第140話


「カーリ、アルネ始めてちょうだい」僕の呟きにカーリが反応する。


カーリをみてアルネも動く。カーリが兵士2人と宰相の気を失わせる。アルネ、リーンハル、ルーニーが各々に縄をかけ、動きを封じる。


「ふん、手際がいいな。昔のアルネならこんな事やらなかったぞ」ロンバートが少しふてくされる。


「あの2人はどこに行っても人気者でね、ある意味、慣れですよ」僕の説明にロンバートは肩をすぼめる。


カーリが兵士2人を担ぎ上げ、アルネは宰相を担いでこっちに来る。

「では、向こうの出入口まで走って行きましょう」

僕の声かけにみんなが応じる。ロンバートが楽しそうに返事をしている事に少し驚きを覚える。


最東の村とダンサール国を繋げるトンネルはかなり長い。身体強化をかけて走り続ける。途中兵士と宰相を交代で担ぎ丸3日をかけて出入口の近く来た。なかからも外の明かりが見える辺りで1度休む。


アルネと2人で念入りに索敵を行う。外に兵士と魔法使いの30人が待機、別で一際でかい魔力を放つ者が奥に独り確認出来る。


話し合いの結果、僕とロンバートが先に出る。その後アルネ達が出てくる事になった。


僕とロンバートが出入口に近付くと、独りの男の声が聞こえた。


「ロンバート国王。お帰りでございますか。姫の奪取は上手くいきましたかな?」


エルフ族は年齢がわかりづらい、見た目は20代、でも話し方は年寄り臭い。


「何の事だ、私はアルネに関してはほっておけと伝えたはずだぞ。ゼスト」


「何を言われる。国王も歳だ。跡継ぎが必要だろう。現在、我ら一族でもっとも強いのはアルネでしょう。であれはアルネを戻すのが一番です」


「それなら心配はいらん。アルネが結婚を決めた。その男も一緒にダンサールに向かっている。だか、私はアルネとその男にダンサールを任せるつもりはない。

何故ならその男は風だからだ。国等と言う小さな箱には収まらんよ。アルネは良い男を見つけたものだ」


奥から男だろうか、強そうな者が出てきた。

「ロンバート、貴様程の男が何をほざいている。アルネをとっとと差し出せ」


声を聞く限りでは女の人だ。だかこの人の登場で周りの士気が一気に高まった。やはり今回の首謀者で間違いなさそうだ。


「嫌だ、それと私は引退はせんよ。元々私が住みやすい寝床を作ったことから始まった国だ。お前達は何も自分達で、何かをなそうともしない。そのような奴らに国は継がせられない。


欲しいなら自らの国を作れ。それが私の答えだ」


男のような女が剣を抜く。僕の持つ日本刀より弓なりに曲がった変わった剣だ。


「ロンバート、貴様の好きにはさせん、その命もらい受ける」


ロンバートが冷ややかな眼差しで女見る。

「お前達程度が千人集まっても意味ないぞ」


「私だけだと思うな、ここにいるのは貴様を倒す為に集めた逸材だ」女がひげた笑いをする。


「なあ、ロンバートさん。この人は男なのか、女なのか?」

僕が全く関係ない質問して、周りの雰囲気を壊してしまった。


「ふ、リオンにはエルフの性別が分かりにくいようだな。こいつはっ・・・・・・?」


「って、お前どっちだっけ?」

ロンバートもわからなかったようだ。ロンバートが女に近づきまじまじとみて、胸を揉む。


「ん、おん…」ゴッシャー。

ロンバートが殴られ、飛んで行った。この力、間違いなくレベルは高い。


「どうでも良いけどよそ者なんで、巻き込まないでくれると助かります」僕が女に言う。


「貴様は知りすぎた。消えてもらう。

おい、ロンバートをやる前の前哨戦だ、こいつをやって体を暖めろ」

女が後ろを向きながら仲間に伝える。


「「「「おおー」」」」


敵がロンバートから僕に変わる。


「失礼な質問をしたことは謝ります。やっぱり面倒くさい」僕が頭を下げる。


だが、そんな事ではやはり許してもらえそうに無い。兵士達が剣を抜き、魔法使い達が魔法詠唱を始める。


仕方無い、相手をするか。ロンバートの手前余り手の内を見せたく無いだけど。

てッ。ロンバートも一緒か? してやられた。


「おい小僧、持ってる物は全て置いていけ。そしたら許してやらん事も無いぞ」最初にロンバートに話しかけた、年寄り臭い話し方をした男だ。


「はぁ」思わずため息が出た。めんどい。段々と腹が立って来た。何でこの国のお家騒動に巻き込まれないといけない。


僕達の目的は結婚する事だぞ。


魔法の詠唱が終わり魔法が飛んでくる。ロンバート曰く、羽虫にかじられた程度の攻撃だ。

疑問だ。こんな程度の攻撃で、あの第4魔王を倒すつもりか? この程度の魔法じゃ、ワイバーンすら倒せないだろう。


こいつら遊びなのか。


僕に向かい兵士の剣が向かって来る。避けないでいると、白狐の尻尾が出て、兵士の攻撃を全ていなす。


僕が歩いて女の元に向かう。

「なあ、聞いても良いかい? 貴女達は本当にロンバートさんを倒そうとしてるのかい?」


女が立ち上がる

「当然だ。あいつがのさばるからダンサールは日の目を見ない。

悲願なんだよ。ロンバートを倒し、新生ダンサール国を作る。それが我々の悲願だ」


「なら、何でこんな弱い連中をつれて来た。もっと強い奴はいないのか?

マンチャッタ国の金獅子の方がまだ手応えがあったよ」


マンチャッタ国と言った言葉に反応を示す。どうやらマンチャッタ国との問題が大きいのだろう。


そもそもエルフは、平和主義のはず。何でこんな好戦的な者ばかりなんだ?

それともたまたま僕の周りに好戦的な者だけが集まったのか?


僕が女と対峙している時に、ハイエルフの男が来た。かなり強そうな男だ。


「なんだ、ロンバートじゃないのか?まあ良い、ロンバートとと変わらない強さの奴だな。楽しみだ」


「ロンバートさんなら、そこで観戦してるよ。おたくさん達とは戦う事がめんどくさいらしいぞ」

僕が指を指してロンバートを見る。ロンバートは手を降って答える。


2人が驚いた顔をしている。そんな2人をよそに魔力を開放させる。


兵士や魔法使い達は苦しみだす。立っているものやっとな状態になる。


「なあ、貴方達に勝ち目はない。止めるなら今だぞ、今なら死ぬ事は無い。

貴方達は僕にもロンバートさんにも勝てない。残念だけど」


僕の魔力に耐えつつも、戦いは止めるつもりは無いらしい。2人を殴り気を失わせる。


魔力を押さえ元に戻るとトンネルからみんな出てきた。兵士と魔法使いも捕えられる。


「なあ、ロンバートさん? この国じゃこんな事が当たり前におきてるのかい?」


「そんなこと無いぞ。最近、私が丸くなっただけだ。昔なら、こんな連中すら現れなかった。

ガンスを見てみろ、あいつの周りでこんな事する奴何ていないだろう。あいつは今でもギラギラしてるからな。

私はあいつと違って最近年を感じるようになった。その違いだよ」


ロンバートと話をしているとアルネが来た。

「リオン、お疲れ様」


「アルネ、悪いね後始末してもらって」


「いいよ」ニコニコと笑うアルネ。


「アルネ、冷たい。昔はおじいちゃんと結婚するって、言ってくれてたのに」ロンバートがすねてしまった。


アルネもチラっと見たけど完全無視をしてるし。何かいびつな関係。


「リオン、すまんが少しここで待っててくれ、いま清掃要員をつれて戻ってくる」

そう言うと1人空間転移する。


アネルが近寄る。

「おじいちゃんと何を話したの?」


「ロンバートさん、まだ国王を止める気は、無いらしいよ。元々、寝床として作った場所が国になったから。

ロンバートさんとしては寝床が気に入っているから、荒らされたく無いしい。

それが理由だと思う」


「う~ん、おじいちゃんらしい。おじいちゃん元々国とか興味無くて、自分の生活スペースに色んな人が来て、それが秩序を持って出来た国だから、国って言う感覚がないのよね」


「う~ん。僕にしては頭の痛い問題だね」

僕が求めたのも生活スペースであって国では無い。ロンバートの問題は僕の今後の課題かもしれない。

ダンサール国を良く見て学ばないといけない、そう思う。

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本年最後の投稿です。

本当に皆様のおかげです。フォローしていただり応援頂いたり、感謝の言葉もありません。


本年同様に、来年度もよろしくお願いします。

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