第129話
夕方になりオランさんとライズが来た。
軟禁生活にしてはやたら面会が多い。
「リオン、聞いたぞ。お前上手くやったな。明日、我々がお前を迎えに来る。見送りは無しだ。馬車はお前は問題無いな?」
「はい」
「リオン君。突然出て行くなんて少し驚きですよ。ギルドまでリオン君への恩情の申し込みに来るくらいだし。大変よ」オランさん疲れたように言う。
「あの子達には話をしたから、ラピスのギルドで待ち合わせ。その後マリエラの国境の塀を抜けたら、お別れだね」
何かオランさん寂しそうだな。
「本当だよ、突然マリエラに来て、あれこれやってる間に魔王だぞ、あのリオンが」
ライズが複雑な顔をしている。
「あのさ、2人とも。僕達は何処でも出入り自由なんだから。そんな寂しそうにしないの」
「お前な~。雰囲気壊すな。折角、そう言う体で来てやってるのに」ライズが本気で怒る。
「楽しんでいるってことね?」なんかほっとして確認してしまった。
「そんな事無いぞ、リオンはどうでも良いけど、アルネとカーリはやだ~」ライズが泣きながら文句を言う。
「オランさん、ライズ、こんな調子なの?」
「フフ、素直じゃ無いですからね。本当はみんなと一緒に行きたくてしょうがないの。
やっぱり、冒険者を1度経験するとね。私も気持ちは分かるよ」
「でも、仕方いよね。このままこの国にいたら貴族にさせられそうだし」僕が呟く。
「なれば良いだろう。貴族位。お前なら難なくこなすだろう。それに奥さん以外にも、めかけを取るとこも出来るしな。皆喜ぶぞ」
ライズが八つ当たりぽく言って来る。
「嫌だよ、戦争もしたくないし。誰かに頼って戦うのは性にあわないし」
長々話をした後、メイドが晩御飯の準備を終えて入ってきた。
ライズとオランさんが名残惜しそうに帰って行く。
夕食を取り、1人ベットにたたずむと初めて見る貴族が訪ねて来た。
「私はダメルン子爵と申します。陛下よりお預かりの物をお持ちしました。
先ず、通行証です。陛下の書状もご一緒です。
それとこちらがお金でございます。お納めください」
「確かに」各国に入ることを国王が許可をした通行証とお金を受け取る。
「私はスベルト様の使いです。リオン様が国を出るまで監視するよう陛下より承っております。
道中の盗賊等の対策はこちらで行いますのでご安心ください。
私はこれが最初で最後のご挨拶となります」
ダメルン子爵が部屋を出る。
タイナーっぽいな。なんやかんやで心配し過ぎ。
最東の村。もしかすると闘姫のリーダー。マキュリーと副リーダー エリアスもこの村の出身かも知れない。
もし、あのレベルが普通なら楽しい村だ。ばれないようなら少し滞在しようかな。
翌日、ライズが迎えに来て王宮内で馬車に乗る。
用意された馬車は堅牢な作りで外から中が見えないようになっている。
馬車は以外に中が広く、中にベットがあり寝るの事が出来る造りだ。馬車に見張りを兼ねたメイドが1人乗る。
どう見てもメイドに見えない位に筋肉がある。物凄い鍛えているのが分かる。
「私はスベルト様の家付きのメイドです。道中よろしくお願いします」
突然とメイドに声をかけられた。
「スベルト男爵の家付きですか。頼もしい限りです。なら僕はゆっくりとマリエラまで羽を伸ばして生活させて頂きます。
ちなみに貴女のお名前は?」
「今は、マリアと名乗っています」
「マリア。道中よろしくね。僕は後のベットで横になります。昨日良く寝れなかったので。
それと本当に危険な事が有れば逃げても問題有りませんからね」
笑いながら伝えると少し困惑したい表情になっている。
首都を出るまでかなり時間を要した。辺境伯の一行を見ようと街道に人だかりが出来ていた。窓から見るとスベルト男爵が人の波を分けて僕達通る道を作っているのが確認出来た。
ベットに戻りマリアを見る、マリアは窓を見て哀愁漂う顔をしている。
首都を離れるのが嫌なのだろうか?
「首都を離れるのが辛いのかい?」
ハっとして佇まいを直す。
「いえ、初めて首都を出るのでなんか物珍しく感じております」
ダメルン子爵が言った通り、盗賊などは出てくることなくアメール村まで来る。
ここで護衛の兵士が首都の兵士からマリエラ辺境都市の兵士に代わる。馬を休ませる為一行はアメールに宿泊。
相変わらず僕は馬車の中で寝泊まりする。狭く隅っこにいるようで、この環境が実は物凄く落ちつく。
マリアから少し外に出ないかと声をかけられた。仕方なく外に出る。
モンスターの魔力を感じた、知ってる魔力だ。上を見るとワイバーンが飛んできた。
ハバヤさんと一緒だ。
ワイバーンが僕のそばに降りる。
また少し大きくなった気がする。このワイバーンって? 種族が違うのかな? ワイバーンってこんな大きくなる事無いのにすでに平均的なワイバーンの1.5倍らある。
「リオン君か?久しぶりだね」
「ババヤさんもお久しぶりです。またワイバーン大きくなりましたね」
「うん。驚くけどまだ、大きくなるの気がするよ。なんか未だ子供のモンスターな気がするよ」
まだ、子供? か。そう言われればエルフの国にはワイバーンに似た飛行竜がいたな。サイズはワイバーンより2倍は大きくなるはず。
ドラゴンに似て長生きで上位種になると、人の言葉も理解する事が出来る。そんな種がいたはず。
このワイバーンはもしかしたらその種かも知れない。小さいと種族自体がわかり難く判断が難しいのかも知れない。僕もまだまだテイマーとして、勉強不足だ。
まあ、これだけ人なつっこいと、大きくなっても問題無い気がするけど。
その日、ババヤさん達の歓迎を受けてギルドの食堂で盛り上がる。
アメールを出て約4週間、ラピスに到着。ギルドで僕の受け渡しが行われる。
タンザ オールさんとダリアさんが出迎えてくれる。
僕達の出国に向けた説明がされる。明日マリエラに行き、そこから国外に出る。
その後は自由だ。
拠点に顔を出す。すでに誰もいなくなって数ヶ月立つ。ホコリだらけだ。
マリアが来た。
「掃除しますか?なぜかリオンさん寂しそうですよ」
「マリアはこれで帰るのかい?」
「いえ、私はお暇を頂きました。スベルト様に、辞めるに当り欲しい物があるかと聞かれたので、産まれた場所に帰ってみたいと言ってみました」
「私はラピスの農夫の娘で産まれてすぐにスベルト様の屋敷に捨てられました。それからスベルト様に育てて頂きました。
リオン様のお話を伺い私も羽を伸ばしたくなってしまい何も考えずにここまで来た次第です」
「なら、ここの管理をしないか?
ここは僕達の唯一の拠点だ。実はその拠点を任せる人を探していたんだけど、どうだろう。
マリアならぴったりだと思う」
「私なんかで、よろしんですか?」
「お願い出来る?」
「やらせて頂きます」
◇◇◇◇◇◇◇
この日はラピスギルドに宿泊する。ハマイルさんが顔を出してくれて、タンザ オールさんとダリアさん、マリアを含めギルドの食堂でお別れ会が開かれた。
ハマイルさんにマリアの事を伝えると喜んで受け入れてくれた。
翌日、ダリアさんと2人でマリエラのギルドに行く。移動は馬車だ。
乗り合い馬車なのに僕とダリアさんの2人なんて結構贅沢。
マリエラのギルドでオランさんとエンリール ルイルさんがお出迎えしてくれる。
馬車から徒歩に切り替えオランさんとエンリール ルイルさんに付き添われ国境の壁に向かう。
国境に行く途中でアルネとカーリが合流。
「リオン、だいぶゆっくりとして来たね。私達の顔忘れたと思ったぞ」
アルネがいたずらっ子みたいな顔で脅して来る。
道中色々な話で盛り上がりながら国境の壁に到着。
到着すると後から抱きつかれた。
「リオンさん捕まえた」リーンハルの明るい声だ。
「ムー、私も捕まえたい」ルーニーの駄々をこねる声が聞こえる。
「みんなただいま」
「「「「お帰りなさい」」」」
オランさんが呆れ帰っている。
「これから国外追放されるとは思えないよ」
「オラン、そんな事言わない。何時でも私達帰って来るから」アルネが笑いながら言う。
「いや、簡単に来るな。国王の決定を何だと思ってるの。来るならこっそりこい、こっそりと。
私達は何時でもまってるから」
「「は~い」」
みんなで元気良く国境を出る。国境を出て少しナーラ国に向かい歩く。兵士達から見えない所で1度集まる。
「さて、これからの行先について説明したいと思います」
「はい」アルネが手をあげる「はい、アルネ」僕が指を指した。
「1回、ヒューズに合いに行きたい。上手くすればドレス着れるかも、かもかも」
「はい、採用。ガレシオン公国は一応、外国だからね。
その後はビルルマにこっそりと入って最東の村を目指します」
「何でそんな所まで行くの?」カーリが首をかしげる。
「タイナーに聞いたけど、そこの村、エルフの国 ダンサールとの貿易拠点らしい。そこからダンサオール国に入国したいと思っている」
「何で?」アルネが驚く。
「アルネ、オーヂエンでは僕とアルネ、カーリは結婚できない。それとアルネやカーリの両親にも会ってみたいし」
「ふーん。でも驚くよ、うちの家族、全員変人だし。でもありがとう。そう言う理由なら私は良いよ。ありがとう」
「どう?誰か行きたく無い人はいるかな?」
「「「異議なし」」」
「じゃ行くよ。先ずはヒューズに会いに行こう」
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