第139話

ロンバートが男達を見てさらに声をかける。


「私の声は聞こえたか? ここで何をしている?」


「我々は、冒険者です。これは我々の内輪もめです」


「私の二つ名は勿論知ってるね?それでまだ嘘を付くのかい?」

ロンバートが怒りを押さえて聞く。


「は、あんたみたいな上の奴にはわからんよ」突然、怪我した男が怒り出す。


「所詮、ふんぞり返ってのさばっている、安全な場所でごろごろしてるような奴には、俺達の苦労なんてわかるはずも無い」


ドシャ、カーリが男を殴る。


思わず僕とロンバートが唖然としてカーリを見る。


「おい、貴様。話し聞いてりゃあ、何だ?

てめぇ、ち○ぽはついてんのか?

何がわからないだ、てめぇらが弱いから、やられただけだろう。

てめえらが、もっと警戒していれば、やられなかっただろう。それとも入り口で待ち構えている、てめぇらの元仲間にそんなに殺されてぇのか?」


カーリの怒りをなだめつつ、男達に話を聞く。

「とり合えず、話を聞こうか。僕もロンバートさんもそんな我慢強い方じゃない。

当然気に入らなければ、君達を殺すかそのまま仲間のにつき出す。

納得行く情報なら守ってやる。どうする?」


「フン、てめえらに言うことは何も無い」

介抱していた男が強がる。


「わかった。カーリ、こいつら全部、むいてしまって入り口に捨てるぞ」

ロンバートの声にカーリが悪い顔で笑う。


本当なら僕が止める所だけどカーリの楽しそうな顔を見ると、止める事に何故か違和感を感じてしまう。


「リオン」アルネが小さい声で訴える。


「外、おかしい。少なくても30人はいると思う。まともな感じじゃ無い」


「アルネ、それは索敵したの?」


「ううん。索敵じゃそんな範囲まで届かない。もっと不吉な感じ」


「わかったよ。アルネの感は正しい。少し僕達だけの話し合いの場をも受ける」


「ロンバートさん。少し僕達5人でゆっくりとしたい。少し時間をもらえるか?」

僕が声をかける。


「ぶっ、ふー、ふー、」「リオン、天幕を用意してやろう、音の遮断も付けようか?

下がこんな岩場じゃしんどいだろう。何か敷くものも必要だと思う。それか……」


ダン、ゲシゲシ。

アルネとカーリがロンバートをのした上で、足蹴にしている。

「天幕と遮音機は借りるね。おじいちゃん、余計な事を言うと、私達2度とおじいちゃんと会わないからね」


「アルネ、カーリ。君達は何をしようと、しよっ  ぶっー」

アルネが怒りの余りロンバートを単刀で刺す。


「じじぃ、どうせこの位じゃ死なんだろう。私は優しいから何千回でも付き合って刺してやるぞ」


アルネが壊れた。真面目にそう思う位にすごかった。

アルネが婿探しと言って国を出たのがわかる気がする。ロンバートの色欲は異常だ。


エルフ史上、始まって以来の女好き、子供と孫の数は千人を越えると言われ。色魔と言われる第4魔王は実在した。


基本、エルフ属は種族に関わらずプライドが高く、1人の異性と生涯を添い遂げると聞いたことがある。


そんななかでロンバートの存在は異常だ。エルフ以外にも、関係を持ち、様々な種属との間に子供を作ったと言われる存在。


にも関わらず国王でいられるのはでたらめなその強さだ。

ガンスに次ぐ強さを誇り、第5魔王達と比べはるかにその強さが違う。


魔王の強さは別格だ。その中で第1魔王とガンスは他の追随をゆるさない強さがある。


ちなみに第2魔王は不在。


その下がロンバート、第4魔王。

実際にガンスとロンバートではかなりの実力差がある。

実質、ガンスと第1魔王がその全てを仕切っていると言っても過言ではない。


ロンバートからかなり離れてお母さん、ルカリオ サンム サーチが第5魔王。


第6魔王が現マンチャタ国王 メルニ ナンク マンチャタ。


第7魔王は不明。人前に出ることを極端に嫌い、その存在を知るものも少ないと言われている。


第8魔王がマルチーズだ。


マルチーズは魔族の中では絶対的な力を持つ存在だか、そのマルチーズですら第8魔王だ。上が凄すぎる。それだけ規格外が揃っているのが魔王認定された奴らだ。


「アルネ、カーリ。準備ができた」

僕が2人を呼ぶ。


アルネがあぐらをかいて座り瞑想する。

ものの数分で入り口の存在を把握した、外には鎧を付けた兵士が20名、魔術師と思われる者が10名。狙いはロンバートその人だ。


理由は不明、中に、かなり高レベルが2名いるらしい。


まあ、魔王認定されている奴に挑むのだから、それなりにやり手だろう。

その上でアルネからの指示はこうだ。


宰相である父と兄の捕縛、その上で外の30を捕縛するのが一番。そういう見立てだ。


「ロンバートさん? 少し話そう」

僕の声に露骨に嫌そうな顔をする。


「悪いが僕だけだ、あんたも1人で来て欲しい」


ロンバートがリーンハルとルーニーを見てため息を付く。とぼとぼと面倒臭そうに30m程離れた僕のところに来た。


「アルネの見立てだ。こいつらの狙いはロンバートさん、貴方だ」


「羽虫に噛られた程度だろう。気にしない気にしない」ロンバートはまだ面倒臭そうなな顔をしている。


「どんな小さな傷口からでも、細菌は侵入する。取り込んだ相手に気付かれずに増殖を始めて、相手に大ダメージを与えれる所まで来て始めて顔をだす。

どんな大木も内側から狙われては誰も気付かない。そして、少しの風で根もとからポッキリと折れる。

アルネの言いたい事はそう言う事だよ」


「この話を聞ける奴はいるかい?」ロンバートの表情が少し代わる。


「カーリ位かな、カーリは耳と鼻は我々の数百倍は優秀だ」


そう言ってカーリを見ると普段立てない虎の耳を立てパタパタとしている。


「フム、カーリのあの耳は反則だな、頭はモフモフすると気持ちいいか?」

ロンバートが物凄く真剣な顔をする。


「カーリは僕の者だ、誰にも触らせない」大人げ無く張り合ってしまう。


ロンバートが悔しそうに地団駄を踏む。


「で、どうします。ほっときますか?」

そう確認すると、ロンバートが考え込んでしまった。


「いや、リオン達の言う通りにしよう。長くダンサール国に君臨し過ぎたようだ。ここらで国王の座を退くのもよかろう」


「それで収まれば良いんですがね」何か一抹の不安を感じる。


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