第143話

翌日、7階層の入り口、セイフティゾーンに来る。


昨日、突如として現れた女性がいた。

「ついてきなさい、この塔に来た証をあげる」


そう告げると1人でセイフティゾーンを出ていく。僕も後に続きセイフティゾーンを出る、オークの集団がいて、その集団を何も無いかの如く、女性がすり抜けて行く。


僕の驚きをよそに、オークが僕に気づき敵意を剥き出しで襲って来る。

「ダブルクロス」真空の刃を飛ばしオークを倒す。残ったオークを一つ一つ丁寧に倒して女性の後に続く。


「あの、貴女を呼ぶときはなんて呼べば?」


「私は世界樹の聖霊です。名前はありません。好きなようにお呼び下さい。ロンバートは私を聖霊と呼んでいました」


「では、僕も聖霊さんと呼ばせてもらいます。

聖霊さん、この後何処に向かうのですか?」


「私の部屋です。そこに証があります」


7階層と8階層の間に聖霊の部屋があるらしい。空間の隙間を縫うように入る、そこは世界樹その物だった。


ダンジョンから外れ世界樹の中だと思われるその空間に池があり、下から新しい世界樹が芽吹いた。


その圧倒的な美しさに驚いていると木の実をもらう。

「食べな、世界樹の実だよ」


「世界樹の実? これが」その実は3cm位の大きさできれいなピンク色をしている


実際の世界樹の実を初めて見た、世界樹の実を見ると幸せが訪れ、その実を食べると死が訪れると言われるものだ。


聖霊に言われるまま世界樹の実を食べる。


スッキリとした甘さにしゃきしゃきの食感、後から来る爽やか酸味、これは止まらない。


「世界樹の実を食べると死ぬと言い伝えがあるけど本当ですか?」


「おおむね間違い。他の食べ物が食べれなくなった奴、世界樹の実を追い求め、おかしくなった奴等様々だ。

ちなみにロンバートは一度も口にしたことがない。死が怖いらしいぞ」


「さてリオン。1階層のベットで休め。お前さんはまだまだ潜在能力をたくわえているようだ。それを開花させないといけない」


聖霊が僕のおでこに手を当てる。その瞬間、目の前が明るくなり意識を失う。


目が覚めるとベットにいた。部屋を見ると聖霊がいる。

「聖霊さんが、僕をここまで運んでくれたのですか?」


聖霊が振り向く。

「良く寝たな。1週間も寝たままの奴は初めてだ」


「1週間。そんなに」「僕意外にも寝た人はいるんですね?」


「過去に2人程な、1人は女、ハーフドラゴンだ。可愛いやつだったぞ。もう1人は魔族の男。愛想の無い奴だった。


だかお前が一番潜在能力を持っていた。これから1週間程で、表に出てくる。

ゆっくり慣らせ、無理しても駄目だぞ」


「そうですか」そう言って起き上がろうとしたが体に力が入らない。


「無理するな、1週間は寝て過ごせ。その後は立ち上がる事も出来るだろう。それとこれをロンバートに渡せ。証だ」


そういって渡されたのは世界樹の実だ。だいぶ時間が立ちカラカラに渇ききっていた。


「聖霊さん、聞いても良いですか?潜在能力とは何の事でしょう?」


「お前は自らの能力を最大にしたくて来たのではないのか?」


「はは、すみません。ロンバートさんから証を取って来るように言われただけだす」


聖霊が首を傾げる。

「何の為だ?」


「僕の結婚の為です。ロンバートさんよりしきたりと聞いています」


聖霊が頭を抱えている。過去、ロンバートと何かしらの約束でもしたのだろう。


「お前は災難だったな。ここを出たらロンバートに私に会いに来るように伝えなさい。もし逃げたら一生呪ってやると伝えて欲しい」


聖霊がロンバートに対する怨み節を歌った後、姿を消す。


聖霊が消え、僕も眠りに落ちる。どれだけ寝て、どの位の間起きているのかあやふやな時間を過ごす。


ようやく体を起こせる様になる。お腹の減りを感じて少し食事を取る。そこから体の回復を図る。寝て過ごしたわりに体の調子も良く歩く事も問題はなさそうだ。


セイフティゾーンを出てダンジョンを出る。ずっとダンジョンの中にいた為か外の光が眩しく、少しダンジョンの中で目が慣れるまでの時間を取る。


ルーニーの気配を感じて回りを見る。だがダンジョンの中にはいない。感覚が鋭くなっているのだろうか?


不思議な事があるみたいだ。


目が慣れてきてダンジョンを出る。

「リオンさん? リオンさんだ」ルーニーの声が聞こえる。ルーニーが抱きついて来た。まだ体が上手く動かなくそのまま倒れてしまった。


「ルーニー、ただいま」ルーニーの頭を撫でる。

「ルーニー、僕はどの位ダンジョンに潜っていたかわかるかい?」


「リオンさん、1ヶ月ですよ。1ヶ月。

何していたのですか? 心配したんですよ」

ルーニーがずっと泣いている。


カーリが駆けつける。

「リオン、髪どうしたの?」


「カーリ、ただいま。僕の髪変かな?」


「ウン、何か変 フフ」


「はは、何か変か? カーリが笑ってくれるならいいや」


「ルーニー、独り占めは駄目だぞ」そういってカーリが僕を起こしてくれる。


「ギュー」と言ってカーリが抱きついて来る。

いつもはカーリの力に、体が痛いと思う事が多かったが痛みを感じることなく不思議に思う。


カーリとルーニーに支えられ、僕達の為に準備された家に入る。

アルネとリーンハルが僕をお化けを見るような目で見てきて、少し傷つく。


「アルネ、リーンハルただいま。アルネ、このダンジョンの事教えてもらえたらもう少し楽だったかな。リーンハル。一応、僕は生きてるよ」


「リオン」「リオンさん」


「ただいま、遅くなってごめんね」

アルネとリーンハルが抱きついて来てまた、倒れる。


「「「「リオン」」」」みんなの声がそろう。

「ごめんな、まだ体か言うことをきかなくて、でも大丈夫。ロンバートに言われた証は取って来た。皆、家族になろう」


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