第127話

アルムを担いだリーンハルが上から降りてきた。その雰囲気はリーンハルではなく別の誰か。


「お帰り、用事は終わった?」

僕が声をかけるが、アルネが 警戒して魔力を抑える。カーリとルーニーが僕らから離れて様子を見ている。


「お前誰だ?」リーンハルの体から男の声が出る。


「悪いけど、その体返してもらえるか。その子は僕の妻だ」


「ふん、レン爺もくだらん者を残した者だ」


「レン爺? もしか…」白狐と鳳凰が飛び出し敵意をむき出しにリーンハルを睨む。


野太い声を張り上げリーンハルがしゃべる。

「おお~、狐に鳥じゃねえか? 久しいな。元気してたかぁっ ははははは」


「白狐、鳳凰。手出しは不要だよ」僕をチラッと見て白狐が消える、


「ほう、そいつがお前らの主人か? 随分と優男だな」風斬り丸の言葉に鳳凰が怒りをあらわにする。


鳳凰を抑えて言う。

「戻れ」


鳳凰が僕を見て大人しく姿を消す。


男がアルムを地面に下ろした。


「こいつを返して欲しければ俺に勝つ事だ」親指を胸に付け言う。


「え、そんな簡単な事でいいのか?ちなみに君は刃を折っても復活するのかい?」


リーンハルの顔が口角をねじ曲げて笑う。


居合いで風斬り丸を撃つ。


「おいおい、心意流居合い術か?  お前もレン爺の弟子か?」

リーンハルの顔から笑顔が消え、風斬り丸を上段に構え、対峙する。


リーンハルの攻撃をかわした所で僕も上段から風斬り丸を撃ちつける。


「柳一刀流も使うのか、恐れ入ったな。俺が本気で相手いてやる」

体を前に倒し斜めになった状態から横一線に剣を振る。


大雑把な動きをしたリーンハルを横目に首に刀を付けて言う。

「風斬り丸だったな。お前、剣術は下手だな、誰かに使ってもらう方が性にあってるな」


「お前が使うならこのままこの体から出てやる。どうだ?」


「僕には不要だ。白狐と鳳凰がいる。それとお前の主はリーンハルだ」


風斬り丸がリーンハルの首に自ら剣を合わせる。

「ふん、この女に何が出来る。すでに私の手の中だぞ」剣がプルプルと小刻みに震えている。


「だそうだよ、リーンハル。君の旦那しては君の綺麗な体のままで居てくれると助かるかな」


リーンハルが元にもどり

「いつからわかっていたんですか?

て言うか、もう少し心配しませんか普通。


なんかつまんない。

簡単に刀抜いて攻撃してくるし、剣が首に来ても心配した素振りもみせないし」


「そんなこと無いよ、ちゃんとリーンハルが魔力を読み取るの感じたから、分析するの待っていたよ」


「あ~、やっぱり心配してない。

今日、リオンさんご飯抜き(怒)」


「だから、心配してたよ。ね、アルネ」


そっぽを向くアルネ。


「決まりです」


リーンハルが怖い顔で僕を見る。


「おいおい、何時までじゃれていやがる。俺様との勝負を忘れたわけでじゃ無いだろう」

リーンハルが持つ剣から声が響く。


「お前うるさい」リーンハルが魔力を流すと、風斬り丸が急に大人しくなり、全てが終わった。


◇◇◇◇◇◇◇


「姉さん、おきた?」

リーンハル達を連れて、アルムの屋敷に戻り、アルムは自室に寝かせていた。


アルムが僕を見て、ほっとした顔をしている「その顔を見ると成功したみたいだな」


「あんた達全員に伝える事がある。お昼の時、全員で集まるように」


「わかった。姉さん体調は?」


「問題ない」アルムが少し罰の悪そうな顔をしている。


「それよりどうやった」やはり自分達には出来ずリーンハルが風斬り丸を抑えた方法が気になるようだ。


「どうやったか。これはあくまでも僕の推察だけど。


まず、リーンハルは昇給試験の時、ルーニーが放った炎を纏って自分の力にした、リーンハルは魔力独特の振動数を読み取り自分の力に変える能力が有ると考えています。


次にリーンハルは無意識に剣に魔力を通し強化しながら使う癖が有あります。だから剣1本1本の振動数や固有能力を分析して使う剣を選んでいます。


最後がリーンハルの魔力量とレベル。本間 勇幸先生は実際にはさほどレベルが高くなかった。確かレベル50前後だったと記憶している。リーンハルや姉さんの方が明らかに上です」


「それはどういう事だ?」アルムが結論を急がせる。


「つまり、リーンハルは剣を抜いた時から、風斬り丸の事を分析し始めた。隅々まで自分の魔力を通し、最大限に剣を理解するために、所が風斬り丸はやんちゃだった。それで少しの間、体を乗っ取られたのだと考えています」


「つまり、リーンハルはその分析に時間がかかっていた、その時に風斬り丸に少しの間、体を使われた。

ただ、全てを解析して風斬り丸に自らの魔力を通し支配した、リオンはそう考えている。そう言う事か?」


「そう思っています。リーンハルは人それぞれの魔力独特の振動数を理解出来る、珍しい才能を持っている。僕はそう考えています。

なのでリーンハル及びルーニーの情報は僕達と姉さんだけの秘密にして欲しい」


「それなら問題無い。ただ、アルメニア王国では、その事を含め研究が進んでいる、そうとらえるべきか? リオン、どう思う?」


「リーンハルとルーニーは、はっきりといって天才です。だから出来た事だと思います。ただ、この情報が漏れ、誰でも収得可能な技術となると国家としての様々な事が変わってしまいます。

アルメニア王国がこの技術の研究をしていたとしても成功してはいないはずです」


「だが、双子の姉妹がそれぞれいる」アルムが悪い顔で笑う。


「了解した、その事を含めお昼ご飯の時に話しをする」


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