第148話

“暴食神 ノビア”の巣を観察すると、様々なモンスターの骨が落ちている。魚系、ワーム系、魚人系等もあれば、共食いと思われる残骸、シールズマウンテンの亡骸まで落ちている。


暴食神とあだ名される所以だろう。


ノビアが僕達を見る。襲う気持ちがないのか目を閉じる。ただ尻尾の蛇だけは僕達を捕捉している。


ノビアに背中を見せるのが少し緊張する。ノビアはと言えば動く気配がなくそのまま更なる眠りに付いたのだろう。いびきが聞こえる。


「ぷっ」「フフ」


ルーニーとカーリが顔を見合せ笑っている。僕がルーニーとカーリを見て。

「何が面白いの?」


「リオン、時々いびきかくよね。そのいびきにそっくり」

「ふふ、たまにですけど最初はびっくりしました」


2人がニタニタと笑っている。


寝てる時の現象は仕方ない。実際に自分じゃわからないし。


あたふたとしてるとカーリがさらに話す。

「こうやって熟睡してるって、自分が絶対的に安全だってわかってる時だけだよね」


ノビアを見ながら話す。それにルーニーが同意する。


「何かここまでゆっくりさせると馬鹿にされてるみたいでなんか、ムカつきますね」


「ルーニーもそう思う。私もさっきからイライラしてるの」


「カーリさんもですか? じゃ決まりですね」カーリとルーニーが悪い顔をして笑う。


「リオンさん、今、変な想像しませんでしたか?」ルーニー鋭い。

「ん、リオン顔に出る」カーリがうなずきルーニーを擁護する。


カーリ、ルーニー。2人とも怖いよ。

僕は顔を横に降り2人に追随する、それしか選択肢がないんだもの。


でもノビアはいびきかいていない気がする。テイマーの感だけどあれ服従の証だよね。「カーリ、ノビア服従しているように見えるけど?」


「どういう事?」カーリが首をかしげる。


「あれはいびきじゃなくて、服従してるだけだよ。ノビアなんかの両生類のモンスターは、強い者にひれ伏す時に、出す鳴き声がある。今回はその鳴き声だよ。テイマーとしてはほっとく事を進めるよ、ここにいるノビアは卵を守るだけだじゃなく、孵化させるのに必要な働きをしているはずだよ」


「どういう事?」カーリがルーニーを止める。僕達のルール、誰か異論を唱えたら最後まで話を聞く。これがチームを続けられるコツ。


「僕は正直、海や虫系のモンスターは苦手だけど、両生類系のモンスターについては少し知識がある」


「うん、続けて」良かったカーリが興味を待ってくれた。


「ワニ、シールズマウンテン、シールズタートルと言った巨大モンスターは卵を与える代わりに孵化を促す。

つまり固すぎる卵のカラは赤ちゃんが自力で破れない。その為、外部の力で卵を割って子供を外に出す為の役割が必要なんだよ。

ここにいるノビアはその役割を果たしていると考えられる。

だから、自然の法則にそってここで生きている、そんな存在を仕留めるのは反対かな」


カーリが考え込む。ノビアは僕達が近くにいるためか、額から汗をかいて通り過ぎるの待っている。


カーリがノビアに対し魔力を出す。ノビアが震えて死を覚悟した。


「わかった。リオンの話を信用するよ」カーリが認めてくれた。


ルーニーを見ると仕方ないといった顔をしている。

「カーリさんが認めるならそれで良いです。でも食べて見たかった」

ルーニーの言葉にノビアが完全に怯えてしまった。ルーニーが残念そうにノビアを見ると、さらにノビアが縮こまる。


ノビアに別れを告げてシールズマウンテンの卵を取りに行く。


卵のそばに来ると卵が6個もある。中から持ちやすい物選び1つ持って来る。

ノビアの前を通りすぎダンジョンの出入口に来た。どうもモンスターの数が少ない。もしかしたら僕達は強くなりすぎてモンスターから毛嫌いされているのかも知れない。


来た道を戻る、階段を登り外に出て転移石の所まで戻ると、来た時より大分水面に近い場所に転移石があった。シールズマウンテンが移動しているのだろう。


転移石を使い海辺のダンジョンに転移する。卵は割れる事なくルーニーが抱えている。

卵を持ち帰るのに神聖魔法が必要ってどういう事だろうと考えいる間に、索敵に沢山の人の反応を感じる。


他の冒険者とかち合うのが面倒なので、空間移動で拠点に戻る。部屋に出てキュートビッヒに会いに行く。


ルーニーとカーリがキュートビッヒに会いに行き、僕はダンジョンの近くに空間移動して戻る。


ダンジョンの入り口がごった返しているが、もめ事ではなく、複数のパーティーが、順番をまってダンジョンに降りて行った。


拠点に戻る間、露店を覗き面白そうな物を探しつつ戻る。肉串のお店の前でリュウと会う。


リュウが気がつき声をかけてきた。

「あんたか。この辺はなれたかい?」


「お陰さまで」肉串を買いリュウと話をする。

「あれからギルドに顔を出さないがどうした?」リュウが不思議そうな顔をする。


「別に用事が無いだけですよ。思ったよりモンスターも取れないし。この辺に狩場は無いですか?」


リュウが少し悩んで教えてくれる。

「海辺と少し違うがモンスターが沢山出る場所がある。おそらくあんたらだと、物足りないかも知れないけど。地図は持ってるかい?」


ギルドからもらったこの辺りの地図を出しリュウに渡す。


リュウが地図に何ヵ所か印を付けて返してよこす。


「この印の場所がモンスターの発生箇所だ。かなり狂暴なモンスターが出るから注意が必要だ。後、ギルドでは買い取りしないから、卸す宛が無ければやめた方が良い」


「そう、ありがとう」地図を持ちリュウにお礼を伝えて拠点に戻る。


拠点に戻るとキュートビッヒが驚いた顔で僕を見る。「リオン、お前さん達ノビアに会わなかったのかい?」


「いや、であったよ。ノビアが戦いを拒否していたからそのまま卵だけをもらって来ました」


キュートビッヒに何故神聖魔法使いが必要なのかを聞くとノビアは、卵のを取る者はモンスターであれ何であれ卵に近づくだけでやられてしまう。上手くすれば神聖魔法で殺られながらも卵を取ってくる事が出来る。そう言う返事だった。


「そんな所に僕達を向かわせたのですか?」

僕の苦情をキュートビッヒは無視して、

「ロンバートより怖い奴に危険は無いだろう」と言うと何処かへ出かけてしまった。

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