第160話
翌日、アルネ、カーリ、リーンハル、ルーニーを呼び出す。
「悪いけど、一旦オーヂエンに帰ってまた戻ってくる。今日は闘姫のマキュリーとエリアスを帰りに連れてくる予定だ。カーリ、面倒を見てもらえるか?」
「ん、」短く返事をするがカーリは、あの2人を気に入っているのだろう。嬉しそうな顔をしている。かなりマキュリーとエリアスを気に入っているらしい。
サンベルシュさんとメルニ国王に挨拶するために広場に出る。
国王が2人揃って広場いるのもどうかと思うが、僕達が屋敷を使うのは当たり前で、国王である2人が、広場にいるのが当たり前らしい。基本的な常識の違いに戸惑いつつも2人に会う。
「サンベルシュさん、メルニ国王。僕は野暮用があって夜にはまた戻ります」
「「リオン殿、お気を付けて」」
2人に挨拶をして、空間移動魔法でオーヂエン国の王宮の前に来る。
門番に声をかけ迎えを待つ。迎えに来たのはタイナー付きのメイドだった。
メイドの案内で、王宮の奥に向かう。ここはタイナーとモンナの生活スペースだ。
応接室に案内され、タイナーを待つ。
部屋にタイナーとモンナが現れた。
「タイナー、モンナ。ただいま」
「お帰りなさい、リオン」モンナがゆっくりと椅子に腰をおろす。
「リオン、良くやったな。今やどの国もリオンの噂で持ちきりだぞ」タイナーは少し興奮気味だ。
「あまり嬉しく無い噂だけどね」僕が面倒くさそうに答える。
ダンサール国とマンチェッタ国を従えた。この事実は数日のうちに全ての国に行き渡った。
モンナが姿勢を正す。
「それよりリオン、結婚おめでとう。貴方が本当に結婚するなんて夢のようね、本当に。あの人嫌いさんが結婚するなんて。初めて彼女を紹介された時も驚いたけど。姉さんとしては夢を見てるみたい、それ程嬉しいわ」
「モンナ、ありがとう。今後ともよろしくね。それと姉さんって随分と久しぶりだね。2人の結婚式依頼、聞いたことが無かったよ」
タイナーも姿勢を正す。
「なあ、リオン。お願いがある、生まれて来る子供の守護者になってもらえないか?」
「タイナー?」
タイナーの申し出には困った、国王の子供の守護者。それは、僕がタイナー達に何かあった時に、国の行く末すら左右する大切な事だ。
僕は何かをしたい訳じゃない。家族とゆっくり暮らしたいそれだけの事だ。
ここでこの件を受けると、子供は生まれながらにリオン レース レイン、僕の保護下に入る。それは例え親である、タイナーとモンナと仲違いしても、僕は子供を優先させないと行けない。
また、生まれる子供に何かあった時には僕が責任を取る事になる。
つまり僕達の子供をタイナーとモンナの養子にしないと行けない。何とも困ったお願いだ。
「お願い」「お願い出来るか?」タイナーとモンナの声が合わさる。
「タイナー、モンナ。悪いけどこればかりは僕の一存では決めれない。オーヂエン国の未来のためにも」
ふと、有ることを思い出した。4代前の国王の時代から、第1子が生まれて直ぐに、殺される事件が続いている。有るものは刃物で刺され、有るものは毒殺されている。だか不思議な事に第1子だけだ。
恐らく2人はそれを恐れているのかも知れない。
「返事は後でいい。出来たら受けてくれると助かるけどな」タイナーが少し落ち込んだように言う。
「モンナ、出産の予定日は何時?」
「来月の中頃かな。初めてだから、少しずれるとは思うけど」
「わかった。来月は僕達もオーヂエンに滞在する。王宮や私邸の警備は僕達が担当しよう。それとルーニーは神聖魔法の使い手だ。タイナーとモンナと子供は僕達が守る」
2人の表情が一気に明るくなる。やはり心配していたことはそう言う事だった。
その後タイナーとモンナと話をしてから、王宮を後にする。今はモンナの出産の準備で慌ただしい、そんな王宮を出て街中を歩く。
首都の王宮前の通りは国王の子供が生まれる喜びで完全にお祭り騒ぎになっている。
空間移動を行う為に人気無い裏路地に来ると、1人の女が近付いて来た。
「リオン様、私はスベルド ルイ ナターリ様の使い者です」
「それで僕に何か用でも?」
「はい、スベルト様より手紙を預かっております」
そういって手紙をもらう。
「リオン様、結婚おめでとうございます。後、マリアにあったらメルも元気でいるとお伝えください」
「君もマリアを知ってるのかい?」
「はい、姉妹ように育った中です」
その言葉を最後に女が消える。マリアとは正反対の体型だ。筋肉量も少なく、スラッとした体型だ。
スベルトからの手紙を見る。
『リオン様、ご結婚おめでとうございます。タイナー殿下より結婚の報を聞き、我が事のように嬉しく思っております。
さて、我が国はナーラ国との遺恨を解消し、友好を結び仲を深めるつもりでおります。そのナーラ国より、リオン様のお母様。ルカリオ サンム サーチ様のご兄弟がいると報告がありました。
我々の捜索では分からず曖昧な情報提供とはなりますが、先ずはご報告致します。
ナーラ国は和議の国から近く、移住する者も、もしかしたら多く要るかも知れません。
お母様のご兄弟は、アイール マルム サーチとおっしゃるようです。
また、姿を消す隠匿魔法を最初に開発したのがこのご兄弟との噂もあります』云々。
お母さんの兄弟はお母さんの手紙にものっていた。だが、皆すでになくなっているはず。
もしかしたら、僕が姿を消す隠匿魔法そのものを見破れるのは、血筋なのだろうか。いささか不思議な内容だ。
手紙を読んだ後、ガレシオン公国のルッツ領に有る別荘まで、空間移動をする。
別荘にはいりカンナに声をかける。カンナは別荘の管理人だ。特に用事も無いが定期的に顔を出している。
「お帰りなさいませ。リオン様。このカンナの顔が見たくて戻って来られたのですね」
相変わらずカンナの凄い挨拶が飛び出す。
「カンナ、お疲れ様。代わりは無い?」
カンナが腕に抱き付いて来て嬉しそうに答える。
「1人、新しいメイドが増えました。と言うもの。私と一緒に最初からいた子が結婚するとこになり、ここの仕事をやめる事になりました」
「そう。新しい子はどの子?」僕が聞くとカンナが不機嫌そうな顔をする。
「もう、もう少しカンナを見て下さい」カンナが不機嫌に言う。
「カンナ、警備上の事で聞いているの。ここで頼りにしてるのはカンナだけだよ」
「む~。ずるい」カンナがむくれる。
僕の部屋にカンナと2人ではいる。カンナがメイドに声をかけお茶の準備をさせる。中に来たのは以前から入る子だ。
お茶を飲みながら部屋をくまなく観察する。
「カンナ、こっちにおいで」そう言ってカンナを隣に座らせる。
小声でカンナに話す。
「カンナ、この部屋に誰かいれたか?」
僕の真剣な顔にカンナも答える。
「いえ、基本的にこの部屋とタイナー陛下の部屋は私だけしか入れないようになっております」
「ちなみに新しいメイドは何時から来た?」
「はい、2ヶ月前からです」
丁度、ダンサールで忙しくしていた時だ。
「カンナ、新しいメイドから目を離すな。特に何もしなくていい。だが、外部との接触は全て把握しておくように」
「かしこまりました。私はネズミを入れてしまったのでしょうか?」
「いや、ネズミじゃない。この建物を女性だけで切り盛りしていると、知っている奴らだろう」
「つまり」
「うん、あそこを見てごらん」そう言ってテイブルの足を指差す。
小さな鍵が取り付けられていた。窓に着けた鍵の合鍵だ。
それを見てカンナが笑う。
「ここのメイド達は元々ガレシオン公国の騎士だった者。今も稽古は続けていると知らずにこのような事を」
この数日後に、盗賊が押し入るが全て捕らえられる。
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