第90話
朝食を終えた後、アメールに戻る。マルイル宰相がギルドの外で護衛もつけず素振りをしていた。
無駄動き無い素晴らしい動きに思わず見とれてしまう。
「マルイル宰相。おはようございます」僕が声をかけると、静に素振りをやめこっちを見る。
「リオンか、いま戻りかい? どうやらかなり大漁のネズミを捕らえたようだね」
「はい、白の華やかな鎧をつけた大物を捕らえました」
マルイル宰相がうんうんとうなずく。
マルイル宰相の前で膝をつき平伏してお願い事をする。
「この剣は、未だ10代の若者が、身につけていた武器になります。丁寧な作りの剣です。愚かな上官の命により、早すぎる一生を終えました、せめてこの者達を知る者にこの剣を返したいと思います」
「何人おった?」マルイル宰相が苦虫を潰したような顔をしている。
「はい、私の知る限り4人程おります」
「若者は国の希望だ。若者から亡くなる等持っての他。ガレシオン公国は敗北から何も学ばぬ。愚かなな行為だ。
リオン、辛い思いをさせて申し訳ない。今しばらく、この老人に付き合い行動を共にして欲しい」
「ハイ、辺境都市ビルルマまではご一緒させて頂きます」
朝のしたくが終わり、出発する。
マルイル宰相から今日は白狐と鳳凰は出さないのかと聞かれ、護衛の兵士の為に出さないと説明をした。
護衛の並びは僕とカーリが先頭で馬に乗る。
アルネと文官、ヒューズがマルイル宰相と馬車の中に入る。
護衛の兵士4名が同じ馬車。
ルーニーとリーンハルが一番最後を馬に乗り護衛する。
アメール村を出て南に南下していく。マリエラとの分岐の道をさらに南下していくと、この先に村が二つありその二つの村を越えるとロンリーヌに付く。
最初の村までおよそ2日。二日目の途中で大きな川を越えて村に入る。
地図では名前がのっていない村だ。
旅人の往来も少ないようでマリエラとの分岐から誰とも会わなくなった。日が昇り切りお昼過ぎに1度休憩を取る。このまま進むと道沿いに少し開けた空き地が有るので今日はそこで1泊することに。
モンスターにも合わなければ盗賊にもほぼ会うこと無く進み道沿いの開けた空き地に付く。
不思議なものでモンスターや盗賊に会えばあったで嫌なものだが、会わないと会わないで何故か不満を覚える。
「皆さん、お疲れ様です。本日はここに野営をしいて宿にします」
馬車に向かい声をかけると1人で空き地入る。ブロックソイルを唱え宿泊可能な施設をたてる。1階に馬車をおいて馬を外し厩舎に移動。水と飼い葉を与えて休ませる。馬も8頭もいるため一階部分は、ほとんど馬専用になってしまった。
2階は護衛兵士の部屋と食堂、3階に僕達の部屋とマルイル宰相、ヒューズの部屋、屋上を造り見張りが可能な場所にした。
マルイル宰相が不思議そうな顔で
「リオン? 君達は野営の時はこんな建物を作るのか?」
「ダンジョン等ではそうですね。ここは人の往来がない場所と思いました、その為です。ちなみに明日、ここを出発する時はさら地に戻してから出発します」
僕の説明を聞いた後も不思議そうな顔をしているマルイル宰相がモンスターを発見した。
「リオン、ミートフロックだ!」
「え、ミートフロックですか?」思わず気持ちがはね上がる。高級宿、王宮の晩餐の時などにしかお目にかかれない高級食材だ。
すぐに索敵を開始、場所を確認しヒューズを呼ぶ。
「ヒューズ、食材の確保に向かう」
「食材ですか?」ヒューズが戸惑いを覚えたようだ。お付きの護衛も食材探しに反発を覚える。
「ヒューズ様が食材探し等もっての他。そんなもの冒険者風情が行えば良い」兵士の男が言って来た。
「その冒険者風情の見習いがヒューズだ。嫌なら見習いを止める事だなヒューズ」
なんとマルイル宰相が間に入った。
「大体、食材1つ確保できん者に兵士等勤まるか? お前達は文句は出るが食材1つ準備も出来ない。馬の世話1つなっていない。それで国王を守護する、正騎士か?
城を離れたら自分達が全てをやらなければいけない。食べられる草花やモンスターの知識に乏しい者など、騎士見習いからやり直す必要が有るな」
「リオンすまぬがこのぼんくら共5人を連れて行ってくれぬか?」
「先にミートフロックを取って来てもよろしいでしょうか? 夜まで時間がありますその後で良ければ問題は有りません」
「すまぬ。よろしく頼むぞ」
マルイル宰相が深々と頭を下げた。
「アルネ。周りの監視を頼む。カーリはこの辺りの警備、リーンハルとルーニーは僕と一緒にミートフロックを捕まえに行くぞ」
「「「「はーい」」」」
リーンハルとルーニーが拠点の最上階の見張り台から飛び降りて来た。
「ミートフロックなんて、ご馳走ですね。私、あの味忘れられないです」
「私も~。もうお目にかかれないと思っていました」
ルーニーとリーンハルが興奮している。
リーンハルとルーニーを連れて森の中に入る。少し進むと沼地が見えた。
再度索敵を行う。向かって左手側にミートフロックを確認しした。
「ルーニー、ここから左手に2mしげみの中」
ルーニーが愛用のミスリルの剣を取り出ししげみに向かう。
ミートフロックを見つけたのか一旦立ち止まり体制をととのえる。
シュッ、タ。
ルーニーが静に飛び上がりミートフロックの頭に剣をさして捕える。
ミートフロックは捕えた後の処理が大変で解体は倒した後10分以内に終わらせないといけない。
ルーニーから捕えたミートフロックをもらい解体する。頭の後ろから背骨をそって脇腹まで刃を入れて目印をつける。その後は脇から背骨まで刃を入れて肉と骨をはなす。背中の肉を外した後は両手と両足を根本から切り取る。背中は皮を剥いでマジックバックにしまい。
手足も手と足を切り取り、皮を剥いでからマジックバックにしまう。
皮と内臓は食べる事は出来ないが、ミートフロックから取れる油は照明用の油として人気が有り、のこった皮、骨、内臓等は炭になるまで焼いて作物の肥料として利用可能な食材で、それこそ捨てる所が無い万能なモンスターなのだ。
沼地の周りを散策して4匹のミートフロックを捕え処理をした上で拠点に戻る。
拠点に戻り鍋に水を張り取ったお肉の最終処理を行う。
肉を塩水にさらし更に血抜きを行う。その後、布に巻いて水けをとり天日で干す。漁に使う網を改良した乾燥用の袋に入れて拠点の天井に吊るす。
その後は残った骨、皮、内臓等を炭になるまで焼く。かなりの油の多いモンスターの為か、ある程度燃えると自分の油で勢い良く燃えはじめ、小一時間程で完全な炭になった。
灰を小袋に集めてマジックバックにしまう。
未だ夜になる前だった為、ヒューズと兵士4人を連れて食べれる食材探しに向かう。
先程の沼地と反対側に向かい食べれる物を探す。流石に人の往来の無い場所だけはある。ざっと見渡すだけでかなりの数を発見した。
「ヒューズ、君も騎士だよね。食べる草花については習ったかい?」
「すみません。私は実地研修は受けておりません。本でしか知らないです」
「他の方は?」呆れながら聞く。
「我々は姫の護衛である。食事の世話等給仕が行うもの。我らには関係無い」
30代だろうか、護衛の騎士のなかでは一番のベテランとおぼしき男が自信たっぷりに言って来る。
「呆れるな。ならお前達は自分で食材が取れないのだな?」
「だから給仕の仕事を何故、我々騎士がやらなければならない」ベテラン騎士が噛みついて来る。
「タイナー殿下ですら、自らの食べ物位、自分で取ることができると言うのに。東の辺境伯の兵士はレベルが低いな」
「食材を確保出来ないようなら飯は抜きだ。お前達のようなやつに物を教えることすら馬鹿らしい」
僕は、余りの物言いに呆れて1人拠点に戻って来た。
カーリが見張り台から僕を見つけて声をかけて来た。
「リオンお帰り」ルンルンとした声だ。
「他の人は?」
「余りにばか臭くて置いて来た。人は1日食わない位じゃ死ぬわけじゃ無いし」
風まといをかけると拠点の見張り台までジャンプする。
カーリが抱きついて来た。
久しぶりにカーリの頭にさわりモフモフする。やっぱり気持ちい~!!
なんか癒される。
1時間位した後だろうか。ドロまみれになりながらヒューズを初めとした5人が帰ってきた。仕方なく降りるとどや顔でベテラン騎士が言って来る。
「我々だって野営訓練は行う。食べ物を探す位なんて事無い」
ヒューズは野草の本を持ち爪までドロが入っているが、ベテラン騎士は手は指先まで綺麗で足元もたいして汚れてもいない。
マルイル宰相に皆戻った事を伝え集まってもらった。
マルイル宰相が持って来た野草を調べいくらかは食べれない物も入っていたが概ね問題無いと言ってヒューズを初め野草を取って来た4人を褒めた。
ベテラン騎士が体を乗り出しマルイル宰相に声をかける。
「マルイル宰相、何故、私には何の言葉も無いのでしょうか?」
「お前は何を取って来た? 野草か獣か? 有るならすぐに出せ」
ベテラン騎士が取り出したのは毒草と毒蛇である。
「ふむ、お前は仲間に毒を食べさせ仲間を殺すつもりのよだな。どうもサリンジャーの推薦してきた者は信用ならんな」マルイル宰相が怒りを現にする。
外に違和感を感じて刀に手をかけ入り口を見る。黒の鎧を来てワイバーンに股がった男が中を覗き込んでいた。
「リオン、こやつは私の小飼だ。心配せんでよい」
そう言われてヒューズを初め残りの騎士達が男の存在にきずいた。
マルイル宰相がベテラン騎士をワイバーンに乗った男に渡す。何をしたのかベテラン騎士が固まり動けなくなっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます