第155話
オーヂエンのゴタゴタが落ち着き、マンチャタ国の使者が来る。
国王の側近と言われる虎族ドンタ、蛇族カータル、狼族メルシージュが先行して来ている。
3人が僕の前で平伏して挨拶をする
「我々はメルニ ナンク マンチャタ国王の使者としてまいりました。カーリ ベルトルトお嬢様、ご結婚おめでとうございます。
ですがこのような御仁がお嬢様のご主人となるとは、呆れて物も言えません」
虎族ドンタが代表して話す。
「本当、何でこんな細い奴を選んだのか、ましてお嬢様と言うだけの奴に我々が平伏していることすら気に入らない」
狼族メルシージュの辛辣な声が続く。
「どうすると貴方達は納得するのでしょうか?」
僕の声に蛇族のカータルが震えだす。魔力を解放し、威圧をかけて3人を押し潰すように圧をかける。
カタール、ドンタ、メルシージュが地面顔を押し付けながら助けを求める。
カータルがひれ伏す。
「失礼いたしました。我々3人は貴方様に忠誠を誓わせていただきます。国王メルニ ナンク マンチャタもこのように強い者が相手と別れば、喜ぶはずです」
「カータルでしたか、僕は問題無いですが、どうもカーリは納得していないようですけど」
カーリの態度を見るとキレているのが良くわかる。これが獣人族のやり取りなのかと思う。
使者が来る時、カーリから言われた事。絶対、上から物を言う。絶対的な力を示す事。この二つだった。
「カータル、ドンタ、メルシージュお前ら、全員ぶちのめす。
私は手加減出来ないから、お墓の準備しとけよ」
カーリの怒りに3人が、さらに地面にひれ伏す。カーリが怒るのも久しぶりに見る。獣人族の絶対的法則だろう。
僕がカータルに聞く。
「どうする? カーリの戦闘力はうちのパーティーで一番だ。対戦するかい?」
ドンタが起きて言う。
「当然、この程度で姫等と言われる事すら気に入らない」
「では、1週間休みをあげます。闘技場にて対戦しましょう。休んでいる間に闘技場を使って頂いて問題ありません」
僕の言葉に3人が笑う。その笑いは明らかに自分達の勝利を確信しているような笑いだ。
3人に宿を準備して、付いてきた従者用の宿をあてがう。アルネ曰く、ダンサール国では、こういう時はもてなすのが普通だと言う。
1週間後、闘技場に3人がそろう。
カーリがいつものように抱きつきながら闘技場来た。そのカーリの状態を見て、3人が笑う。
その3人を笑うようにカーリがいう。
「リオン、これが終わったら、ご飯行こう。ご褒美、ご褒美」
カーリをなだめて闘技場に入る。
ダラダラと僕になついてカーリを見て、メルシージュが嫌悪感を示す。
「おい、同じ女として嫌悪感を持つ。軟弱だ!!」
「ん? 関係ない。だって私の方が強いし、お前ら3人そろって私の足元にも及ばない」
僕がカータル、ドンタ、メルシージュを闘技場の中心に集める。その後カーリを中心に呼ぶ。
「では、これから対戦を始める。立ち会いは僕が行います。ただ、僕は戦いを止めるつもりはありません。戦いは自分達の判断で決めて下さい、できれば死なない事を望みす」
「おい、カーリが死んでも同じ事を言えるのか」ドンタが聞いてくる。
「僕達のパーティーは対戦は常に1人だ。対戦する人の責任です。その覚悟を止める事は僕には出来ません」
まあ、そうは言ったがカーリが負けるはずは無いとわかっているから、そう言いきれるのだろう。この3人を合わせてもカーリの半分の力にも満たない。
カーリが闘技場に立つ。特に防具を付ける訳でもなく、武器を持つつもりも無いらしい。普段、僕と訓練する時と変わらない服装だ。
「私の準備は出来てる、お前らが良ければ開始するぞ」
カータルが怒りをこらえるようにカーリに聞く。
「そんな格好で対戦? 負けた時の言い訳か?」
カーリが肩をすぼめ彼らを馬鹿にするように、あり得ないとジェスチャーする。
「負ける? この私がお前らに!」
カータル、ドンタ、メルシージュが揃って飛び出す。「死ね」「卑怯だと思うなよ」「馬鹿にするな」
3人の声が重なるなか、カーリが3人をすり抜けるように見えた。
おそらくカータル、ドンタ、メルシージュの3人には、ただ通りすぎたように見えたと思う。
だがカーリがすれ違いざまに3人の鳩尾に掌打を打ち込んだ。その衝撃の強さは凄まじくカータル、ドンタ、メルシージュの3人はその後気を失い、飛び出した勢いのまま前に倒れてしまう。
カーリが僕に抱きついて来てほめて、ほめてと虎の耳をパタパタさせ、ねだってくる。
カーリの頭をナデナデして労うと、ご満悦な顔でカーリが笑う。
少し時間を開けて3人が目を覚ます。自分達が負けた事を理解したのかカーリに平伏して忠誠を誓った。
その後は拠点に戻りマンチャタ国の本隊が来るまでの打ち合わせが行われた。
獣人族の人達は、戦いが終わるとわりとさっぱりとして遺恨が無いらしい。戦いの後からはかなりスムーズに話が進んだ。
それから僕達も、ダンサール国の首都に移動。世界樹の近くでマンチャッタ国の本隊の到着を待つ。
僕達が世界樹の近くにきてから、約1ヶ月。マンチャタ国の本隊が到着する。
マンチャッタに拠点をおく、本大陸唯一のSSSのクラン、金獅子が護衛を勤めている。僕を発見した金獅子の副リーダー マッサーとリーダーのガイが本隊を離れやって来た。
「リオン、久しぶりだな」マッサーが走ってきた。
手を振って近づくマッサーをリーンハルとルーニーが警戒して僕の前に立つ。
「リオン、久しぶりだな。先にマンチャッタ国に来てくれと思っていたのに。残念だよ」
マッサーがリーンハルとルーニーを気にすることなく話しかけてくる。
「マッサー、元気だったか?」
マッサーと握手する。
そんな僕達にルーニーが近付き。言わなくて良いことを事を言い放つ。
「あ、あのSSSランクの人。確か、リオンさんに負ける奴の名前は言わなくて良い、覚えるつもりもないって、言って負けたグループの人」
その言葉にマッサーが苦笑いするが、リーダーのガイが食いついた。
「おい、女。お前にどうこうと言われる所以は無いぞ。お前見たいに大体大したことも無い奴に何で我々が文句言われないといけない」
ガイはこれでも怒りを押さえているのだろう。だがすぐに顔に出るのは少し気になる所だ。
「あら、なら対戦すれば分かるわよ。それが貴方達の解決方法何でしょう」ルーニーが挑発するように言う。
リーンハルに小声で聞く。
「ルーニーどうしたの?」
リーンハルもはっきりとはわからないらしい。
「わかりませんけど、あのガイって人との戦いを私達観戦していたんですが、その時からこんな感じで。何か気に入らない見たいです」
そんな事言われてもな。
そんないざこざの最中カーリに連れられて、国王メルニ ナンク マンチャタとカーリのお祖父さん ハーマル ムーク マンチャタが来た。
国王がガイに声をかける。
「おい、我々の前の余興か? 今日は挨拶だけのはずだ」
ガイとマッサーが国王の指示にしたがい隊に戻っていく。
「初めまして、リオン レース レインです。メルニ ナンク マンチャタ国王」
僕が国王に挨拶する。
「お前がカーリの旦那か。中々強そうだな。わかってると思うが俺達の一族は部族に関係なく、強い者に従う。それを忘れるな」
「存じております」
「なら早い、代表を3名準備しろ。あの姉ちゃんも連れてこい、予備戦にガイを出してやる。代表戦はその後だ」
「わかりました。対戦は何時にします?」
「1週間後だ。丁度ガンスがくる。立会人はガンスが適任だろう」
「承知しました」僕が丁寧にお礼を伝えてその場が収まった。
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