第125話

全てのAランク試験が終り、タイナーから参加者全員におほめの言葉があった。


僕は全ての日程を終え解放感を覚える。後日、僕達は王宮のパーティーに呼ばれ王都に来ている。


タイナー主宰のAランク昇格者の御披露目パーティーだ。僕はこのパーティーが物凄く嫌いだ。


先ず、求婚が多い。僕が4人と婚約している事は周知の事実だ。


にもかかわらずさらに妻をめとれと永遠に言われる。また、4人には、特産品や宝石、住まいや別荘に至るまで貢ぎ物の山だ。


そしてその全てを僕が断る。最初こそ、冒険者風情と揶揄されもしたが、このところは僕が断ると拍手が出るように。


王宮内でのある種のイベントと化してしまった。


正直、こういうのが嫌で貴族にならないのに


上手く行かない。


タイナーとモンナが僕の所に来る。

「リオン、お疲れ様。しかし凄かったな、ルーニーとリーンハル。手加減していてもあれだけリオンを追い詰めるとは思ってもいなかったよ」


「僕もです。あの2人の連携は流石でした」


「所でリオン。リーンハルって、武器を使わないの?」モンナが大きくなったお腹をさすりながら聞く。


「いえ、実はリーンハルに合う武器が見つからないんです。僕の持つ刀では重すぎますし。兵士達が持つ剣は弱すぎで使えない。


兵士達が使う剣サイズで強力な物があればと思って探してはいます」


「専属の鍛冶士に作らせようか?」心配そうにタイナーが言う。


「1度、ドワーフの鍛冶士に頼んだ事が有るんですが、駄目でした。リーンハルは初速が早くて特別な素材が必要みたいで、


ミスリル、モンスターの素材何かも駄目でしたね」


会話の途中で壁際に立つメイドが気になった、明らかに異質な雰囲気をかもし出し、こちらを見ている。


食事用のナイフを持ち、魔力を込めてメイドに飛ばす。

飛ばした瞬間、反対側にいる執事に同様の違和感を覚えナイフを投げる。


メイドと執事に額にナイフが刺さる。

兵士に指示を出し倒れた2人を静かに外にだした。


「アルネ、ちょっと良い?」

貴族達に囲まれているアルネを呼ぶ。


「どうしたの? かまって欲しくなっの?」アルネさん、完全に酔ってますね。


「タイナーとモンナを頼む。ネズミ退治してくる」


「了解」アルネの顔がキリッとなる。

「皆様申し訳ございません。我々パーティーメンバー全員、殿下よりお呼びがございました。本日はこれで失礼いたします」

集まった貴族達に丁寧に謝罪して4人で戻ってきた。


「アルネ、ルーニーはモンナについて奥の部屋に、特に赤ちゃんには気を付けて。

カーリとリーンハルはタイナーの警護。特に何もしなくて良いけど離れないように」

「タイナー、モンナ、良いかな。僕は少し外す。タイナーも悪いけど僕が戻るまでトイレは無しで」


「大丈夫だよ。モンナと共に少し奥に移動する。その間はアルムとマルイルに場を持ってもらう」

そう言うとタイナーがアルムとマルイル辺境伯に事の次第を伝え戻ってきた。


僕は少し酔った風に装い、ベランダに出る、その様子を見ていた男が近付いて来た。


王宮付き男爵スベルド ルイ ナターリ。王宮警護の総責任者兼暗部責任者だ。

この男が全ての警護を担当している。アルムに匹敵する強さと噂され、アルムもそれを認めている。にも関わらず表には絶対出てこない男だ。


「リオンさん、飲み過ぎですか」好々爺のような言い方をする。見た目は40才位だろうか。全く隙がない。


「このところの疲れでしょうか? 少し酔ってしまいました」


「お若いからと言って余り無理をすると、いけませんよ。私位の歳になると一気に出てきますからね。ハハハハ」


気さくな感じでお互いに話すが、過去2.3度しか話をしたことが無い。おまけに夜に奇襲を受けた時、同時に敵に向かい駆け出した所で簡単に挨拶した程度だった。


「他に見つかりましたか?」スベルトが聞いてくる。


「野放しの方が良かったですか?」


「いや、あの殺気は看過出来ません」スベルトも気付いている。

「ここから先は我々暗部で行います」


「出来れば情報を頂けますか?全てはいりません。この国の者か、国外か、モンナか、タイナーか等簡素で良いのですが」


「検討しましょう。何が必要ですか?」


「どうやら僕が魔王に認定されるようです。それを元にタイナーやモンナが狙われるのは許せない。危険な目は早目に潰すにかぎります」


「そうですか? 利害は一致すると言う事ですね。強力します」


「有り難う。王宮の屋根に2人、厨房に2人、裏庭に1人。見える奴らがいます」


「見える?」スベルトが顔をしかめる。

「見えないのをお願いをしても?」


「当然です。僕にしか今のところは出来ないでしょうから。生け捕りしますか?」


「ぜひぜひ」スベルトが冷たい笑いをして消える。


スベルトが消えたのを確認して、ベランダか、庭に降りる。


見えない者は油断なく構え、殺気を僕に向ける。

「君は四聖獣教団かい?」


「…」まあ、当然だか返事がない。


白狐を抜いて対峙する。


ジャラ!!

足元から鎖が地面と擦れる音が聞こえる。暗部が対侵入者用に仕掛けた罠にはまっていた。


透明な体の足首から血を流し足を引きずるように立つ。


刀をしまい、兵士に声をかける。程なくしてスベルト本人が来た。

「リオンさん、早かったですね」


「いや、ネズミ捕りにかかっていた、まだ剣をもって構えている。注意してね」


「十分に注意します。罠も再点検しないと行けませんね」


スベルトに全てを任せ会場に戻る。タイナーとモンナに問題解決を報告しパーティー会場に皆で戻る。


その夜はアルムの屋敷に泊まることになる。


翌日皆揃い朝ご飯を食べていると

「ねえ、リオン。リーンハル用の武器無いの?」

唐突にアルムから話を聞かれる。


「姉さんも見たでしょう。リーンハルは初速が早すぎて武器がついて来れない。

ガンスの所のハンキーさんでもお手上げだったよ」


「なら今日、皆私に付き合いなさい。師、レース レインのお墓に行きます。わかった」

少し考えて言い放つ、断りを入れると雷が落ちる、そんな勢いだ。


「そうだね、墓参り、入ってないし皆で行くよ」


レース レインの墓はホルスメン中央山脈の麓にある。馬を使い小一時間程走った辺りにある。


オージエンがなぜ西東に長いかいうとこのホルスメン山脈のせいでもある。


ホルスメン中央山脈の麓の平地を干拓して造られたのが僕らが住むこのオージエン国だ。西の辺境都市マリエラから最東端の村まで北側全てこのホルスメン中央山脈に守られている。


言ってしまえば天然要塞だ。オージエン側の山脈は凄く切りっており、動物すら住めない環境でもある。


墓の場所に付く、和議の国の言葉で名前が掘らている。

墓の隣に石碑があり本間 勇幸(ユウキ)の墓と書かれてある。


我々が使う文字と違い、和議の国の常用文字、漢字と言われる文字を使っている。

その為、読める人がほぼいなく忘れられたようにひっそりとたっている。


「さ、リーンハル付いておいで、他はここでお留守番」


「わかった、リーンハル行ってらっしゃい。僕達はお墓綺麗にしてお参りしてるよ」


姉さんとリーンハルだけが墓の裏から山をよじ登り上に上がる。

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