがいがあるんだぞ」
カーリの優しさは本当に心に響く。いつも僕を優しく包んでくれる。
「リオン、今日は寝よ。明日朝一で行こうよ。それと、今日はみんなで同じベットで寝ようね」
カーリは何で僕の心をほぐす方法をしっているのだろう。カーリの言葉に落ち着きを取り戻してきた。
気持ちを落ち着かせる。
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