第169話

額に3本の角をだし、赤い髪を短髪でまとめる少し背の低い男だ。


「お前が俺に槍を投げたのか?」


「そうです」

僕の答えに男が笑い出す。どう見てもガンスより強くは見えない。強さだけ言えば、魔族のマルチーズより弱い位に思える。


だがこれが第一魔王と言われる男なのだろう。だとすると僕にはわからないなにかがあるのだろうと思う。


「貴方が鬼人族。前田 流言さんですか?」


「そうだとしたらどうする?」男が警戒しつつ僕に聞いて、油断無く手を柄に置く。


「いえ、僕はルカリオ サンム サーチの息子、リオンと言います。お母さんのご兄弟がいると聞いて挨拶に来ました」そう言って頭を下げる。


特に嘘は付いていないが相手がどう思うかが大事だ、信じてもらえない可能性も高い、念のために警戒をする。


「ほう、お前さん。おばさんの息子か。悪いが今おばさんを知る者はもうほとんどいない。それでも良ければお前さんを村に案内しよう」


意外申し出だか。


「ただし条件かある。俺に勝つことだ」


「ハ!」思わず前田 流言を見る。


前田 流言が刀に手を置いて何時でも動ける様に構えている。どうしようか考えいると白狐と鳳凰が表に出る。


「「主」」2人共にキラキラした目をしている。

「わかったよ。2人の好きにしてもいいよ」


「感謝します」「ヤッホー。やっぱ主は良い男だよ」

白狐と鳳凰が人の姿になる。


「リオン、聞いて良いか。こいつらは?」前田 流言が僕を見る。


「白狐と鳳凰です。僕の従魔です。この2人が貴方達と戦いたがっているのでこの2人に任せます」


その姿をみて前田 流言の孫、リューメルが僕に文句を言う。

「貴様、お父様になんたる侮辱」


僕とリューメルの間に鳳凰が立つ。

「お前こそ、馬鹿にし過ぎた。うちらの主はお前の親より強い。私らは主が本気で怒らない様にするのが役目だ。

その意味をこれから良く理解することだな」


そう言うと、鳳凰が本来の姿になる。


「ああ、あれは鳳凰? 何故?」リューメルと娘のデルタントが声を失う。あり得ない者を見たと顔が語っていた。


前田 流言が白狐と対峙する。前田 流言の額から汗がでている。


「お前があの九尾金毛の白狐か?」


「そうだが、なにか有るか?」白狐が睨みながら聞く。

その行動は白狐が何時でも倒せる相手に取る行動だ。だとすると前田 流言はやはりそんなに強く無いのだろうか。


「はは、本物だな。おばさんから聞いた通りだ。嬉しく思うぞ。あのおばさんが従魔にすることが出来なかった、あの聖魔と対戦出きることを」


白狐と鳳凰は地域によって色々な呼び名がある。神と崇められ、悪魔と恐れられ、誰もが自らの従魔にしようと望んだ存在だった。


白狐と鳳凰はギルドが討伐不可と判断したモンスターの一つでもある。


前田 流言が居合い斬りで白狐の首を斬った様に見えたが、白狐の毛に当たり持っていた刀が折れてしまう。


白狐が馬鹿にしたかの様に後ろ足で首の当たりをかく。そのまま尻尾をふり前田 流言を攻撃する。一気に九尾の尻尾が前田 流言を襲ったせいか、逃げ切れずに3本の尻尾が刺さり終わってしまった。


リューメルとデルタントが鳳凰に向かうが、一太刀も入れる事が出来ずに終わる。


「では約束通りに村まで案内してもらえますか?」僕の言葉に前田 流言がうなずく。


それを見て、白狐と鳳凰が姿を消す。


前田 流言に近付いてヒールをかけると、体の傷が癒えたようだ。前田 流言が立ち上がり案内を申し出た。


前田 流言を先頭にリューメルと孫のデルタントも同行する。リューメル達、2人の従者達は別行動で北の村まで来ることになる。


前田 流言が空間移動魔法を使い北の村まで来る。

孫のデルタントが得意げに空間移動魔法を褒め称える。現在、ナーラ国では前田 流言以外に使える者はいないらしい。


前田 流言の案内で墓に来た。この墓はお母さんの弟の墓だと言う。

前田 流言がその事を話してくれた。


和議の国が全盛を向かえた時代、ドラゴン族や鬼人族は劣勢に立たされていた。

その時、和議の小国の出羽の国に前田 源四郎と言う将軍が現れた。


この前田 源四郎が僕のおじいさんに当たる人らしい。人族で唯一、魔王登録された人物だと言う。


前田 源四郎には妻が五人おり、人族、ドラゴン族、鬼人族、獣人族、魔人族らしい。


その妻達も皆、異常に強く。魔王と認定はされていないものの、SSSランクを優に越える強さをもっていた。そしてその子供達も皆強く、お母さんを初め後に魔王と認定される程になった。


後に前田 源四郎は和議を統一して、鎖国政策を始める。その際、和議を締め切り、他の国にいた者は入国を許さなかった。その為、取り残された者達が集まり出来たのが現在のナーラ国だと教えてくれた。

故に、今のナーラ国は差別意識が高い。ただ前田 流言等、鬼人族や魔族等、一部の亜人族については国を守る英雄として扱われ差別の対象から外れている。


お母さんの弟に当たる、鬼人族が和議を出て、自分達の住み良い村を作るべくこの北の村に集まった。理由は和議の国の継承問題だ。各々の兄弟自体は仲が良かった。

だか、付き従う者はそうもいかない。その為兄弟達で話し合い、人族が和議を継承する事、他の兄弟達は皆、和議を出ていく事で合意した。

それが北の村の始まりらしい。その時に一緒に来たのが、鬼人族と魔人族。


ドラゴン族はナーラ国を超えて現在のアルメニア王国の当たりに、獣人族は元々の獣人族の国に帰ったと言い伝えられている。


「間違っていたらすまない。この村の人はドラゴンニュートとよばれていると聞いたがそれはまた違うのだろうか?」

僕が疑問を聞く。


前田 流言が教えてくれる。

「そのドラゴンニュートは我々とは別の者達だ。ここからさらに西に3日程行くと村があったが、すでに絶滅している。ドラゴンニュートと呼ばれた者はすでにいない。いるのは和議の黒社会の四聖獣教団だけだ。悪い事は言わない、やめておけ」


黒社会? 知らない言葉が出る。

「ありがとうございます。ちなみに黒社会とはどういう者を指すのでしょう」


「和議の言葉で、盗賊や山賊、犯罪者等の集団を言う。

お前さんなら問題無いだろうが、あえて関わるのは進めないよ」


前田 流言が僕に村に泊まるように言われるが、ことわった。また明日来ると説明する。

「リオン、明日の夜村に来てくれるか? 出来ればお前さんに、俺の本当の姿を見て欲しい」


「本当の姿?」


「俺は制約があってな。第一魔王と言われる姿は周に1回位しかなれないんだ」


なにそれ? 楽しそう。

「わかりました。今日は帰るけど、明日の夜また来ます。もしかしたら僕の妻達も来るかも知れない、問題は無いですか?」


前田 流言が嬉しそうにうなずく。孫のデルタントは暗くなるから泊まって行けと言う。

「もう遅い、空間移動も使えないだろう。こんな山の中で野宿する必要も無いだろう」


「問題無いですよ。空間移動魔法は特に珍しい魔法では無いですから」


僕の答えにデルタントが馬鹿にしたように笑う。

「フフ、強がり言って何処まで帰もるって言うの? また帰って来ても泊めてやんないよ」



「前田 流言、また明日」そう言うと空間移動魔法を使いラピスにある拠点に移動する。

その時、デルタントの驚きの悲鳴が僕にも聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る