第121話

試験会場に入ると受験者5組、8人が待っていた。


中央にモンドアルパさんがいて、みんな中央に呼ばれる。

「これから試験内容を説明する。1組、30分まで、番号1番から始める。

試合方法は魔法、モンスター等全て使用可能。武器だけはギルドで準備した木剣、木槍、木単刀等を使用。普段使い慣れていない物かも知れないが、みんな同じ為ギルドの物を使ってもらう」


「審査の合否は本日中に報告する事になっている。また、判断に迷った場合や特別に国王陛下や要人達の要望があれば最終日に行われる本戦に出てもらう」


「では、みんな下がって下さい」


僕が木剣を取り、会場の中に立つ。


「これより、Aランク昇格試験を始める。受験者。アーバン」


アーバンと呼ばれた男が出る。タンクなのだろうか? 大盾を持ち立っている。


「始め!!」開始の号令が会場内に響く。


観客席から歓声が上がり異様な盛り上がりを見せている。


僕は歩いてアーバンに近づく。アーバンは逃げるわけでも攻めて来るわけでも無い。


アーバンに1mとなった時に何かが飛んで来た、体に当たる前に何かが消えた。


特殊能力だろうか?少し嬉しくなる。風まといをかけてアーバンの後ろに来る。


突然、姿を消した僕にアーバンが少し狼狽える。だか直ぐに僕に攻撃してきた。


アーバンは槍をもって後ろ向きに僕を突いて来る。


ガン!!  鈍い音をだし槍を止める。


アーバンって面白い奴だ。複数の対戦が見たくなりフルとウインを呼ぶ。


「紹介するよ、この子達は僕がテイムしているモンスターだ。これからこの子達が攻撃する」


アーバンは静かに頷く。


ウインが早速ダブルクロスを出し大盾を狙う。魔法が大盾に当たるタイミングでフルがファイアーボールを飛ばす。


ガガガガ 大盾を必死に押さえていたアーバンだが、大盾が飛ばされ、フルが放ったファイアーボールが正面から当たり吹き飛ばされる。


アーバンは何とか起きたが試合終了を僕が宣言した。


「君は才能が凄く有るね、特に面白い攻撃だった。また会えるのを楽しみにしてるよ」アーバンと握手をして別れる。


その後も盛り上がりを見せながら午前の部が終る。


控え室でモンローさんから質問があった。

「リオンさんは誰ならAランクに昇格しても良いと思いますか?」


「午前の方達ですか?」


「はい」モンローさんがキラキラとした目で僕を見る。


「誰もいません。みんな魔法だけ特化していたり、剣や槍といった攻撃だけに特化しすぎです。

それと防御が弱い、アーバンって言う選手は防御力が高ければ問題無いと思いましたけど」


「そうですか」モンローさんが落ち込んでしまった。


午後の試験が始まりを迎えると、午後の受験者がすでに会場入りしていた。


モンドアルパさんが来ると観客席が異様な盛り上がりを見せる。

「それでは本日2回目の試験を始めます。この方達はナーラ国、アルメニア王国所属の冒険者です。ナーラ国、アルメニア王国からきっての要望があり、現在もっとも勢いの有る冒険者をこのオーヂエン国のAランク試験にと申し出があり、出場となりました」


「2組の昇格判断は其々のギルドが行いますが、あくまで試験は我々のやり方で行います」


「まず1組目、ターザン、カザト前に」


ナーラ国の受験者が前に来る。

明らかに午前の選手とは実力が違う。そうです思わされた。


カザトから話しかけられた「あんたがリュックニーの英雄か?」


「英雄かどうかは知らない。けどリュックニーは潜ったよ」


「そうか、ちなみにルミナスは覚えているか? あいつは俺達のパーティーリーダーだ」


「ルミナスのパーティーか。少し楽しめそうだ」


カザトとターザンが剣を抜いてかまえる。2人共に戦士系だろうか?おごり無く身体強化を使い戦闘体制を整えている。


強い、直感した。


カザトが先に仕掛ける。僕の前に来て上から剣をふる、後ろを隠すようにターザンが見えなくなった。


カザトの剣を顔の手前でかわし、右に抜けながらカザトの腹を木剣で殴打する。


カザトをかわしてターザンに向かうと魔闘気をまとい僕の木剣を両手で受け止める。


僕が木剣を手放し右の回し蹴りを放ちターザンの首をとらえた。ターザンの魔闘気が消えたが倒れること無く気を失って入る。


僕が手を振って終了を宣言。

この2人なら文句無く昇格だろう。それ程の実力者だ。まだ伸びる。


◇◇◇◇◇◇◇


少し時間をおいて2回戦が始まる。


モンドアルパが受験者を呼ぶ。

「アルメニア王国の冒険者。ナターシャ、リッヒーマイル」


姉弟だろうか?顔かにている。


「あんた、うちらの国で暴れたらしいね。許さないよ」ナターシャと呼ばれた冒険者からいきなり文句を言われた。

「姉さん、少し落ち着こう。目的を忘れたら駄目だよ」

やっぱり姉弟のようだ。それにしてもこの2人、本当にAランクに昇格したいのか?

それとも僕みたいに試験とか、昇格に興味がないのだろうか?


実力はAランクの上級者だろう。どちらにしても楽しめそうだ。


「あんた、元からの戦闘狂だね。強い奴が本能でわかるって奴だな」ナターシャに突っ込まれた。


「僕からも聞いて言いかい?

今まで昇格試験、何で受けなかったの?」


「姉さんは面倒臭がりだからね」リッヒーマイルが方をすくめながら話す。


「そうかい。君たちとは話が合いそうだね」


「貴方もそっち系ですか? 周りの気持ちも考えてください。振り回されて入る周りの気持ちも」


「う、ごめん」「もうそれ以上は」僕とナターシャが同時に謝る。


「話しが盛り上がって要るところ悪いけど試験初めて下さいね」

モンドアルパさんから注意を受けた。


ナターシャが木剣を持ちリッヒーマイルが杖を出した。


ナターシャが間合いをつめ突きを何発も出す。ナターシャの突きをかわし後ろから剣を振るとナターシャの周りに結界が出る。


リッヒーマイルだ。上手い連携だ。この2人ならSランクでもおかしく無い。


僕が木剣を捨てて、魔闘気をまとう。先に攻めるのはリッヒーマイル。姉のナターシャはまだ隠し玉があるはず。


リッヒーマイルに照準を合わせ距離をつめる。リッヒーマイルも直ぐに後ろに下がるが、直ぐに追いかけ首の後ろの付け根を狙い肘を落とし気を失わせる。


「お前、リッヒーマイルをいじめたな」ナターシャの雰囲気が変わる。

カーリににた変化だけど。この2人獣人属なの?


「ナターシャは獣人属なのか?」


「私達はクオーターだよ。私の方がより強くその力を発揮出来る」


「そうか、楽しみだね」


ナターシャがよつんばいになる。以前見たカーリのバーサーカーモードと同じだ。


ナターシャの体を赤いオーラが包んで行く。人がよつんばいになると動きは極端に遅くなる。にもかかわらずこのバーサーカーモードは凄い速度で敵を倒す。


「私の弟をいじめた事を後悔しろ」


別にいじめたわけじゃ無くて試験何だけど!


獣のようなナターシャが口を開けて向かってくる。ナターシャの手をかわしやり過ごす。


後ろを向いていた僕に襲いかかろうとしたナターシャの動きが止まる。


白狐が顔だけを出ナターシャを威嚇している。

「敗けだ。こいつには勝てない」ナターシャの声だ。


リッヒーマイルを起こしナターシャと2人で会場を後にした。

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