第76話
夜、カーリが僕の部屋を訪ねて来た。
「リオン、ちょっと良い?」カーリが珍しく僕に都合を聞いてきた。普段は勝手に押し掛けて勝手にくつろいでいるのに。
「リオン、お母さんの事をどう思う?」
「何か漠然とした質問だね。今日お母さんにあってはっきりとわかった。僕は誰かに意図的に記憶を消されているね。それが誰だかわからないし、どんな理由かもわからないし、でも、あの人が僕のお母さんに間違いは無いと思うよ。かすかな記憶の中のお母さんと完全に一致しているし」
「まあ、お母さんを倒さないといけないかどうかは、分からないけど」
「そう。私もあの人が本当のお母さんな気がする」
「リオンを見てあんな取り乱して泣いたり出来ないもん普通」
カーリが顔をふせながらさらに話す。
「だからさあ、ここで終りにしない?親子が戦うのってやっぱり辛い、私はリオンもお母さんも傷つくのを見てられない」
「カーリ。有り難う」「明日行ってみて考えてみよう。お互いに戦かわなくても良い方法が見つかるかも知れないしね」
カーリの気持ちが痛い程に伝わって来る。
コンコン! 開いているドアをノックする音が聞こえる。
「カーリ、今日はリオンを1人にしてあげよう」
アルネがカーリを優しくつつむように声をかけた。
「リオン、私もカーリと同じ意見。でもどうするかはリオンが決めて。リオンが後悔しないようにしてちょうだい」
「カーリもそれで良いいよね?」
アルネの問いかけにカーリが声を出さずにうなずく。
僕が2人に近づき2人をハグする。
「有り難う。もしかしたら2人に取っても辛い事になるかもそれないけど。後悔だけはしないようにするよ」
翌朝、1人で拠点を出てトレーニングを始める。かなり動揺しているのが良くわかる。
刀をふると切っ先が微妙にずれ、無駄な力みに踏み足に痛みを覚える。
刀だけに集中してふる。ただそれだけが出来ない……。刀をしまい、体術の練習に切り替えると白狐と鳳凰が人の状態で出て来た。
≪主、今日は私も参加いたします≫白狐が静に言う。
≪何か女々しいな。仕方無いから私も付き合ってやるよ。感謝しろよ≫
鳳凰が少し照れるように顔を背ける。
「有り難う。すまないな、だらしない主で」
僕が2人を真っ直ぐに見て、謝罪する
≪ちょ、あっ。謝らないでよ!! 調子狂うし≫朱雀の困った声が少し面白くフッと笑ってしまった。
白狐と鳳凰の2人に救われた気がする。お陰で少しすっきりとした。
朝の準備を終えてお母さんの所に向かう。空間移動をして49階層に来た。
カーリは相変わらず落ち込んだ顔をしている。
「カーリ、今日は休むかい?」
カーリは声を出さず顔を横にふる。
少し進むとお母さんがジョーと呼んだ男性が立っていた。ジョーが僕達を見つけると深々とお辞儀をする。
「リオンさん。お待ちしておりました。姫より丁重にお連れするようにと言われております」
「有り難うございます。処でお一人でこちらに?」
「はい、私は姫専属の執事です。姫の言葉意外で私は行動を起こしません」
「それでお母さんは何と?」
「はい、リオンさん。アルネさん。カーリさんのお三方を丁重にお連れしろと。後、巫女の方と護衛の方も一緒に来たければ連れて来て良い」「そうおっしゃっています」
「有り難うございます。少しお時間を頂く事は出来ますか? 僕の野暮用ですが」
「はい、今日はいくぶんか時間に余裕がございます」
カーリが不意に僕の服の袖を掴む。
「リオン……私とアルネに任せて」
いつになくカーリの弱々しい声に驚く。
「カーリ。有り難う、ついでにキルドに送り届けてるもらってもいい?」
「リオン。ごめんね……」「私やっぱりお母さんとの……あ、あら」!!!!!
僕がカーリを抱き締める。カーリが泣き出した。しばらくしてカーリが落ち着きを取り戻す。
「アルネ、カーリをお願い」
「分かった。私も気に入らないけど(怒)」
どうすることも出来ずうろたえているとアルネがさらに怒る。
「リオン。決着つける気持ちはあるの?」
何かアルネもカーリも男らしいな。僕には男らしく決めることすら出来ないのに。
「有り難うね。カーリ、僕も気持ちは決まったよ。アルネ、君も僕の判断は尊重してくれるのか?」
アルネがふんぞり返り「当たり前でしょう」
と怒る。
アルネは僕を睨みつけ「早く行きな!」と鼓舞した。
僕がジョーと言う人に声をかける。
「今日は僕とスミレ、桃の条で向かいます」
「そうですか? 姫はお二人をご所望でしたが?」
「聞こえませんでしか? 僕はお母さんと違ってめんどくさい事は嫌いです。貴方が断るなら力付くで行きますよ」
「はっきり言って俺はこの2人より優しくはない」今はどうしても冷静にはなれない。
辺り構わず威圧をかける、そうすると僕よりレベルの低い者がことごとく倒れる。ジョーと呼ばれた男が泡を吹いて倒れていた。
「さっきから隠れて無いで出てこい。僕はアルネやカーリと比べて我慢強いわけでもない」暗闇を睨み付けて言う。
出て来たのは元リュックニーのキルドマスター。アルルカン ソーニャだ。
アルルカン ソーニャも立っていられず地べたに這いつくばり苦しそうにしている。
ゾワっとする殺気、あからさまに怒りを現にして、静に現れる。
「リオン。遅いわよ? それとジョーをいじめ無いでちょうだい。貴方と比べると弱い人なんだから」
お母さんが現れた、殺気が溢れ怒気をまといつつも丁寧な言葉でな話す。そのメイド服と可愛い顔から想像もつかない圧を感じる。
僕とお母さんが向かい合う。そんな緊張感のなか、せっせと動くアルネとカーリ。
「あ、お母さん」カーリが手をふる。
「え、お母さん来たの?」アルネがあさっての方向を見ながらキョロキョロと探す。
「アルネちゃんこっちよ。って何してるの?」
お母さんがアルネ達が捉えている黒ずくめの集団に興味を持つ。
「お母さん、私とカーリ。野暮用で一旦ダンジョンを出るので今日はリオンとお供の2人を残すので仲良くしてあげて下さい」
「ひょっとしての変な服の奴らのせいで遅くなったの?」「許さない(怒)」
お母さんの怒気がより強まりジョーがさらに苦しみ出す。
「お母さん、ごめんね。これは僕達が依頼として受けた案件だから、そのためにアルネとカーリを行かせるよ」
「む~!許せない。アルネちゃんとカーリちゃんと沢山遊ぼうと思っていたのに」口を尖らせ腰に手をあて怒る。その姿が妙に可愛い。
「アルネ、カーリ任せるよ」
「OK」「はいよ~」
僕が威圧を解いてジョーを起こす。
ゴボゴボと咳き込みながら何とか立ち上がる。スミレと桃の条は自力で立ち上がった。
「姫、何も降りて来なくても」ジョーが困惑しながらお母さんにもたれかかる。
「ジョー、しっかりしなさい。あんた魔族の癖に少し弱すぎるわよ」
「さあ、みんな行くよ」
お母さんの掛け声と共に見たこの無い空間に移動した。お城のような佇まいの邸宅に綺麗植えられた草花、ここはダンジョンだろうかと思わされる空間、ダンジョンの一つの階層を丸々自宅として使って、どうなんだろう?ダンジョンって、それが許されるものなのだろうか?
「姫、お帰りなさい」若い女性が丁寧にお母さんに頭を下げ向かい入れる。みんなお母さんと同じメイド服を来ている。
お母さんにつれられてテラス席に移動する。3つの椅子と丸テーブルがおいてあった。
「さ、リオン座って」そう言うと椅子を引いて僕を座らせる。
「スミレと桃君は悪いけど立っててね」
桃君ってお母さんフレンドリー過ぎ。それとも僕が固すぎるのだろうか。
「ジョー、カルメンを呼んできて」
「はい」
お母さんが僕の隣辺りに座る「リオンにどうしても会わせたい人がいるの。驚くわよ」
「お母さん、呼んだ?」お母さんにそっくりな見た目の女の子が来た。メイド服を来ている。まるでもう1人のお母さんを見ているようだ。
!?勘違いだろうか?、この女の子は僕だ。
何故か直感した。僕が固まっているのをよそにカルメンと呼ばれた女の子が椅子に座る。
「リオン、何見とれるの?」クスクスと笑うお母さんの声が聞こえてハッとする。
「リオン、この子はカルメン。私の子。ううん、貴方の魂を私が無理やり二つにして私が作った子よ。
ダンジョンの中でしかいきれないの、この子と私」
「そうなんだね。カルメンは僕なんだね。そっか、僕の知らないお母さんとの沢山の思い出を作ったんだね」
何故か胸が苦しく、温かく、寂しい複雑な気持ちに涙が流れる。
「リオン、リオンにはカルメンと戦ってもらうね。そうしないと駄目だから」
「ちなみにカルメンもテイマーよテイムしているモンスターは私」
「お母さん、少し聞いても良い?」
「何、何でもきいて、でも男の数は言わないからね」お母さんがニコニコしながら言う。
「お母さん、いつも言ってるでしょ、男の子は母親の恋愛は駄目なの。リオンが近くにいるから、困ってる気持ちが凄い伝わって来るよ。折角お母さんの事可愛いって、思ってくれてるんだからイメージ壊さないの」
「ふーん!つまんない。カルメンばっかりリオンの気持ち理解して」そう言ってすねる。
やっぱりそんな姿が可愛いと思う。
スミレと桃の条が混乱仕切って頭を抱えていた。「リオン殿、どういう事ですかこれは?我々にはわからない事だらけで混乱しております」スミレが小声で聞いて来た。
「スミレと桃君には難しいよね。どうするジョーに送ってもらって地上に行く?」
お母さんの提案に僕が同意した。
「そうだね、スミレ、桃の条は地上に行こうか。アルルカン ソーニャを捉えたから簡易のパーティーも解散しないといけないしね」
「エンリールにも報告してほしい。それとアルネとカーリには少し羽を伸ばすように伝えてちょうだい」
「了解した。リオン殿は少しここに残るのだな」
「そうするよ」
「ジョー、お願い」ジョーがスミレと桃の条を連れて空間転移をした。
僕がお母さんとカルメンを見て「2人で何をして過ごしているとか、どうやってダンジョンにこんなお城作ったとか色々と教えてもらっても良い?」
「へ、そんな事? 何で戦かわないといけないとか、何でカルメンがいるとかきかないの?」お母さんが変な子って顔で見ている。
「それより、僕はお母さんとの記憶がほとんど無いだから色々と教えて欲しい。おそらくカルメンと1つになればお互いの記憶を見るの事が出来てわかると思うけど。それより2人から話しを聞きたい」
「え~、女子トークは男の子には聞かせられない」お母さんが両手で顔を隠し恥ずかしいそうに顔をふる。
「お母さんが言わないなら、私が話すよ。どっちみち、元は1つだから元に戻れば全部わかることだしね」
カルメンが色々と教えてくれた。そんな中で一番驚いたのが僕とカルメンが別れたのが、お祖父さん達が僕を助けに来た時だった。僕のお祖父さんが事を案じ、僕の魂を分ける事を提案。お母さんが断ったが大きくなった僕にあって欲しいとお祖父さん達の説得によってこんな無茶な事をしたと言うことだった。
僕は不思議とカルメンと触れる事で昔の記憶が少しづつ甦るのを感じる。
この日3人でゆっくりと話し、お城のような邸宅の部屋で寝ることになった。
ダンジョン内部と思えない程の豪華な作りに驚きを覚える。フカフカのベッドに豪華な食事、何よりメイドの数が半端ない。この城の中に30人はいるだろうか?みんなどうやって食べているのか不思議な位だ。
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