第94話

門を少し進んだあたりでガレシオン公国の兵士の激しい抵抗を受けていた。

「怯むな、敵はたった5人、我らは6千人からの兵士がいる。力で押し返せ」


ガレシオン公国の指揮官だろうか?数の力で押し通すつもりらしい。

カーリが両手に単刀を持つ。いつもの戦闘スタイルだ。カーリは兵士の乗る馬の上を滑るように移動しながら兵士を倒す。ほとんど兵士は首を切られたことすら分からずに絶命している。


カーリの動きに合わせアルネが援護射撃を行う。歩兵に向かい次々とアイスアローを放ち動きを封じる。リーンハルとルーニーは兵士を外から内に押し込むように誘導しながら倒す。弓兵や長槍を持つ兵士も無理矢理動かして的を絞らせないように動き続ける。

さらにリーンハルとルーニーの2人は、魔力を温存しながら戦い、カーリの動きに合わせ波をおこすように兵士を中央に集めていく。


◇◇◇◇◇◇


僕は前を向いて声をかける。

「姉さん、思ったよりも早かったね」


アルムが真上から僕の横に降りてきた。姉さんのワイバーンは上空で旋回している。あの高さから音もなく降りるってどういう能力なんだろう?

マルイル宰相がアルムの突然の登場に驚いていた。


アルムはマルイル宰相の反応を無視して話を始める「タイナーがうるさくてね。リオン大丈夫だろうか?何て落ち着かないんだもの。予定を早めて出てきたわ」


「はは。タイナーらしいね」


「本当迷惑。最後の最後で男らしくない」アルムが怒った顔で文句を言う。モンナも良く同じ事言って怒っていた。ふとそんなことを思いだす。


「所で飛行隊は?」


アルムが笑いながら僕の顔を見て言う。

「まわりで待機してるわよ。誰かさんが圧倒的な魔法を使うもんだから、ワイバーン達が怖がって近付かないだもの、少し加減しなさい」


「ならこの辺の事は任せて良いね。僕も中に入って暴れて来るよ」


「リオン、無理しちゃ駄目よ。みんなで生きて帰る。わかった?」


「分かったよ姉さん。いつまでも子供扱いしないでよ」


「ふふ、わかったら行っておいで」

アルムが手を振って見おくってくれる。


門の入り口付近で風纏いをかける。後ろで号令をかける司令官を発見。


「ダブルクロス」兵士達の丁度中心部に向かい魔法を放つ。カーリが魔法を避けて端に跳び跳ねる。


ズダダダダダ。ガガガゴン。


中央にいた兵士達が倒され、吹き飛ばされ真ん中に綺麗な道が出来た。


僕がその中を静かに歩きだす。まわりの兵士は皆動きを止めている。何が起きたかわからないのであろう。呆然と僕を眺めている。


指揮官の男が僕と目があう。その司令官は怯えていた。絶対的な数の力で負けない、絶対勝つ、そう自信を持っていた。その自信が音を立てて崩れ落ちる。


僕が司令官の前に来ると腰を抜かし逃げる事も出来ず、命乞いをしだす、仮にもその男が、敵方の司令官だ。

明らかに外の兵士と違い過度な装飾を付け、勲章のような物をいくつもぶら下げ、汚れ1つ無い綺麗な鎧をまとい、腹がデップリと出た中年の男だ。


司令官の喉に刀を押し付け兵士達に向かい声をかける。

「司令官の男は、命乞いをして助けを求めた。よってこの男の命は助ける事にする。


兵士に次ぐ、ここで命を落とすか、投降するか今すぐ決めろ。お前達は僕達5人よりも弱く脆弱だ、戦いを望むから皆殺しにする。


さらに、オーヂエン国最強の飛行隊も到着している。いずれにせよロンリーヌはものの5分もあれば解体される、投降しろ」


壁からアルム達飛行隊が入ってきた。


マルイル宰相の声が響く。

「私はオーヂエン国、宰相を勤めるマルイル ホォン ビルルマである。このまま投降するか、ガレシオン公国までこのまま攻められたいか、好きに選べばよい。

我々はこのままガレシオン公国まで攻め込む戦力を持ってここに来ている」

相変わらず渋くて良く響く声だ。



僕が右手を上げる。それを合図にカード バハルの一族、500を超えるドラゴンが上空に現れる。

ドラゴン達はロンリーヌの中心部にそびえ立つ城に向か一斉にドラゴンブレスを放つ。


カード ハバルを初め上位種のドラゴンが複数いる。そして放たれたドラゴンブレスの威力は凄まじく。10分と立たずロンリーヌ最大の城で要塞城と言われる程の堅牢な城が跡形もなく壊される。


その様子を見た兵士や貴族達が投降してきた。投降してきたもの達を飛行隊が手早く保護して行く。元々投降させることが目的だった為、その準備も出来ていた。


そんな中でボロを着込み逃げ出そうとする2人を見たつけて取り押さえた。


「すみません、私達はここに連れてこられた奴隷の親子です。どうかこのまま見逃して下さい」母親とおぼしき女が僕に懇願してきた。


「リオンさん、どうしたのですか」ヒューズが僕の所に走って来た。


「奴隷ですか?」僕に聞いてきた。


「いや違うな、こんな香りのよい香水をつけた奴隷何ていないよ。それにこの2人の肌は綺麗過ぎる、王公貴族だけだよこんな綺麗な肌でいられるのは」


親子とおぼしき女達に緊張が走った。

「あれ、カンテール フィン ガレシオン様ではありませんか? 私です、ヒューズ フォン ビルルマです。そんなに怯え無くても大丈夫です。お二人は私の友として保護させて頂きます」

「よろしいでしょうか?タメニア フィン ガレシオン様」


ヒューズが丁寧に2人を見て話す。カンテールと呼ばれた女の子が泣きながらヒューズ抱きついて謝り始めた。


2人を保護しながらアルムの所まで移動する。


ヒューズがアルムに対しこの2人の保護を求めた。

「アルム公爵、この方達はガレシオン公国の皇女第一皇女 タメニア フィン ガレシオン様。

第二皇子 ススルブ フィン ガレシオン様のご息女カンテール フィン ガレシオン様です。元々私の家族になる予定の方達でした。戦争にも何も加担していない方達です。どうか保護をお願いします」


「それなら私ではなくマルイル宰相に伝えなさい」アルムが冷たくいい放つ。


「いえ、出来れば公爵様のお言葉が欲しいと存じます。助かった後もオーヂエン国内での生活が続くはずです、その間のことも考えればおじい様だけでなく、我が国最強の公爵様のお言葉を賜り物たく存じます」


「わかりました。ですがこれは貸しですよ。いずれ帰して頂きます」


「第一皇女 タメニア フィン ガレシオン様とカンテール フィン ガレシオン様ですね。私はアルム ファン リウム公爵と申します。

貴女達がオーヂエン国にいる間は私は保証します。ガレシオン公国と違い何もない田舎の国でございますがゆっくりとなさって下さい」

「それと紹介が遅れました。こちらは私の弟でリオンと申します。今後ガレシオン公国にもお邪魔することが多々有ると思います。その時は宜しくお願いしますね」


「リオン レース レインです。姉とは名前が違いますが、僕の名前は国王陛下より頂いた名前です。宜しくお願いします」


「レース レイン? 剣聖様と同じ名前を頂いた程の方なのですね?


大変失礼をいたしました。ガレシオン公国 第一皇女タメニア フィン ガレシオンと申します。私どもこそ大変ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。


私の事はどうでも良いでのす。カンテールはまだ8才の子供でございます、どうかこの騒ぎが落ち着きましたら、親元に戻してやってもらえませんか?カンテールの代わりはなんにせよ私が勤めさせて頂きます」


話を聞いていたマルイル宰相が話しだす。

「タメニア皇女、貴女達の処遇とガレシオン公国の処遇はこの後陛下がお決めに成る。最悪のことも覚悟なされよ。

我々はこのまま、ガレシオン公国に向かい我が愚息を成敗せんと行けません。少なくても一両日中には陛下とお会いするでしょうそれまでお待ち下さい」

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