第97話

≪白狐≫


≪はい≫


≪先鋒を頼む。いかなる事も報告しろ、ネズミの動き1つ報告して欲しい≫


≪敵はいかがなさいますか?≫


≪敵意の有る兵士と冒険者、盗賊等は白狐の判断でかまわない。襲って来た者は容赦しなくていい。


僕達はおよそ30分後に中に入る≫


≪了解しました。鳳凰はどうなさいますか?≫


≪空を任せる≫


◇◇◇◇◇


≪鳳凰、空から警戒をして欲しい。猫の子一匹通すな≫


≪う~ん。面倒だな≫≪必要?≫


≪鳳凰、君の力を僕に貸してくれないか?≫


≪主の為か? やる!! やるやるぅ~ はぁ~もっとうちを頼ってよ 主のためなら何でもやるよ≫

鳳凰が姿を表し空に飛び出す。


鳳凰っていつからこうなった? 納得しないと動かないって言っていたのに…。


まあ、いいか。


体制をととのえ、伯爵領に入る。外壁を守る兵士が2人門の下敷きになり倒れていた。


中は真っ直ぐ伯爵の邸宅に向かい道ができている。その両脇はお店や住宅が建ち並び人が歩いていれば活気の有る町並みと思えた。


しかし、誰もいない。これは攻められる事を想定して領民を何処かに移したのかも知れない。

より警戒心を強く持つ。


伯爵の邸宅の前まで来た。邸宅すら堅牢な壁で守られている。

白狐が橫になりながら僕達の到着を待っていた。


≪主、おそらくこの中に兵士を含めた多くの者がいます。どうなさいますか?≫


空にいた鳳凰が戻る。

≪ねぇねぇ、この屋敷から何台も馬車が逃げていったよ退治しようか?≫


≪鳳凰は馬車を追跡、攻撃しなくていい。何処に行ったか調べて欲しい≫


≪白狐は僕達と、この邸宅を破壊する。いいか≫


≪はい≫

≪わかったぁ~、じゃあ行ってくる≫

白狐と鳳凰の反応が違い過ぎてやりずらい。


マルイル宰相が屋敷に向かい声をかける。


「我々はオーヂエン国の特使である。ガレシオン公国、王宮に用がありまいった。ここは伯爵領と聞いておる。伯爵に面会したい」


屋敷から僕達に矢が放たれる。直ぐに物理結界をはり矢をふせぐ。


マルイル宰相が再度声をかける。

「これが返事なのだな。これより伯爵の邸宅に攻めいる。死にたく無いものは今すぐ出て参れ、中に残ったものは領民、兵士問わず敵と見なす」


再度、矢が放たれた。物理結界をはりマルイル宰相を守る。


≪白狐戻れ≫

白狐を戻し刀を抜く。必要のない力を抜き、刀をふる。白狐が元の力を得る前に覚えた剣術だ。ダンジョンの壁すら、一撃で破壊する力がある。切先から真空の刃が出て邸宅の門を斬り倒す。


邸宅を守る兵士達が驚きの余り倒れた門から逃げ出してしまった。その中にいた1人の兵士を捕まえた。


伯爵について聞くとすでに王宮に避難しており残っているのは下級兵士のみだと言う。兵士をはなし逃げるように伝える。


邸宅の中に入りそのまま邸宅を進み反対側まで来る。門を開け出ると王宮が見える。王宮と言うよりは要塞である。国土が狭く、平坦な土地に有る為かかなり堅牢な建物であることが見るだけでわかる。


王宮に向かい進む。途中、鳳凰が戻って来た。伯爵の邸宅から出た物はこの王宮に入り身を潜めているらしい。


流石に王宮である。兵士と魔法兵だろうとおも思われる魔力を感じる。


マルイル宰相が王宮の兵士に対し声をかける。


「我々はオーヂエン国の特使である。ガレシオン公国、王宮に用がありまいった。開門されたし」


門を守る兵士の1人が出てきた。

「オーヂエン国の特使と言われるが名前をお聞きしたい」


「私はオーヂエン国 宰相 マルイル ホォン ビルルマである。この者達は私の護衛。


そしてこの者は、護衛のリーダー。リオン レース レイン。


我々はオーヂエン国 国王タイナー サバス イーヂエン殿下より特使として、使わされた者だ」


「わかりました。開門いたします」


兵士がそう言うと手を上げて合図を送る。王宮の正面の門が開き中に招かれた。


門をくぐると直ぐに王宮が見えた。王宮の入り口から1人男が出てきた。その男の後を屈強な兵士6人がついて来る。


「お待たせしました。ガレシオン公国 第二皇子 ススルブ フィン ガレシオンと申します。今回はオーヂエン国の特使として来られたと伺いました」


「私はオーヂエン国 宰相 マルイル ホォン ビルルマである。

我々はオーヂエン国 国王タイナー サバス イーヂエン殿下より特使として、使わされた」


「どのようなご用ですか?」第二皇子のススルブが聞いてきた。


「立ち話をしに来たつもりはない。メシアル フィン ガレシオン国王に面会を求める」


「誠に勝手ながら国王は病でふしております。お会いすることはご遠慮いただきたい」第二皇子のススルブが丁寧に頭を下げた。


「所でいつまで立ち話をさせるつもりだ」マルイル宰相が少し苛立ちながら言う。


「我々は此度のフォルスメン大陸会議のホスト国です。他国の方をお招きしているなかです。何の約束もなく押し掛けてきて中に入れろとは少し不粋な物言いではないですか?」


『我々なら問題無いぞ。そこのリオンとは知り合いだしな』

第二皇子のススルブが驚き後ろを見る。


「マルチーズ様、申し訳ございません。直ぐに帰しますので中でお待ち下さい」


『リオン、久しいな。少し強くなったな』


「マルチーズ、久しぶりだね。今回の会議にマルチーズも参加するの?」


『いいや、ガレシオン公国から泣きつかれてね、国が滅ぶから何とか手助けしてもらえないかってね』

マルチーズがいたずらっ子のように笑う。


「マルチーズ殿、お久しぶりです。マルイルでございます」

マルイル宰相がマルチーズに向かい挨拶した。


『マルイル? あのはな垂れ小僧か?人族は年を取るのが早いな。マルイルとは気付かなかったぞ』マルイル宰相を見ながら懐かしそうに言う。


『さて、我々は帰るとしようか、今回は特に収穫も無いしな。


ススルブ。リオンのパーティー全員、私の教え子だ。リオン1人でこの国を潰す事も可能だ。自分のしでかした事の責任は自分出とるのだな』


『ああ、リオン。ガンスがさみしがっている。たまに顔を出しに来なさい』


「わかったよ。マルチーズも元気そうで良かった。ガンスにもそのうち会いに行くと伝えてちょうだい」


『ふむ、では』マルチーズがマントをひらりと回すと空間移動する。それと同時に多くの魔力が消えた。


マルイル宰相が呆れた顔でススルブ第二皇子を見る。

「まさか、この問題のツケを魔族の国に負わせるつもりだったはとは情けない。メシアル国王がお元気であるならそなた達は皆死罪になっておる所だぞ」


マルチーズが帰り僕達は王宮に入り会談の場についた。

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