第153話

ハマイルさんのお店で話し合った日の夜。

王宮謁見の間にタイナーと主要な貴族達が集まった。そして僕の登場を今や遅しとまっていた。


「遅いぞ」「何時まで待たせる」「陛下をお待たせするなどもっての他」等々。


タイナーの横にモンナが来た。

「陛下、私もご一緒してよろしい?」


「モンナ、体はどうだ」タイナーが聞く。


「はい、しっかり」モンナが微笑む。タイナーが納得した顔をした。


その時、空間移動で謁見の間に僕が登場した。貴族達が驚き兵士達が槍を構える。この登場の仕方はタイナーとモンナ。複数の貴族と兵士にしか知らされていなかった。


僕が膝を付き挨拶する。

「親愛なるタイナー殿下。モンナ王妃。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。リオン定時連絡のおり戻って参りました。

本日この時間と伺っておりましたが、沢山の方がおられます。

私は日時と時間を間違えしまったのでしょうか?」


タイナーが僕に手を出し謝罪する。

「いや、すまぬ。どうにも私がリオンを国外に追い出したと勘違いしておる物が多くてな。仕方なく本日このように呼んでおいた」


「左様でございましたか。

間違った行動をしていなかったこと、ほっとしております」タイナーを見てほっとした表情を作る。


「モンナ王妃。ここ1週間程、体調が優れないと伺っておりました。何やら甘い物が欲しくなったとか、大丈夫でございますか?」


「クスクス。リオン、そなたは心配しすぎです。それではタイナーがもう1人増えたようではございませんか。

それより本日大層な品物をもって来てくれたとか、見せてもらえますか?」


「かしこまりました」

そう言うとマジックバックから蜂蜜蟻の魔石と世界樹のしずくのはいったビンを取り出しお盆に乗せる。


そして平伏したままお盆を持ち、モンナに渡し少し下がる。


「その魔石は蜂蜜蟻の魔石です。甘い物に困らないようにとお持ちいたしました。

さらにそのビンの中身は世界樹のしずくでございます。陛下と王妃の体調を思い、お待ちいたしました」


「世界樹…」「まさか死の森に…」回りにいる貴族達がざわつき出す。


「リオン、してダンサール国との進捗はどうだ」

「陛下!」あえてマルイル辺境伯 スベルト王宮付き男爵が人払いも求めた。これも演出の1つだ。


貴族の中から否定的な言葉が出る。

「よい、少し聞かせても外交には影響無いだろう」


貴族達が外交と言う言葉に色めきだす。自らの保身に躍起になる貴族達に取って強敵が多い亜人族の国とは戦いを避けたい。何としても避けたいのが本音なのだ。


「リオン、教えてくれ」タイナーが話しするように言う。


「前国王のロンバート様は引退され、新しい国王に。サンベルシュ リカリオ様が新任なされました。

私は前国王より、新国王の見届け人を承っております」


「リオン、良くやった。人族の国は長き渡り他の種族より、虐げられてきた歴史がある。このオーヂエンがエルフ族から、アルメニア王国は魔族から、ナーラ国はドワーフ族から。我々はやっとその脅威を脱することが出来たと言うわけだな」


「オオー」「嘘だろう」等々と貴族達が声を潜め話しだす。その様子を見てマルイル辺境伯が再度タイナーに主要な貴族以外の退席を求めた。


タイナーが立ち上がり貴族達に言う。

「お前達、今回の話は無論、他言無用。リオンの動きを詮索したり、探りを入れた場合はわかっているな」

怒気をはらませ回りを見て貴族達に退室を促す。


その姿に多くの貴族が冷や汗を流し、リオンの情報を求めた貴族達は怯えながら帰って行く。


謁見の間に、マルイル辺境伯、スベルト王宮付き男爵、アルム公爵と10数人の貴族が残った。


「リオン、ダンサール国はわかった、マンチャタ国とはどうだ?」


「およそ、2ヶ月後、ダンサール国で面会します。マンチャッタ国は代々その国で一番強い者が国を納めます。

要は、僕が対戦して勝てば問題ありません」


「お待ちを、負けた場合はどうなるのです?」残った貴族のかで、姉さんやマルイル辺境伯と敵対する貴族が聞いて来た。


タイナーが答える。

「どうにもならん。リオンが勝てないならば魔王ロンバートですら勝てない事になる。

ましてリオンは獣人族の娘と結婚をするためにその対戦を受ける。

負ければリオンが結婚出来ない。それだけで終わり。勝てればオーヂエンと友好な関係を作る事が出来る。それだけだ」


「それではあまりにリオン殿がふべんでは」さらに貴族が訴える。


「心配無い。リオンは抜け目の無い奴だ。勝つ自信が有るから受けたのだろう。無ければ別の方法を探すさ。なあリオン」


「フフ。本当に、僕の気持ちをあんまり見抜かないで下さい。

でもこんなに代々的に公表して良かったのですか?僕はあんなに、派手に国を追い出されたのに」


「かまわない。リオンを追い出した事を国の内外に知らしめないと、このように上手くは事はいかない。人族の国はリオンを抱き込もうと必死だか、人族以外の国からしたら脅威でしか無いだろう。


何故なら、リオンが自由に国外を飛び回れるチャスを与えた、他国の王達はそう考え、更なる忠心を持ってオーヂエン国に使えると信じて疑わないだろう。


それこそ、他国にとって脅威でしか無い。


そこに加えダンサール国と、マンチャッタ国と友好が結べれば人族の国はもう少し豊かな暮らしを送れるだろう。民が豊かにならねば国は栄えない。

リオン今しばらく頑張ってくれよ」


「はい」


「少しお待ちを」姉さんやマルイル辺境伯に敵対する貴族が声をかける。


「リオン、国王の話し。真実か?」


「はい、ダンサール国の前国王。ロンバート様はタイナー殿下を"旨いとこやった"と褒めておりました。

私、リオンを国内と言う鎖から解放した。その事によってより強い忠誠心をえた。

そうおっしゃって感心なされておりました」


「だとすると、ロンバート前国王の退位もそれが影響していると?」


「はっきりとはわかりません。ダンサール国にも、ダンサール国の事情があると存じます。ただ。私、リオンがいる限り、タイナー殿下と。サンベルシュ リカリオ様は安泰です」


貴族達がざわつき出す。

「どういう意味だ」


立ち上がり貴族達を見る。

「僕はタイナー殿下とモンナ王妃に忠誠を誓っております。国では有りません。また。サンベルシュ リカリオ様。新国王の見届け人を勤める所を了承しました。

このお三方は僕の保護下に入ります」


さらに貴族が詰め寄る。

「つまり、国は守らないが国王達は守る。そう言う事か?」


「その通りです。タイナーとモンナに何か有れば、世界の果てにいても僕は今日のように駆けつけます。

もしこの2人に何か有ればそれが例え国が相手だとしても容赦はしません。

魔王認定を受けた者が暴れるのですから、地図から国や山脈が消えるくらいの事は当たり前でしょう」


「リオン、その辺にしなさい。それ以上は姉さんが許しません」

姉さんの声が部屋に響く。


貴族達が姉さんに怯え黙ってしまう。この国では、やはり姉さんの権限は絶大だ。


「では、陛下。私はこれで身を隠します」改めてタイナーを見て平伏する。


「うむ、リオンすまかなったな」

タイナーが寂しそうに言う。


「リオンさっきはありがとう。お陰で体調が凄く良くなったわ」

モンナが大きくなったお腹をさすりお礼を言う。


「リオン、あたしにはお土産無いの?」

姉さんが聞いてくる。

「姉さんの屋敷に同じもの届けたよ。後、マルイル辺境伯にも」


「そ、なら許す」姉さんがいたずらっ子のように笑う。


「では、陛下、王妃。失礼します」

そういって空間移動して一度アメール村に戻る。

ギルドに入るとランバートさんが1人で飲んでいた。


「ただいま戻りました」

ランバートさんに声をかける。


「リオン戻ったか。どうだった?」

ランバートさんに事の次第を伝える。ハマイルさんがランバートさんにも情報提供していたようでランバートさんも何かと動いてくれていたらしい。


不意に大きな魔物の気配を感じて構える。


バサッ バサッ バサッ

ギルドの前に降りたらしい。ギルドを出るとラーネ バハルとハマイルさんが来た。


「ハマイルさん大丈夫でしたか」声をかけるとハマイルさんが笑いながら問題無いと答える。


「リオンさん、今度、お父さんも会いたいって言ってましたよ」そう言うとラーネ バハルが帰って行った。


僕達は遅い時間にギルドで3人でのみ明かす。

良く日 ハマイルさんとギルドの食堂でご飯を食べていると、リーンハルとルーニーが狩りに出かけた。

最近、マジックバックをギルドでも買ったらしく、食材を保存出来るようになったらしい。


ランバートさんも忙しいくなり、中々狩りに行けない為、2人が沢山狩りをしてくるらしい。


「所でリオン君、タイナーから色々聞きました。すみません私なんかのせいで、大変な思いをさせて」

ハマイルさんが反省しきりで謝って来た。


「かまいません。タイナー肝いりの政策の為に隠密行動をしている事にするなんて、ハマイルさんも良くあの場で思いつきましたね」


ハマイルさんも笑いながら話す。

「でも、良かった。これで私はリオン君に表立って協力出来ますね。世界中の面白いネタをどんどん持って来て下さい。私も刺激を受けます。更なるハマイル商店の発展に繋がります」


流石ハマイルさん。商人魂は凄い。

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