第96話

辺境伯の城を離れ首都に向かう途中ギルドを発見した。

「リオン、すまぬがギルドに用がある、少し付き合ってくれんか?」


「わかりました」僕は何も聞かずに返事をした。


ギルドの中に入ると鎧を付けたギルド職員がいた。

「貴方達は何者ですか?今危険なんです。すぐに避難をして下さい」


「もう、危険は無い。それより私から依頼がある。受けてもらえんか」

マルイル宰相が丁寧に話す。


1人の男が出て来た。背が高くほっそりとしている。

「私は当ギルドの副マスターをしている、レモン アルバニアと言います。このような緊急時にどのような要件でしょうか?」


「私はオーヂエン国 宰相のマルイル ホォン ビルルマと申す。国境の壁の修繕と、生き残った兵士及び冒険者、領民の保護をお願いしたい。私はこの国の人間では無いが受付をする分には問題無いだろう」


「わかりました。受付させて頂きます」緊張しながらレモン副マスターが依頼を受ける。


「では、手付金として白金貨40枚を置いていく、足りなければビルルマのギルドから私に請求して欲しい。それと今日中にアメールのギルドマスターが救援物資をもってここに来る。その救援物資はレモン副マスターの権限で使ってくれ。


壁の材料についてはロンリーヌから輸送させる、アメールのギルドマスターと相談しながら行って欲しい。


辺境伯の屋敷にいたマリクスと言う男に領民の保護をお願いしてある。住むところがない人等かくまってもらうように伝えてある、そっちとも相談しながらやってもらえると助かる」


レモン副マスターが訝しげに見ていたがマクリスの名前を聞いた時から顔が柔和になり何の質問もなくこの申し出を受ける。

「ハイ、このレモン アルバニア。確かに受けました」


「壊してしまって保護して欲しいとは、都合の良いお願いだと思うがよろしく頼みます」

マルイル宰相が丁寧に頭を下げた。


◇◇◇◇◇


ガレシオン公国の首都に向かう。辺境都市を抜けた辺りから道に穴があけられていた。おそらく首都に入るのを少しでも送らせたい目的が有るのだろう。


馬はまだ良いが馬車が通れない。またあえて木を倒し通れないようにしてある。あからさまに辺境都市を捨てた事がわかる。


「どうしようか?こんな穴だらけの道、別のところを通る?」

余りの酷さにカーリが聞いて来た。


「いや、このまま通ろう、道は僕がなんとかするよ」


「ソイル」土魔法を唱え穴を塞ぐ。ついでなので舗装することにした。

「ブロックソイル」穴を塞いだ道をレンガで舗装する。

僕とカーリが馬車より50m程先を行きながら穴を塞ぎ道を舗装していく。


ガレシオン公国はほぼ四角い国だオーヂエンの反対側は海と接し幅広い砂浜が広がる観光地でもある。海に近い場所に貴族達は余り住んでおらず首都を防衛するように首都の周りに居城を構えるのがこの国の習わしとなっている。


オーヂエン国は西東に横長の国だ、辺境都市 マリエラから首都に向かう時のように1ヶ月近くもかかるが、ガレシオン公国の辺境都市から首都に向かうに1日2日有れば到着はできる。


問題は首都を囲うように有る貴族達の敷地だ、かなり堅牢の壁等で守られておりそこを抜けないと通れないようになっている。


でこぼこの道をきれいして、なおかつレンガで舗装された道を作りながら夕方まで進み最初の難関に出くわす。名前は忘れたがガレシオン公国、伯爵領が見えた。


辺りはまだ明るいが間も無く日が落ちる。道から外れ林の中に隠れるように拠点を作る。余り高い物を作ると問題があるので木より低く出来るだけ木に隠れるように拠点を作る。


見張り台を木に隠し4ヶ所程作った。


夜になると白狐が姿をあらわす。

≪主、本日の見張りは私が行いましょう。ゆっくりとお休みください。魔力を使いすぎておりますよ≫


≪助かる≫


その日、白狐見張りを任せみんなで休む事にした。

見張りを行わなかった事でかなり体力と魔力を回復することができた。


伯爵領の入り口につくとマルイル宰相が開門するように求める。


「我々はオーヂエン国の特使である。ガレシオン公国、王宮に用がありまいった。開門されよ」


伯爵領の兵士達が慌てている。

「待たれよ。そのような話は何も来ておらぬ。確認するため明日再度来られたし」


「待てぬ。オーヂエン国 宰相 マルイル ホォン ビルルマ直々に特使として来ている。至急開門されよ。開門されない時は我がオーヂエン国に敵対するものと見て対象いたす」


伯爵領の兵士達がさらに慌てだし、マルイル宰相への返答が来ない。およそ30分程待ち改めて声をかける。


「当方の申し出に対し、何も回答がない。よってこれが返答と受け取る。これより敵対する伯爵に対し実力行使を行う」

マルイル宰相が高らかに宣言をする。


リーンハルが前に出てくる。

「ここは私が行きます」


両手にハンキースさんからもらった手甲を着けてあらわれる。


魔闘気をまとい、両手には風魔法をまとわせている。狙った所は門の橫、門を支える硬い外壁だ。巨石を使い立てられたその場所をそのまま攻撃する。


リーンハルが撃った巨石はリーンハルの拳がめり込むと、ピキピキ音を立てヒビが入り内側に向かい倒れる。


リーンハルが反対側の巨石を撃つ。バランスの崩れた巨石と門が内側に倒れ通路が開いた。


僕はもっと抵抗が有ると思っていた。

伯爵領の門を壊したのだ、兵士が出てきて争いになると思っていた。


誰も…誰も出てこない? これは罠だろうか? 住民は?領主は?兵士は?…………………


誰もいないの?・・・・・・・・・?


これは誘われているのだろうか?もしかすると首都に沢山の兵士が常駐しているのか?

伯爵の屋敷で待ちかまえている可能性もあるか?


はたまた、恐れおののいて逃げ出したのか?


いや。これだけの堅牢な建物を見ると我々を伯爵領の中に引き入れ叩くつもりだろう。


慎重に索敵を行う。殺気を持つ者がいない事に驚く。

これだけ自らの能力を隠す力を持つ者を集めたのであればこっちも全力を出さないといけない。

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