第165話

姉さんの屋敷に入る。屋敷の門番に姉さんが帰って来たかを確認するが、まだ戻っていない。戻りは来週の予定と教えてもらう。


姉さんの部屋に勝手に入る。部屋は簡素な物ばかりで、女の子の部屋には見えない。


姉さんの部屋には隠し部屋がある、その隠し部屋を探す。


ベット下に階段を見つけ、ベットの下に潜る。思ったより深い。


階段を降りきると小部屋があった。アルネが感じた姉さんの魔力、その魔力の元を探してここまで来た。


小部屋のドアをあける。部屋にはおもちゃが綺麗に並べて置いてあった。


僕達が小さい時に遊んだおもちゃから、つい最近購入しただろう真新しいおもちゃもある。

そのおもちゃの中に異彩を放つ物があった。いつの時代の物かもわからないお人形だ。


人形の服は、布が化石化しているように思える、なのに人形の本体は今も生きているかのような艶がある。人形に髪の毛等は無く、目もすでにくすんで顔がどちらにあるかすらわからない状態だ。


その異彩を放つ人形に手に持とうとした際、声が聞こえた。


「そこにいるのはリオンか?」


姉さんの声だ。振り向くと姉さんがいた。

「いつ帰ったの?戻りは来週だって聞いたけど?」


「それより、未婚の女の部屋に勝手にはいって何をしている。夜這いをかけるならまだ明るいぞ」


「今、首都にいないはずの姉さんの魔力を感じた。何が合ったか知りたくてね。

昔みたいに勝手に忍び込んだ」


「子供じゃ無いんだ。心配なのはわかるが勝手に入るな」


「そう、ごめんね」


「フム、分かればよろしい。それと私はまだしばらく身を隠さないといけない。それが終わったら何時でも夜這いに来なさい。待ってるから」


その後姉さんと別れ1人で王宮に戻る。すでに出産が終わり、男の子が元気良く泣いていた。


タイナーやモンナの心配をよそに男の子が元気に泣いている。回りがほっとしている最中、ルーニーだけが強ばった顔をしていた。


そっと近付き声をかける。

「心配事?」


ルーニーが真剣な顔をする。

「はい、胸に…紋章が」


僕が生まれた男の子を見る。この紋章は、昔、リュックニ-でジョーと呼ばれたお母さんの執事、そのジョーの奥さん、メリーと同じ魔族による呪いの紋章だ。


この中に魔族がいる。それもこの国に遺恨を持つものが。


「カーリ、聞こえたら来てくれ。緊急自体だ」


小さい声で言う。おそらくカーリ以外は聞こえないような音量で話す。


カーリが部屋に入ってくる。さらに僕がカーリだけに聞こえる声で指示を出す。


「さて、タイナー、モンナ。悪いけど新しい命に、神聖魔法の恩恵を授けたい。秘法だ。2人は外で待ってもらえるかい?」

僕が2人に言って部屋を追い出す。その際モンナ付きのメイドをカーリが捕らえて2人から引き離す。


「さて、貴女はそこにいて下さい。聞きたい事が、多々あります」


「ぐっ」メイドが僕を睨む。


「その髪をよせてください、貴女のその角をモンナは許していたはず。それにもかかわらず行ったお前の行為は、許す事が出来ない」僕の怒りを感じたメイドが気を失う。


「ルーニー、僕が解呪を行う。手伝って」


「はい」

ルーニーが優しく包むように生まれた子供に神聖魔法をかける。

僕がそこに光魔法のヒールをかけながら呪いを外す。


だか、生まれたばかりの子供だ。いきなり大人と同じように行う訳には行かない。


その解呪は、困難を極めた。まさに目隠しをして針の束に1本1本糸を通すような大変さがある。


そして最後の1本の針に糸を通すように呪いの全てを外す。


生まれた子の体から黒い煙が出て体から紋章が消えると、魔族が出てきた。

「おい、終わったか?生まれたばかりの子供の魂は美味しい。やっと食せるぞ」


魔族が回りを見る。押さえられた眷属を見て怒りをあらわにする。

「貴様何をしている。その女を離せ」


カーリが魔族を見て小馬鹿にして言う。

「ムリ、弱い癖にいきんな」


「ふざけるな!! 小娘!! ン?」


僕が魔族の腕を掴み魔族を制する。

「君は僕の妻に何をしているの?。小娘って。 僕の妻に何か文句でもあるのかな?」


「ヒッ」魔族が僕を見て死を恐怖して震え出す。


その反応にチョッと、いらっとして、さらに魔族に質問する。

「質問をします。君は何をこの子にしたのかな?」


魔族が震えてなにも言えずにいる。


「次の質問です。僕の妻に君は何をしたのかな?」


「ず、ズミマセン。奥様と知らず殺そうと思いました」

魔族が土下座して謝罪する。


「君の眷属は何をしているのかな?」


「ヒイ、ズビバゼン。この女は私の眷属です。もし宜しければ、もてあそんで殺していたいて、問題ありません」


「そう、じゃあマルチーズにでも君たちの処分を任せようかね」


「「ヒィ」」「それだけは」魔族の男が腰を抜かし、そのまま出口に足を引きずりながら移動する。


「言っておく、マルチーズは僕の友達だ。僕も友達の汚点を公表することはない。言葉の意味は、分かるね」

魔族の2人が覚悟を決める。


ルーニーが神聖魔法を唱えると、魔族の2人が跡形も無く消えてしまう。2人のいた場所に魔族特有の赤黒い魔石だけが落ちていた。


赤ちゃんをつれ、タイナーとモンナのところに行く。


モンナに赤ちゃんを渡す。

「あら、しっかり寝てるわね。よっぽど気持ち良かったのね。

リオン、アルネ、カーリ、リーンハル、ルーニー。みんなありがとう。

貴女達のお陰で子供が生きることが出来るわ。本当に有り難う」


モンナの表情が母親そのものになる。


「もう、子供は問題ないと思うよ。

タイナー、モンナ。おめでとう。僕は2人の子供を抱っこ出来て本当に嬉しいよ」


僕言葉に続きアルネ達が次々と赤ちゃんを抱っこしていく。


タイナーが僕の所に来た。

「リオン、有り難う。助かった」


「何いってんのタイナー。この子は僕の弟みたいな存在だよ。僕の家族だよ。

時々顔を見に来るからね」


「もちろんだ。何時でも恩赦の準備は出来ているからな」

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