第151話
集まった連中にさらに声をかける。
「所で僕と戦いますか? それとも逃げますか? ちなみに逃げた人は追いかけませんよ。向かって来た人は確実に殺しますが」
「逃げますか ?」「追いかけません ?」
「ハハハハハハハハ」ならず者達が笑い出す。
辺りから嘲笑が耐えない。
「お前の家には女が沢山いるな。そっちはどうなってもいいのか?」「ハハハハハハハハ」
「ハァ」思わずため息が出る。僕だけにしておけば良かったのに。まだ生き残れるチャンスがあったのに。
「所でダンテは家に向かったのかい?」
「そうだよ。今頃、お前の家の中はパーティーだぜ」
ひげた笑いに思わず手を合わせてお祈りしたい気持ちなった。
オーヂエンでは決して起こらない問題だろう。個人的は嬉しくも有るが、あの4人にはムカツク問題でしか無い。まして、国王の交代等、ストレスが多くあったはず、間違いなく、ストレスの発散の材料にされていると思う。
「悪い事は言わない。命が欲しければここから逃げる事だね」
僕の言葉にならず者達が顔をひきつらせ、怒り出す。
そして僕が最も恐れる事態が起きた。
「ちょっとリオン、逃がすつもり」アルネの言葉が辺りに響いた。それと同時に冒険者達を囲うように炎の柱が練習場全体をつつむ。そのせいで誰もな逃げる事ができなくなった。
4人が練習場の真ん中の僕の所に来た。
「リオン、こんな連中逃がす気でいたの?」カーリがダンテを地面に放り投げ、文句を言って来る。
ざわざわと、ダンテを見て戸惑うならず者達。
アルネが杖を持ってならず者達を威嚇する。
「私は、ロンバートの孫。そして第一王女のアルネ リカリオだ。良くも我が家に土足で踏み込んでくれたな。
ロンバート以来の決闘方法でけりをつけよう」
「ちなみに、リオンは私の旦那様だ。こんなくだらない事には手を出さない。私が相手だ」
ならず者達がしなだれてしまった。有るものは自ら自殺を図り、あるものは周りの者を切り捨てる。
錯乱したかのようなおぞましい光景がそこにあった。ロンバートの決闘方とは、それ程恐ろしいものなのだろうか?
半分近いならず者達が死しんだ。残った者達がアルネに向かい対峙する。
リーンハルが前に出る。「ダンテ達、館に来た者は私が全て倒した。お前達がアルネさんに近づく事は決して無い。ただ、世界最強のリオンのパーティーに相手してもらっただけでも感謝しろ」
リーンハルが風斬丸を持って向かう。風が冒険者達をかすめる。服が斬れる、それを見た冒険者達が恐怖の目でリーンハルを見る。
リーダー的な男が出て来た。
「ロンバートよりその男は強いのか?」
僕を指差し聞いてくる。
「知らない。僕は倒していない。僕とロンバートが戦うとこの国は壊滅するだろう。ロンバートは寝床が壊されるのが嫌なだけだよ」
僕が答える。
「寝床が壊される」「ロンバートは本当に寝床が壊されると言ったのか?」
男が震え、恐怖と歓喜の眼差しで僕を見る。興奮を抑え切れない顔で聞き返してきた。
「そうだ。ロンバートから直接聞いた」
僕の言葉にならず者達がさらに興奮しだす。
リーダー的男が前に出る。
「俺達は運が良い。俺達はロンバートの旦那の元で親衛隊をしていた。俺達50人が対戦する。あんたらはその姉ちゃんで良いか?」
リーンハルが前に出る。
「問題無い。私達は元々どんな対戦も1人で行うのがパーティー内でのルールだ。私がお前達に負けてたら、私達の負けで良い」
リーンハルの男前な言葉に元 親衛隊がざわめく。その中にアルネが割って入る。
「私が立ち会う。ロンバートの流儀はお前達も知ってるな。不思議とリーダーのリオンはロンバートの流儀と全く同じ考えだ。
リオンは魔王認定されている人物だ、その仲間が弱いはずが無いのもわかるな。お前らの骨は責任を持って私が拾ってやる。喜んで死ね」
アルネの強気の言葉に少し驚く。だがリーンハルが負けないのも確かだ。
リーンハルがゆっくりと風斬丸を振ると男達の後ろにあった炎が消える。
「私はリーンハル エレン。この名前に誇りを持っている。誇りを持つ者は前に出てこい。集団でも1人でもかまわない。私が相手だ」
風斬丸を地面に刺し、柄を両手で軽く握りしめ辺りを見るリーンハル。
その時、上から天光が射し込み。リーンハルをつつむ。その美しさがリーンハルを天使に見せる。
周りからため息が漏れた。どうやら冒険者の男達も僕と同じものを感じたのかもしれない。
ならず者達が皆膝を付き平伏する。その様子を見てアルネが戦いを止める。
「この勝負は私が預かる」
「「「ハイ」」」
男達の声が揃う。そして面倒な1日がようやく終わった。後はリュウの問題だけだ。僕はロンバートの流儀を知らない。だが彼らはそれを納得している。
ロンバートの元親衛隊達は解体されたギルドを新しく建て直す事になり、その中で働く事になった。
元々、ホルスメン中央大陸の中央ギルドには所属していないギルドだったらしく。新しく中央ギルドに所属して再出発することになった。
元ギルドマスターのダンテはリーンハルの強さに完全に参ったらしく。その後見なくなってしまった。
そんなおり、リュウと会う。今度は2人でゆっくりと対戦することになった。
「リュウ、来たかい。始めようか?」
僕が静かに声をかける。
あの練習場にリュウ1人で来た。リュウの格好は羽織袴にたすきをかけて、静寂を持ってたたずんでいる。
僕はリュウを前にお辞儀をする。
「柳一刀流。リオン参る」
リュウがボソっと呟く。
「柳一刀流、斑目か?」
「すまない、その弟子だ」
リュウも礼儀持って対峙する。
「鬼人(キジン) 座部座(ザブザ)族 座部座 龍神(ザブザ リュウシン)だ。柳一刀流を納めたと言うことはは心意流居合い術も納めているのか?」
「そうだ」
「懐かしい。我ら鬼人族は元々、複数の種族に別れていた。今や微かに残った者が身を寄せあっている。
斑目はもういないのか?」リュウが感慨深く聞く。
「詳しい事は知らないが、師匠の本間 勇幸(ユウキ)はそう言っていた」
「そうか」リュウの言葉が止まる。
その言葉を合図にたちあいが始まる。リュウが鬼人族だとは知らなかった。角も見当たらず、体型も人族そのものだ。
僕とリュウが動くこと無くお互いを見ながら時間を過ごす。緊張感の有る時間が流れる。
「キューン」鳥の声に拮抗が崩れた。
リュウが下段に突きを繰り出す。リュウも日本刀と言われる刀を持ち、足を狙い執拗に攻めてくる。
刀を捌き、下段から返す刀でリュウの顔を狙う。リュウが顔を引いてかわすが、顎の皮膚が切れて血を出す。
気持ちリュウの踏込みが甘い気がした、おそらく癖だろう。幼少期に強すぎる者と対戦して身につけてしまった恐怖心かも知れない。
リュウは間違い無く強い。レース レイン(本間 勇幸)と比べ物にならない位に。
ロンバートは無意識に自分に対抗出来る才能を潰してしまっていたのだろう。幼少期よりロンバートに育てられたリュウは、その癖が抜けない。
リュウと何度も刀を交えてそう確信した。残念だ。これがガンスなら僕を超える強さをリュウは得たかも知れない。そう思うと残念でならない。
「リュウ、君はまだ強くなりたいか? もし強さを望むなら、適任者を紹介しよう。だが奴は、物凄く人見知りだ。
試して見るか?」
リュウが動きを止める。
「なあ、リオン。お前から見て俺はまだ強くなるか?」
「何を言ってる。粗削りの状態で。後4~500年頑張ってみたらどうだ。鬼人族は人間より長生きだろう。
それから駄目かどうか考えたらどうだ」
リュウが笑い出し僕を見る。
「人族は不思議だな。俺より生きてる時間が短い癖に、俺より深く物を見ている」
「人族ならではだよ。100年生きれば人族の中ではかなりの長寿だ。
多くの者はそんなに長くいきれない。だからこそ。亜人族の中で最も充実していると僕は考えいる。
長くだらだらといきるより、太く短くが良かったりするのだろう」
リュウが刀をしまい、頭を下げる。
「リオン。良ければ紹介してくれ」
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