第164話
僕達は結婚式の後、約1週間程、ダンサール国でゆっくりとした後、オーヂエンに戻ってきた。
と言っても、首都の宿でのんびりとしていた。みんなにタイナーからの申し出を伝え、王宮に入るつもりをしていたが、王宮に入ったのはアルネ、カーリ、リーンハル、ルーニーの4人だけ。
僕だけお預けされている。
現在お産の準備で男性の出入りが制限されてしまい、僕はタイナーと一緒に王宮の屋敷ではなく、王宮の仕事部屋を使い、お産の準備を待つしか無い状態だった。
それも僕だけ迎えが来なければ宿で待機だ。出番がないのはありがたいけど、何も役にたたないのは少し寂しい。
その日、夕方になり、迎えが来た。馬車にのり、王宮に入る。いつものようにタイナーと部屋にいる。
スベルト男爵が僕達の部屋に入ってきた。
「陛下、アルム公爵より、報告があった件。間違い無いと思われます。すでにアルム公爵も帰路についている様子。
ただし到着に、2週間はかかる見込みです」
スベルト男爵は、タイナーに報告をすると部屋を出た。
「何か原因は分かったの?」
僕との問いにタイナーはシンプルに答える。
「ドン リウム」
ドン リウムはオーヂエン国を作った建国者の1人だ。
オーヂエン国をドン リウム。ロット イーヂエンと言う。2人の盗賊が作り上げた。
遡る事1800年程前の話だ。現在の和議の国が全盛を迎え、ナーラ国を越えて、ガレシオン公国の6割を支配していた。当時、最大最強の国である。
だか、その治世はあまりに酷く反発を持つ者も多くいた。和議の島国以外は人以下。亜人族は生きる価値すら無し。そう言い放ち、皆、恐怖の中で暮らしていた。
力で他者を圧倒する和議。当然反発も多く各地で小競合いは良く起きていた。
ドン リウムとロット イーヂエンもそんな最中、当時捨てられた村と言われるオーヂエン村に拠点をおき、和議の兵士や商人、住民等を捕らえ、金目の物を奪い暮らしていた。
村には20人程しか住んでいなくドン リウムとロット イーヂエンも、村の中では猟師として暮らし、盗賊とは村人もわからないような暮らしぶりだった。
そんなおり、和議に嫌気がさし逃げ出してきた和議の千人大将(千人の部下を持つと言われる武将、いわゆる階級)、モルブ ナーニがたって1人、命からがらオーヂエン村に逃げ込んで来た。
ドン リウムとロット イーヂエン、モルブ ナーニの3人がそろい、オーヂエン村から和議に反旗ののろしを上げた。
その噂は瞬く間に広がり多くの人が集まる。和議との小競合いが続く中でオーヂエンは村から国にかわって行った。
何故なら、捨てられた村の地形が良かった。後ろにホルスメン中央山脈が真後ろにあり、しかも断崖絶壁。後ろから誰も来ることがでない作りだった。
ドン リウムとロット イーヂエン、モルブ ナーニの3人は、徐々に領地を広げ和議に対抗出来る国を作り上げた。それが現在のオーヂエン国の始まり。それから領土を順調に広げ現在に至っている。
ここまでが一般的に語り継がれて来た建国の話だ。
だかこの話は続きがある。ドン リウムとロット イーヂエン、モルブ ナーニの3人は皆人族だ。にも関わらず、ドン リウムは300年程生きたと言われている。
様々な事が語り継がれているが、魔神と契約した事で、300年の長い時間を生きたと言われるのが現在の見解。
その契約の対価として、生まれた子供の命を捧げた。そう思われている。
それが過去、第一子が亡くなる原因と思われているが、真実は誰にもわからない。
「タイナー…」バタン。
僕が話そうとしたタイミングでアルネが部屋に駆け込んで来た。
「陛下、リオン。陣痛が始まりました。それとリオン」
アルネが僕に近づく。
「お姉さんの魔力が近くに感じる、でもお姉さんじゃない」
「わかった。アルネとルーニーは変わらずモンナと同じ部屋に、カーリとリーンハルは部屋を監視出来る位置に」
「わかった」アルネがタイナーに挨拶して部屋を出る。
「リオン、何か始まったのか?」
タイナーが不安そうに僕に聞いてきた。
「スベルト男爵! スベルト男爵!!」
部屋の中で大きな声で呼ぶ。
何処かで聞いていたのだろう、スベルト男爵が部屋に来た。
スベルト男爵を座らせると報告する。
「アルムがすでに王宮に戻っているらしい。それも何かに操られているようだ。僕はアルムを止める」
「了解した。スベルトこの命かけて陛下と王妃をお守りしよう」
「タイナー、タイナーがモンナと子供を守るんだ。その他は僕とスベルト男爵で守る。良いね」
「まさか、アルムが負けたのか?」
「タイナー、それがどういう意味かはわからない。でも、姉さんの事だ、死ぬことも覚悟の上だろう。でも、僕は姉さんを死なせない。この命に変えても」
部屋を出てタイナーは分娩室に入る。その部屋の前にスベルト男爵が自ら護衛にたつ。
そこから索敵範囲を少しづづ広げる。どんな小さなものも逃さない、丁寧に、速やかに索敵の範囲を伸ばす。
僕の索敵が、何かに触れる。触れるとその何かは姿を消す。さらに範囲を広げるとまた、何かが索敵に触れて姿を消す。
その繰り返しで範囲がかなり広がる。すでに王宮を越えて姉さんの敷地すら網羅している。
僕は王宮を抜けて、ホルスメン山脈の近くに来ていた。僕の索敵に引っ掛かる何かがここに向かっていたからだ。
索敵を止め、気配を消してゆっくりと山脈に近づく。そして小さい頃、姉さんと遊んだ山脈の窪地に来た。唯一、王国を眺める事の出来る場所だ。
山脈の入り口付近に5人の気配を感じる。皆、黒一色の格好でマスクしている。
近くまで降りて行く。ボソボソと何かの話し声が聞こえる。
「やっと来たな。今回も我らの悲願をはたすぞ」
「して誰が行く?」
「今回はワシらの出番じゃ。前回は美味しい所を持って行かれたからな」
「おいおい、こんなじいさんで、良いのか?前回だってこのじいさんの失敗で、面倒な事になってるんだぞ」
「ふざけるな、貴様らの指図は受けない。俺が行く」
5人が5人とも、自ら話し、何もまとまらない。会話を聞きつつ下に着く。
「面白そうな話をしてるね。僕も混ぜてくれるかい」
そう言って5人の男達の後ろにたつ。
「誰だこいつ」「いつの間に来た」「殺せ」「何処から来た。この私を持っても気づかないなんて」
僕の一番近くにいた奴が振り向きざまに剣で僕を斬りつける。瞬間的に1歩下がって相手の攻撃をかわし、手が抜けた所で居合いで斬る。
攻撃してきた奴の体が斜め半分になり倒れる。
「せっかちですね、折角なんか楽しそうな話ををされていたので話を聞こうと思っただけなのに」
僕が刀を振り汚れを落とすと鞘にしまう。
残った4人が僕を睨む。
「貴様何処から来た?」
「山の中からです。楽しそうなお話だったのでどんな話か知りたくなりましてね」
「とぼけんじゃねぇ」残りの2人のが剣を抜いて斬りかかった来る。2人をかわし残る2人の首の後ろを殴打して倒す。僕を探してる2人を後ろから蹴りつけ、転げて苦しんで要るところを捕まえる。こうして4人を捕まえて空間移動で王宮な牢屋に4人をつなぐ。
その後、姉さんを探した姉さんの屋敷まで来た。
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