第167話
「ドラゴンニュートって初めて聞く亜人種ですね。ドラゴンとは違うんですか?」
ドラゴンが人化した時はそんな呼び方しない。ハーフドラゴンならハーフドラゴンだし、クオーターまでになるとほぼ人と変わらないし、不思議な感じた。
魔法使いのお姉さんが首をかしげながら教えてくれた。
「元々来たのはハーフドラゴンだって聞いてるよ。それもハーフドラゴンだけの集団らしくて。何代かするとドラゴンになることも出来ず、その力を失ったって聞いたよ。
で、その一族をドラゴンニュートって呼んでるの。人族よりは力が強く戦闘向きだね」
「お姉さんは会ったことがあるの?」僕が聞く。
「無い。正直に言うと会ってるかもしれないけど、わからないって言うのが正解かな、ドラゴンニュートと言っている奴もいないし、その関係者だって誰もそれを認める者もいないしな」
なる程な、謎の集団と言うわけですね。正体を隠しているのか、隠さないと行けない存在なのか。
「その北の村にいくことは出来ますか?」
「多分。まだ昔ながらの暮らしを守っている人もいると聞くよ」
魔法使いのお姉さんが教えてくれる。
「あれ、リオンかい? やっぱりリオンだ」
モリリン メンソールが牙ウルフの生まれたばかりの赤ちゃんをだっこしながらギルドに入ってきた。リュックニーのダンジョンで助けたテイマーの家族。そこの奥さんだ。
「モリリン? 久しぶり。その子は産まれたばかりの子だね」
「そうよ、家の新しい仲間よ」
ギルドのお姉さんがモリリンを叱る。
「ちょっとモリリンさん。モンスターをギルドの中に入れないで下さい。皆さん混乱するですから」
受付のお姉さんの話を無視して、産まれたばかりの牙ウルフの赤ちゃんをだっこする。
モリリンがそれをみて驚く。
「嘘、この子私以外で大人しく抱っこされてる。へぇ、やっぱり腕の良いテイマーはわかるんだね」
僕がモリリンをみて聞く。
「モリリン、北の村について何か知ってるかい」
モリリンが渋い顔をする。
「ああ、知ってるけど行くのは、止めた方が良いよ。今は四聖獣教団の村になってるよ。昔から住んでる人を追い出して自分達の村みたいになってるはずだよ」
四聖獣教団か。やっぱり僕はこいつらと関係があるんだな。1度調べるか。
リュックニーのギルドを後にしてナーラ国の首都に向かう。乗り合い馬車も出ているが、どうせ急ぐわけでも無し。
夜だけ姉さんの家にいれば良いだけだし、どうせ追い出されるからのんびりと歩いて首都に向かう事にした。リュックニーの街中を歩き、街の外壁をみる。
要塞的な物ではなく、あくまでモンスターから身を守る事を目的にしている物だと思う。
首都に向かう道を歩く回りが山に囲まれおり中々歩いていて楽しい景色だ。
カーリと一緒ならこういう旅もいいかも知れない。馬車よりカーリは好きだろう。
でもアルネとリーンハルは嫌がるだろうな。あの2人は馬車好きだしな。あの揺られて移動する感覚がたまらないっていつもいってるもんな。
そうそう、ルーニーの為にもこの辺の野草をみておかないと、ルーニー野草の花が大好きなんだよな。花を取っては馬車に飾ったり、ルーニーのお陰てみんな和むんだよね。
何て考えながら歩くこと一時間、辺りは草木のない、荒涼した所になる。山肌の窪みを見つけ一旦拠点を築く。いつものようにブロックソイルを使い全てを閉じて1人ベットを出してお昼寝タイムを楽しむ。
たまに一人旅最高。
お昼寝を満喫してから、オーヂエンの姉さんの屋敷に空間移動する。
女性だけで何やら楽しんでいるようで晩御飯も、ほぼ1人で食べる。時々、カーリとルーニーが面倒をみてくれるがほぼ放ったらかし状態だ。
翌日、空間転移して拠点に戻る。回りに誰もいない事を確認して、拠点を壊しナーラの首都を目指す。次の日は、ほぼほぼ歩き続け、リュックニーと首都の間に有る村まで来た。
村に入り、宿を取る。今日はそこでおしまい。
翌日村をみて回り情報収集をする。その過程で村のギルドに入る。受付に来て声をかける。
「この辺の地図はありますか?」
「はあ、地図ですか? どちらに向かわれるのでしようか?」
受付のお姉さんが聞いてくる。
「北の村に行く途中です」
「であれば、まずは首都に行くと良いですよ。馬車もありますし」
「この村からは出てないのですか?」
「月に1本だけですね。今月はすでに出ので後は来月まで無いですね」
「ちなみに、ここから北の村に行くのはかなり大変ですか?」
「道のりは対して問題ありません。ただし途中に村等がなくて、食料の補充が難しいでね。首都からだと、間にいくつか街や村があるのでそちらから行くことをお勧めしますよ」
「そう、ありがとう」
ギルドから地図をもらい、公園に来てベンチに腰をおろす。北の村の道順を確認して予定を立てる。走って移動できない距離でもない。
村の商店で、食べ物等を買い込み宿に戻る。遅めの朝食をもらって宿を出た。
首都に向かわずここから真っ直ぐに北の村に向かう。道は割りと整備されておりまだ所々に集落が点在していた。
半日程歩くと集落も無くなり、森の中に有る道路をひたすら歩く。しかし不思議な森だ。モンスターの気配もなく、盗賊等の気配もない。道路から少し森の中に入り、ブロックソイルを使い、簡易拠点を作る。
その中に入りベットに横になる。歩き疲れた事あり少し寝ていると、人の歩く足音が聞こえ目が覚める。
馬車の他に、馬が4匹。徒歩が6人。
商人だろうか? もしくはこの辺を納める貴族だろうな。領地の見回りだろう。
ナーラの一人旅も中々楽しい、けどそろそろ合流しないと行けないけし、どうしたものか。アルネとカーリ自身は問題無いだろうけど。
ナーラは古くから亜人族を奴隷として扱う国だ。まあ、それを考えてると、ドラゴンニュートが正体を隠すのもわかる気がする。
ルーニーがいるからおそらく奴隷化される事は無いと思うが、でも心配だ。
早い時間だか、早めに姉さんの屋敷に戻る。アルネと2人で夜を過ごしている時に相談した。
ナーラには行きたく無いとアルネに言われる。奴隷がどうこうと言うより、見下される感覚が嫌らしい。
アルネ達は姉さんの予定を聞いて、屋敷にいても良いならもう少し屋敷で過ごす事になった。ダメならラピスの拠点で過ごす予定らしい。
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