第77話
翌日、城の外に出て刀を抜いて構える。昨日の心の乱れはなく、とても静な状態だ。
白狐を抜いて構え振り下ろす。刀身から七色に光る光受けて出る。その光は周りの空気すら斬ってしまう。
ひとしきり白狐を降った後鳳凰を掴む。
居合いの構えから一気に抜刀する。切っ先から光のレザーが出る。触れるもの全てを斬る、左手を束に起き、右手で鳳凰を上段に構え振り下ろすと投身から光の鳥が飛び出す。まるで、太陽のような強さを放つその鳥はダンジョンの壁にぶつかり消えてしまった。
刀を鞘にしまい。静に精神を統一。フルが肩に乗ってきて話し始める。
「主、後ろに人がいるぞ。どうする?」
「ほっておいていい。心配はないよ」
フルが肩の上で静になる。フルの魔力が僕の魔力と合わさる瞬間だ。全身を炎がおおう。
炎の魔闘気をまとい、体術の練習。
2時間くらい動いた後だろう後ろからナイフが飛んで来る。クルっと振り返りナイフを人差し指で止める。叩き落としても良かったがあえて止める。
パチパチと手を叩く音がした。人属だろう女がいた。その女の後ろに数人の男がいる。全員人属と思う。
「何のようです?」僕から声をかけた。
「あんた、このまま帰ってくれないか?あんたがここにいるのは迷惑なんだ。私達はやっと安定して生きる場所を見つけた。それを壊されたくない」
「無理だと言ったらどうなる?」
「私達がお前を殺す」
「そっか、それも現実的に無理そうだな。あんた達は弱すぎる。ジョーやカルメンですら無理なのに、どうやって殺す気してるの?」
そう言って歩きながら近づく、そして投げられたナイフを手渡しする。
「どうした、殺すなら今がチャンスだぞ」
そう話しかけて城の中に戻る。メイド達が悔しそうにこっちを睨む。
城に戻り昨日話しをしたテーブル席にくる。カルメンがご飯を食べていた。
「リオンおはよう。食事は?」
笑いながら「まだ」と伝える。
カルメンが「私と同じの持って来て」と誰もいない場所に声をかけると、何処からか走って来たメイドが返事をしてまた消える。
「リオン座って。今日は貴方の話しを聞かせて」カルメンがそう言ってこっちを見る。
僕は出された食事を食べること無く、子供の頃の事からダシャナ家の事、アルネ、カーリ、アルムの事等をカルメンに話して聞かせた。
その後はカルメンと木刀を持ち闘う事になった。
カルメンと手を合わせてわかった。恐ろしいくないと言えば嘘だ、カルメンは僕だ。当然と言えば当然なのだが。
踏み込みの癖、刀の握りの癖、攻める際のタイミング、引くタイミングに至る全てが一緒だった。
僕は完全に困ってしまった。僕の最大敵は自分だ。僕は自分を倒すことが出来ない。はっきりわかった。
「あ~、2人だけでずるい。お母さんもまぜて」お母さんの明るい声がした。
気が付くと僕達が座っていたテイブルに座り、僕の手付かずの朝ご飯を食べようとしている。
「お母さん、行儀が悪いわよ」カルメンがしれっとした顔でお母さんをしかる。
「ぶ~」お母さんがクチャクチャな顔で文句を伝えた。
「お母さん、其は食べてはだめです。メイドさんが困っていますよ」僕がなだめる。
「何よ、リオンまで。お母さんに意地悪して」そう言って一口、野菜を摘まむ。
お母さんが静にジョーを呼ぶ。
周りのメイドさんが震え出す。
「ジョー、メイドのしつけがなってないわね。私のお客様にこんな物を出すなんて」
ジョーが混乱したように朝食のお皿を取る。
匂いを嗅いで怒り出す。女性のメイドが1人前に出た。
「私がやりました。あの人がいると私達がここにいられなくと思って行いました」エプロンを握りしめ、震えながら僕を睨む。
「良いですか。あなた達は姫のご厚意でダンジョンで倒れていたところを助けて頂きましたね。姫とも約束していますね、私達はけして姫を傷つける事はしないと」
「今、姫はとても悲しんでいます。リオンさんだけではありません。貴女達の行いが姫自身の気持ちを裏切った事についてです。
ここに住む者は皆、姫の家族です。その家族から裏切られた姫のお気持ちを考えた事がありますか?」
「お前達全員、姫が良いと言うまで部屋で謹慎しなさい。もし事がうまく行き、姫が残れたとしてもその時は、貴女達を許すのはリオンさんになります。このような個とをして許しを得られるなんて甘い考えはしない事です」
「お待ち下さいジョー様。何故その男が姫様を助ける事が出来るのです」メイドの女が震えながら言った。
「リオンさんの持つ白狐と鳳凰の能力を見たでしょう。元々白狐と鳳凰は合わさると姫と同等の力があります。まして鳳凰は光の権化です。今の姫には部が悪い事にこの上無い。そしてリオンさんはこのダンジョン内ですら、1度も全力になってません」
「おそらくですが、姫と同等か少し弱い程度の能力でしょう。それ程の力が有りながら姫を討伐しません。何か救う方法が無いか物凄く考えています。
リオンさんは最初から姫を殺す積もりは無いのです。彼から殺気を感じましたか?貴女達が朝リオンさんに戦いを挑んだ時も彼には殺す気持ちすらなかった。貴女達程度なら、朝の段階で死んでいてもおかしく無いでしょう」
「私もそう思う。リオンの気持ちは私のなかに物凄く入って来るから、お母さんを助けたいとしか思っていないし。貴女達にすら怒ってもいなかった。貴女達の気持ちは私もリオンも良くわかる。貴女達は少し頭を冷やしなさい。
私がリオンに協力してお母さんを助ける方法を探す。それでも駄目ならみんなごめんね。お母さんとリオンを許してあげて」カルメンがメイド達の前に立って頭を下げる。
メイド達からすすり泣く声が聞こえる。
お母さんが立ち上がり「今日はみんな部屋に居なさい。ジョーもね。今日は親子水入らずで過ごすから。それと、みんなの気持ちは良くわかった。だから一旦頭を冷やしなさい」
「リオン、ごめんね。私が悪いの」「本当にごめんなさい」
お母さんが申し訳無いと何度も謝る。カルメンも一緒に謝っている。
屋敷に戻ろうとしていた女性のメイドが1人突然と倒れる。
ジョーが近づき声をかける。
「メリー大丈夫か。まだ死ぬなよ。2人で外の世界に戻るって、決めただろう」
周り見てメイド達がオロオロとして立ち尽くす。
僕が近づきジョーに声をかける
「この人はどうしたの?」
「はい、妻は呪いの影響で時々発作を起こします。我々にはこの呪いを解く手段が無く妻が弱るのを待つしか無い状態です」
「少し見せてもらえるか?」そう言うとメリーと言われた女性を見る。ジョーと違い人属の女性だ。
「ハイ ヒール」メリーの体にヒールをかける。体から煙が上がる。
以前魔族のマルチーズから聞いた事がある。魔族は他の種属を呪いをかけ奴隷する事があると。
「この呪いなら何とかなるだろう。ジョーとお母さんはきついと思う一旦離れてもらえるか」「外の人にも言う。これから解呪魔法を使う。魔族やアンデット系には毒だここから離れた場所で待機して欲しい」
「リオンさん、よろしいのですか?」
「ジョー。信じて欲しい」
「お母さん、早く移動して! 耐えれないと思う人も早く、急がないとメリーが大変なんだよ」カルメンの声にみんなが動き出す。
残ったはカルメンと2人のメイドだけだった。
「カルメン、この2人に結界をかけて、それと回復した時、呪いをかけた魔族が出て来る可能性がある。その時はカルメンが2人を守るだよ」
カルメンが静にうなずく。
僕が静にメリーに近づき声をかける。
「これから呪いを解く。体が苦しいと思うけど、呪いが解けたらすぐにカルメンと後ろの2人の所にに行くんだ。いいね」
メリーが苦しいそうにうなずく。
「聖なる光の精霊達よ。我が王の名の元に集り光の癒しを与えよ。我が力がなりて、弱る者の助けとなれヒールローブ(癒しの衣)」
メリーがブルブルと体を震わせぐったりとした。メリーの体から黒い煙が出て体の上で魔法陣を描く。
メリーの体をお越し僕の背中に置く。「カルメン」
カルメンがメリーを持ち上げ2人のメイドの所に戻り結界魔法を発動する。
僕の前に魔族の男が出て来た。
「メリー、こんな所にいたのか?探したぞ。ジョーの奴はどうした」
禍々しい魔力を解放してこっちを見る。
「お前か?我が呪いを解いたのは?」
「なんだ、どんな強者が出て来るかと思ったなのに、でてきたのがレッサーデーモンか。なんかがっかりだな」僕が相手を挑発する。
「口の聞き方も知らん愚か者だな」
魔族が怒り魔法の詠唱を始める。
「ライトクロス(光の十字架)」魔族の攻撃を待たず光魔法を放つ。
ギャャャャャャャ!!!!!!
魔族の体が十字に斬れて魔石を残し消えて行った。
「メリー 少し体を見せてもらえるか?」
メリーが苦しいそうに近づいてきた。
メリーにヒールをかける。血色が良くなり元気を取り戻した
「リオンさん、有り難うございます。あんな事をした私達に、こんな情けをかけてくださるなんて」
メリーがしきりに頭を下げて来る。
「体はちゃんと休ませないと良くならないならないから、ちゃんと休んでね」
メリーにそう伝える。
ジョーとメリーが屋敷に戻る。
カルメンが嬉しそうに笑った。僕はジョーやメリーに何の情も無い、でもカルメンは彼らに対し物凄い敬愛の念を持っている。
おそらくカルメンの敬愛の念が僕に伝わりカルメンの気持ちが僕を動かした、そう考えて問題無いだろう。
僕はいったい誰なんだろう?僕は何がしたいのだろう?僕はお母さんに会わない方が良かったのではないだろうか?
カルメンが複雑な顔で僕を見る。僕の気持ちが伝わったのだろう。
「なあ、リオン。私と踊らないか?」
唐突にカルメンから声をかけられた。
「はい、カルメン」
僕は姿勢を但しカルメンの前に立つ。
「カルメン、私と踊って頂けますか?」
「私もそう思っておりました」
突然ピアノの伴奏が始まる。ジョーがピアノを引き始める。
僕がカルメンの手を取り向かい合う。静にダンスが始まった。お母さんの1人で行うダンスのレッスンも見たが、カルメンも負けない位に旨かった。
ゆったりと踊った後にテーブルに戻る。メリーが紅茶を入れてくれる。
お母さんが近くに立って僕を待っている。
「失礼します。よろしければ僕と踊って頂けますか?」右手を差し出し頭を下げ返事を待つ。
「はい。喜んで♡」
僕がお母さんの手を引いて庭の中央にくる。ジョーがさらに情熱的に音楽を奏でる。
お母さんのダンスは情熱的で哀愁があり優しかった。多くを語らずともお互いの気持ちがわかった気がするそんな有意義な時間だ。
僕とお母さんのダンスが終ると周りから拍手が湧いた。メイド達が屋敷から僕らを見て拍手を送る。
メリーに対する感謝や色々な思いのつまった拍手を受けて僕の気持ちが固まった。
「お母さん、カルメン。明日アルネとカーリをここに招待してもいいかな?」
お母さんが少し暗くなる。
「お母さん、私はいいよ。リオンも気持ちが固まったみたいだし」
「カルメン…」「リオン、貴方もこのままだと駄目だよね?」
ジョーが近きお母さんに耳打ちする「姫、お薬の時間です」
「わかった。リオンとダンスした分すっきりしたわ」
立ち上がり屋敷の中に入る。
「リオン、私も覚悟を決めた。もし私の意識が無くなってもここのみんなは大事にして。それと私の力を使えばお母さんは押さえる事が出来る。その時はお母さんを救ってあげて」
カルメンの強い意識を感じる。
「わかった。もし僕の意識が無くなったら、アルネとカーリ、リーンハルとルーニーの4人も大事にして欲しい」
「大丈夫。私も約束する」
カルメンが手を合わせ祈るような姿勢で話出す。「お母さん。私とリオンは決着をつける。どちらにしろ私達はお母さんの子だから、ちゃんと受け入れてね」
お母さんとの念話だろうか?少し時間をおいて振り向く。
「お待たせ。どうすればいい?」カルメンが明るく聞いて来る。
カルメンとダンスをしてわかった事が有る。呪いだ、魂を分ける呪いをかけてある。まずは呪いを解く。
「まず、カルメンにかけられた呪いを解く。その呪いを外そう」
「聖なる光をここに集め 悪なる想いを滅し聖なる者に光を与えよ ホーリーローブ(聖なる衣)」
カルメンが苦しそうにしゃがみ込む。
まだ完全に呪いが外れてはいない。さらに強力な解呪魔法を唱える。
「聖なる光の精霊達よ。我が王の名の元に集り光の癒しを与えよ。我が力がなりて、弱る者の助けとなれヒールローブ(癒しの衣)」
カルメンの体から黒い煙が立ち上ぼりカルメンの体から完全に抜ける。
念の為ハイ ヒールを煙にかける。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 煙が音を立て消えて行った。
「大丈夫か」カルメンに声をかける。
カルメンの体が薄く透き通る。
「私はここまでだね。リオンみんなの事お願いね」
「わかった」カルメンを抱き寄せハグする。
元々1つの魂だ、また元に戻るだけだ。僕はカルメンを受け入れる。それだけだ。
カルメンも僕の良い所、悪い所を受け入れてね。
ふと、頭のなかにカルメンの笑顔が見えた。
体が光だし落ち着きを取り戻す、どうやら意識は僕のようだ。
不思議とレベルアップした時の状態ににていた。2人が元の1つの体に戻り、足りなかった者を取り戻した為だろうか?
「リオン?」「それともカルメン?」お母さんが不安そうに近付く。
「リオンです。お母さん」
2人の間にしばらく沈黙が流れた。
「リオン、貴方はこれからどうするの?」
お母さんの不安そうな表情を見ながら淡々と話す。
「カルメンの記憶をたどりました。まず、お母さんの呪いを解きます。僕の神聖魔法は弱いのでお母さんが亡くなることは無いと思います。それでも相当の苦しみは有ると思いますが。その後はお母さんをテイム出来るかやって見ます。
ただ、僕は何故かスライムしかテイム出来ないテイマーなので確実とは約束できないですが。
上手くテイム出来ればお母さんはここにいて頂いて問題ありません。ジョーや外の方達はそれを望んでいます。また、外のダンジョンや夜だけならお母さんも外に出て問題は無いと思います。
最悪は上手くいかなかった時はごめんなさい。その時は僕も一緒に亡くなる予定です」
「あのね。親より先に死ぬ何て、何て事を言ってるの。そう言うの親不孝って言うのよ(怒)
大丈夫、駄目なら駄目で。
それにリオン神聖魔法の適正無いでしょう。無理して体を壊すと私がアルネちゃんとカーリちゃんに怒られるでしょう。貴方の可愛お嫁さんを泣かす訳には行かないわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます