第170話
次の日夜、リーンハルとルーニーを連れて村に戻ってきた。アルネとカーリはお留守番だ。2人はナーラ国をやはり良く思っていない。
前田 流言が僕達を見つけて声をかけてきた。
「リオン、来てくれたか。この人達は?」
「紹介します。僕の奥さんでルーニーとリーンハルです」
「そうでしたか。前田 流言と申します。リオンのお母さんは俺のおばさんに当たる。よろしく頼む」
前田 流言がこっそりと僕に言う。
「あの、前田 源四郎の妻と変わらない程のもの達じゃないのか」
「「よろしくお願いします」」
ルーニーとリーンハルには前田 流言の声が聞こえなかったのだろう。少し緊張気味に挨拶する。
デルタントが前田 流言の元に駆け寄ってくる。そして僕を見て、あからさまに嫌な顔をする。
「げ、リオン。
何でお前が空間移動魔法を使える?おまけになんだこの女達は、不潔だ。お前見たいな格好だけの男はすかん」
前田 流言より強いかも知れない存在を初めて目にした前田 流言の孫のデルタントは、その事を受け入れることも出来ずにいる。ただ、僕達の強さを本能的に感じるのか、苛立ちを覚えるていようだ。
だからデルタントが文句を言ってくる。それは明らかに自分のテリトリーを土足で踏み込まれた感じなのだろうと思う。
「この子達は僕の奥さんだよ。
別に仲良くする必要はないけど、余計な事はしないようにね。デルタントは、レベルが低いからわからないと思うけど、君のお母さんは、僕の奥さん達を物凄く警戒しているよ」
デルタントの母親のリューメルが、ルーニーとリーンハルを見て震えている。
リューメルはルーニーとリーンハルの強さを肌で感じて恐れているのがわかる。決して気を抜かず相手に不快感を与えないようにしている。
だか、デルタントは2人の強さがわからない。見た目的に同じ年くらいにしか見えないルーニーに食ってかかる。
「お前らの旦那も対したことが無いのに第一魔王である、前田 流言様に喧嘩を売るとは馬鹿な奴だ。死んでから後悔しろ」
そう言うと笑い出す。
ルーニーが手を上げる前に僕が押さえる。
ルーニーはデルタントを殺すつもりで攻撃を加えようとしていた、そんなルーニーを押さえデルタントに威圧をかける。
デルタントは呼吸ができず、苦しみ出す。
「クッ フッ ツ-!」
その状況を見た、リューメルが土下座する。
「すみません、我が娘の事をお許し下さい」
ルーニーが僕の前に立つ。
「私達にあれだけの事を言って、無事に生きていれると思っているの?
責任は言った本人が負うべきでは?」
リューメルが土下座したまま懇願するが、僕が威圧を解くことはない。そのまま威圧の範囲を広げリューメルも威圧され苦しみ出す。
「リューメル、デルタント。僕は僕の事を馬鹿にされても怒る気持ちはないけど、僕の家族を馬鹿にする奴は許せない。
実力の無い愚か者の言葉は、特に許せない」
前田 流言が土下座する。
「すまない、私が代わりに謝罪しよう。この者達は、私の村の住人だ。許して欲しい」
「そうですか? では貴方の命と引き換えで良ければ許しましょう。
もし、村の方がそれを拒むなら、今日この日をもって北の村は終わりです。よろしいですか」
「約束しよう」前田 流言が約束した。
威圧を解いてリューメルとデルタント解放するがデルタントは恐怖で震えている。そんな2人を前田 流言が叱る。
「軽はずみな行動は上に立つ者のすることではない、デルタント、良く胆に命じろ」
「さて、前田 流言。けじめをつけましょう」
僕がそう言って、白狐の柄に手を置く。それと同時に、鳳凰の羽が背中けら出て、後ろ全てをカバーする。
前田 流言が自分の刀を握る。居合いの構えを取る。
戦いに備えルーニーとリーンハルに指示を出す。
「リーンハル、村に損壊が無いように頼む。ルーニー、怪我人がでたら直してやって欲しい。リューメルとデルタントについては死んでも文句はない。2人をどうすかは、ルーニーに任せる。
後、リーンハル。見えない奴らも頼むぞ」
「えー、あいつらまで」リーンハルが少し嫌がる。
「早く終われば僕も手伝うからさ」
「む~。わかりました」リーンハルが少し離れた所で風斬丸を抜いて地面に軽く刺す。リーンハルの魔力に呼応して、風斬丸が風を起こす。良く見ないとわからない程度の風がおこる。
「前田 流言、遅くなったね。貴方の本気を見せてください」
僕の言葉と合わせるかのように月の光が前田 流言を包み込む。
前田 流言が第一魔王と言われる姿に変化する。
赤い短髪の髪は、光沢の有る赤いロングヘアーになり、目を金色に光らせる。身長も伸び
2m近い背丈になる。
筋肉質で無駄がなく、筋肉の流線美が美しい体になる。
「リオン、悪いがこの姿になると手加減出来ない、許してくれ」
「楽しそうだ。何時までもその姿でいてもらいたい位だ」
「心意流居合い術、リオン レース レイン。参る」居合いの構えを取る。
「前田流 二代目 前田 流言。参る」前田 流言が刀を抜き、中段に構え、切っ先をこっちに向ける。
お互いに目を見て、相手の動きを見る。
ヒリヒリとする感覚に酔って来そうだ。前田 流言は、剣術の優れた者だ。ガンスやロンバートと違い肉弾戦じゃない、面白さがある。
相手の呼吸や心拍数、微妙な肩の動き、一つ一つが、本当と嘘を織り交ぜる。動かずとも雄弁に語ってくる。
と、その時。僕達の戦いに横やりを入れる存在が現れた。
隠匿魔法で姿を消し、僕と前田 流言の間合いに入る。
揃って抜刀する。首と胴、下半身が各々に別れる。あまりの早さに斬られた体から血がでるのに10秒程の時間がかかった。
僕と前田 流言はすでに2人の世界に入っていた。気の緩みが勝敗を決っするその緊張感に気持ちが高揚する。
それは僕だけではないみたいだ。前田 流言が刀を上段に持ち、切っ先を下に垂らす。
僕は余計な力みを抜いて白狐を自然体で構える。柄から9本の尻尾が現れる。
月明かりに照らされ9本の尻尾が妖艶にひかる。
前田 流言の前足が微妙にずれる。それを合図に前田 流言の左前に踏み出し刀を振り抜く。
前田 流言の服を少し斬ったが、交わされた。
さらにお互い、刀のギリギリ届かない所で動きを止め、お互いを見合う。
僕達の回りに集まる、姿を消したものが達をリーンハルが静かに倒す。
リーンハルの回りも、静かになる。一瞬、全べての音が消え、シーンシーンと耳の奥に音が響く。
前田 流言が上から刀を振り下ろし、僕が右前に踏み込み横凪ぎに刀をふる。
半歩踏み込みが強かった僕の刀が前田 流言をとらえる。前田 流言の両腕が吹き飛び決着が付いた。
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