第166話
タイナーとモンナの子供が生まれて2週間後、僕達は姉さんに招かれて姉さんの屋敷にいた。
でも男の僕は不要と言われて姉さんと女性だけの宴が催される。
姉さんの余りに無慈悲な言葉にうなだれてしまう。だってこんな酷いことを言うだもの。
「リオン、悪いけど貴方に要は無いの」
「わかりました。じゃ1人でどっか行ってます」売り言葉に買い言葉じゃ無いけどそういって姉さんの屋敷を出て来てしまった。
しかし、姉さんの言い方だんだん酷くなってくる。アルネとカーリを紹介した時は何とも無かったのに、どうしたんだろう。
首都アラドの街中を散策しながら露店を見て回っているとスベルト男爵の配下のメイと会う。
「良く会うね。この辺は君の管轄?」
メイに声をかける。
「リオン様でしたか、余り驚かさないで下さい。配下の者から、何時も緊急連絡が入ります」
「そんな。僕は街中を歩いているだけじゃないない」
「それがいけません。貴方様は一応、国外追放された身分なんですよ。
まあ、マリアのご主人様ですし。タイナー陛下の腹心の方ですし…」等々…メイにもお説教をされる。
「所でリオン様は何故お一人なのですか?」
メイ、その質問は駄目だよ。だってボッチなんだもの。
「あの、もしかして追い出されたのですか? それで行く当ても無くプラプラと散策なさっていたと・・・」
うつむき肩を落とす。それは言わない約束でしょう。マリエラのギルドマスターのオランさんにも同じ事を言われたのに…。
なんか恥ずかしくなり何処かに行こうとして思わず空間移動魔法を使ってしまう。
ここは何処だ?何処かのダンジョンだ。でも何処だ。花が植えられ綺麗に整地され、お墓がある。
お墓をたてるのは人族の風習だ。他種族は墓をたてる風習なんて無い。であればここは何処だ。
「リオン様? やっぱりリオン様だ」
その声に覚えがある。お母さんの元にいたメリー。魔族のジョーの奥さんだ。
て、言うことはここはリュックニーのダンジョン?
振り向いて見るとメリーさんがお花を持っている。
「メリーさんお久し振りです。ここは誰のお墓ですか?」
「リオン様、お帰りなさい。ここは、姫様とカルメン様のお墓です」
「お母さんとカルメンの」
お墓を見て感慨深く手を合わせる。本来は僕がやらないといけない物なのに。
「メリーさん。お墓まで作ってくれてありがとう」
そういって頭を下げる。
それからジョーが迎えに来るまでの間、色々と教えてもらった。
リュックニーの50階層は、全て取り壊しみんな各々に地上に降りて生活をしているらしい。メリーさんとジョーが月に何度かこの場所を訪れては2人墓を守っているらしい。
そして2人は雑貨屋をリュックニーの入口近くで始めたらしい。
ジョーの作るポーションは元々人気があった。そこで僕達もお世話になった宿屋のサシテ ワンダールさんの進めもあり雑貨屋を始めたようだ。
そんな話しをしているとジョーが戻って来た。
「リオンさん? お帰りなさい」
「ジョー、ただいま。何時もお母さんとカルメンの事を大事にしてくれて有り難う」
ジョーとメリーさんと一緒にダンジョンを出る。何と、このリュックニーのギルドマスターがサンリール ルイルさんからすみれになっていると聞いて驚いた。
そしてジョーの雑貨屋はギルド公認として営業しているらしく、幅広い客層から愛されているらしい。
ジョーとメリーと別れギルドに向かう。2人からびっくりしますよと言われて来てみたが本当に驚いた。ギルドが新しくなっていた。
すみれは物凄く商いの才能があるらしくたった一年足らずで完璧にリュックニーギルドを建て直したらしい。
ギルドに入り依頼手配書を見る。様々な依頼があり、初心者から、上級者まで扱える物で、すみれの努力が伺える。
そして何故か神棚がある。もしかと思うが祭られているのは白狐だろうか。
恐る恐る覗き込むと白狐だった。すみれらしい。お昼の空いた時間に来た為か冒険者の数が少なく少しゆっくりできそうだ。
食堂で串焼きをたのみエールを頼む。1人でテイブル席に座り回りを観察しながら飲んでいると、いかにも魔法使いっぽい女に声をかけられた。
「お兄さん、この席座っても良いかい?」
辺りを見渡す。食堂には僕1人しかいない。他の席も使えるのに。
「まあ、返事がないみたいだから座るよ」魔法使いのお姉さんが勝手に向かいの椅子に座り、僕を観察すかなように覗き込む。
「私もエールちょうだい」「所でお兄さん、何処から来たの? 」
わりと冒険者には絡まれる方だけどこんな絡まれ方初めてだ。リュックニーだと僕は相当珍しいのだろう。
「僕? 隣の国のオーヂエンから来ました」
「もしかして、お兄さん、リュックニーの英雄かい?
あんたひょうひょうとしてるけど、物凄い実力者だよね。
私もこんな感じだけどAランクなの。エンリール ルイルの下でづっと働いていたけど、あの女とっとと逃げやがった」魔法使いのお姉さんが悪態をつく。
「そう。良くわからないけど何かあったの?」
魔法使いのお姉さんの表情が変わる。
「聞いてくれるのか? よくぞ聞いてくれた。私、元々盗賊団を率いていたんだけど。女だけのパーティーやってたオラン マーサとエンリール ルイルの2人にこっぴどくやられたのよ。
私らだって弱くはないよ。総勢50人を越える盗賊団だよ。あのマリエラの辺境伯、ライズ シーナ マエンとだって渡り合った程だよ」
「ライズ? あの?」
「お、お兄さんもわかる口だね。そのライズだよ。ナーラ軍隊1万と私兵3千で死闘を繰り広げ、ナーラを屈服させた女だよ。そのライズだよ」
一口エールを飲むとまた魔法使いのお姉さんが話し始める。
「そのライズとだって私らやり合ったんだ。勝つことは出来なかったけど、ライズ率いる千人の兵士と私ら50人でやりあい、ライズを引かせた程だよ。
なのに、オラン マーサとエンリール ルイルの2人にやられたの。あいつら敵に回すと鬼だよ。容赦無いったら、そら本物の鬼」
「悪かったな鬼で、リオン。この馬鹿の言う事は話し半分で聞いておけよ」
声の方を見るとエンリールさんとオランさんがいる。
魔法使いのお姉さんの目が輝く。
「エンリールぅ。何で私を置いていったの?」
エンリールさんが面倒臭そうに魔法使いのお姉さ足蹴にしている。
でも、魔法使いのお姉さんの嬉しそうな顔がこの2人の関係を物語っているらしい気がする。
「てか、リオン。お前今、私の事を変な想像したな」
エンリールさん何でわかるんだ。エンリールの声を無視して話題を変える。
「オランさん何しにリュックニーに来たの?」
オランさんが呆れたように言う。
「リオン君。それは私が言うことです。暇だからといってギルドに暇潰しに来ないで下さい」
「う、いいじゃ無いですか。今日はギルドマスターに迷惑をかけていません。
オランさんに以前言われてから注意してます」
「本当にリオンはオランの前じゃ借りてきた猫みたいに、大人しいな。
これが魔王認定された冒険者とは思えないよ」エンリールさんの鋭い指摘に何も言えずに塞ぎ込む。
「所で何をしに来たのですか? 本当に暇潰しじゃ無いでしょうね」オランさんに睨まれた。
「ま、暇潰しもあります。
ついでですが、ナーラ国にいると言われている。ある人たちの情報がないか知りたくて来ました」僕が正直に答える。
「ある人たち?」
オランさんとエンリールさんの顔が変わる。魔法使いのお姉さんはエンリールさんにべったりとくっついてニコニコとしている。
「かなり昔の話ですが、和議から渡ってきたハーフドラゴンの一族についてです。
もしかしたらすでに無くなってしまっているかも知れませんが」
魔法使いのお姉さんが目を光らせる。
「それって北の村の連中じゃ無いの?
かなり昔の言い伝えだけど、ナーラの最北端の村に、ドワーフ達ですら恐れる村がある。そいつらドラゴンニュート(竜人族)って言われているらしいよ。
もっとも今じゃそんな力もなく、人族と変わらない位の能力しかないらしいけど」
エンリールさんが魔法使いのお姉さんを褒める。
「あんた、本当にたまには役に立つね」
「えへ、えへ♡ エンリールもっと褒めて♡」
思わずオランさんと目が会う。でもオランさんは何も言うな、そう目で訴える。
「おい、変な事を考えただろう。リオン」エンリールさんの叫びがギルドにこだまする。
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