第89話

ライズの屋敷に付くと「リオン、お前に頼みたいのはネズミ退治だ」


低いランクの時には割のいい依頼でよく受けたネズミ退治。テイマースキルの有る僕には何て事無い依頼かな。


「最近な、透明なネズミが入って来ては何やらやらかしてくれている。どうにもそれを見切れる者がいない。頼んだぞ」


そっちでしたか。でも透明なネズミ。四聖獣教団だろうか?かなりしぶとい奴らだ。


ライズの屋敷を外から見回る。柱に寄りかかるように立ってる奴がいる。ライズに声をかけ動物を捕らえるようの荒鉄縄をもらう。


なに食わぬ顔で柱に近づくと柱に寄りかかった奴を捕らえる。荒鉄縄で手足を結び口を封じる。屋敷の地下牢に連れて行き、兵士に預ける。


すでに隠匿魔法が解け、全身黒ずくめの姿が出てきている。幻覚草の臭いだろうか、口元から甘い臭いがする。


外の探索を終えて屋敷に入る。

「ライズ、見えないネズミだけでいいのかい?」


「ああ、構わんよ。見えている奴は所在は知ってる。情報操作の上ではいないと困る駒だ」本当貴族って面倒だ。良くやってるよ。


「じゃ、全部の部屋を見せて欲しい」

屋敷の部屋全てを見て残り2人の黒ずくめを捕らえた。どうやらリュックニーの残党らしい。


ライズに言って屋敷の屋根裏部屋で休む事にして夕方から寝始める。真夜中に白狐の声で目を覚ます。

≪白狐、何時も悪いね≫


≪何をおっしゃる。肉体の無い私には昼夜関係無い事です≫


≪うん、状況は?≫


≪ライズの部屋付きが2名外にいます≫


≪了解、窓から出て屋根づたいに観察しよう≫


屋根裏部屋の窓を開け、屋根の上に出る。地面に影を落とさないように慎重に進んで2人が見える場所まで来た。


丁度、月の光の影になっている場所に身を潜めるように2人がいる。


観察していると庭からガレシオン公国の正騎士の鎧を来た者が出て来る。その後正騎士の元に向かい歩き出す。


庭の木々の所に10人前後の正騎士を発見。マジックバックから練習用の刀を取り出すと刀を構えたまま様子を見る。


ライズの部屋付きの2人が屋敷に戻って来たタイミングで屋根から飛び降り2人を倒す。鎧も着ていない2人は刀で叩かれ悶絶しながら倒れた。


木々の所に集まった正騎士の中で見張りの男の首を正面から斬りつける。

不意をつかれたのか剣を出す余裕の無い正騎士を狭い中で倒して行く。こういう木々か生い茂る場所の練習をアメールで散々行って来た結果だろう。僕は上手く動けるが、正騎士達は木々に邪魔され攻撃も防御も出来ず倒された。


索敵と魔力察知を同時にかける屋敷入り口に10名と木々の奥に2人いることを発見。

≪白狐、正面の10人を頼む。僕はこのまま後ろ2人を捕らえる≫


≪私だと殺してしまいますが問題ありませんか?≫


≪問題無い≫


≪仰せのままに≫

白狐が体を現にする。体長3mの巨体に全身刃の毛でおおわれた美しい姿を表す。

白狐が屋敷を軽く飛び越えて屋敷前に姿を表す。


白く煌びやかな鎧まとった正騎士達が驚きを表すにした。何の音も無く現れた白狐が牙を向いて威嚇する。


正騎士は怯むこと無く白狐に襲いかかるが元々 SSSオーバーで神獣と言われる白狐に敵うはずもなく、その爪と牙に倒される。後程確認した時には未だ10代と思える男女が混じっていた。


僕は2人で林に隠れる正騎士の元に行く。

2人共、気配を消すこと無く談笑していた。自分達は見つからないと、思い込んでいるのだろう。


「報告が遅いな。そんな難しいミッションじゃ無いだろう」


「現場指揮官が駄目だからな」


「違いない」「「ははははは」」


ひげた笑いに苛立ちを覚える。どうして自分達だけが上手く行くと思うのだろうか?

何故敵は反撃の構えをしていないと思うのだろうか?


どれだけ相手の状況を精査していないのだろうか。こんな奴の為に亡くなるたくさんの兵士が可愛そうになる。


相手に近づき威圧をかけながら声をかけた「こんな夜更けに良く働くな。あんたらの部下は良く頑張っているよ。上官がこれじゃ、死んだ部下は浮かばれない無いな」


「ぴ クス」「ぷベロ」威圧にやられ意識を何とか保っている。


「しかしガレシオン公国の士官ってこんな馬鹿ばかりなのか?」僕が呆れて独り言を言う。


「リオン、ご苦労。後は私がやっておく」ライズの声が聞こえた。側近の兵士30名を連れている。


「ライズ約束通り、情報は共有してね」


「任せて置け、それと表の兵士も殺ったのか?」

「僕だよ。問題あったかい?」


「若い子供が混ざっていた。敵国の辺境伯の領地に子供を連れて来るなどもっての他。士官の貴様らには死にたくなる拷問が待っている覚悟しておけ」ライズが鬼の形相でガレシオン公国の兵士を睨む。

ライズ本来の姿がこれだ。長年、近国のナーラ国とのいさかいをたった数年で終わらせ、正式な国境を制定。幾度と無くこの国の脅威を押さえてきた人物だ。


ライズの指示により、兵士が生きている者全てを捕らえ、亡くなったものは丁重に葬られた。


一部若い兵士の剣は、後程ガレシオン公国との交渉の際に返却することになった。


騒動が収まりライズの屋敷に戻る時には日が登り初めていた。

僕が屋敷に入ると1人のメイドが震え始める。僕がそのメイドの前に立つ。メイドは僕に隠し持っていた単刀を渡して来た。その姿を見たライズが静かにメイドを捕らえた。


◇◇◇◇◇◇


ライズと共に早めの朝ご飯を食べて入るとオランさんがやってきた。


オランさんが僕とライズがそろって朝御飯を食べているのを見て開いた扉をパタっと閉じてしまった。


ライズが声をかける。

「こら、オラン!! 変な心配は不要だ中に入ってこい」


「ヒャイ、入ります」

オランさん噛んだ。絶対疑ってるな!!


「辺境伯、何故こんな朝早くにリオン君がいるのでしょう?」オランさんがオドオドしながら話をする。


「昨日からネズミ退治をお願いしていてな。それが先程終わった。丁度腹もってたから2人で食べていた所だ」


「ネズミ退治ですか?、リオン君が・・・は。もしやライズ辺境伯、この屋敷も襲撃されたのですか?」


「なんだ、ギルドもか?」


「はい、ギルドは数日前にラピスが、それから警戒を怠っていませんので問題はありません。もしかと思い本日は護衛を増やすか相談したく来た次第です」


「リオンお前はどう思う?」何故かライズが僕に聞いてくる。


「ロンリーヌに付いたら大きな花火を上げてマルイル宰相をおもてなしする予定です。ここまで飛び火するとは思いませんが、火消しの水はあった方が良いかとは思います」


「だそうだ、ライズ、心配なら水張りようのタライを沢山準備するのだな」

そう言うと楽しそうにライズが笑う。

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