第72話

アルネとカーリをおいて26階層に降りる。樹木が生い茂りうっそうとした雰囲気。来るのもを強烈に拒否する圧を感じる。


間違いないマウンテン バックの巣だ。


「このダンジョンはマウンテン バックの巣だ。2人ともどうする? 帰ってるか?それとも先に進むか?」


「帰ってもする事も無いので見学してます。桃の条はどうする?」


「すみれ様がいかれるなら私は何処にでもついて行きます」桃の条が胸をはって言う。


すみれが少し嫌そうな顔をしたように見えた。流石に四六時中一緒は気が滅入るのだろう。

「よし、今日は26階層を攻略したら終わりにしよう。カーリとアルネは動け無いだろうし僕達3人で外で気晴らししよう」


「はい!」すみれの元気な声に、思わずやっぱりと思ってしまった。


生い茂った草を踏みしめ進むと体長2mに満たない小さい個体が4頭確認出来る。外に大きな個体がリーダーとして入るはず。


少し観察しているがリーダーの存在が確認出来ない。先に4頭を倒して様子を見る。


マウンテン バックは個体の大きさでランクが別れて入る2mに満たない個体だとCランク。その個体が4頭いるのでBランク相当に該当する。大型の個体は A~Sに該当するがなかなかお目にかかれない。

白狐を抜いて左手で持ち、ゆっくりと近づく。ドンドン。1頭のマウンテン バックが気がつき胸を叩いて警戒音をだす。


手前の1頭に近づくと右手を横に降って攻撃して来た。一旦バックしてかわし次の攻撃を待つ。両手を大きく上に上げ威嚇してくる隙に手前のマウンテン バックを斬り倒す。


すみれのアドバイス通りに小指を中心に握って打ち込むと刀の軌道が綺麗で、余計な力が入らず刀にも負担の無い動きで倒す事が出来た。

見ると後ろにいた2頭が切っ先からでる真空の刃で斬られて倒れていた。空間を斬ったように見えていたのは間違いないらしい。


「すみれ様、そんなに近付くと危険です」桃の条の声が聞こえる。不機嫌になったすみれが桃の条を睨んでいる。


「桃の条、そんなにうるさくすると嫌われるぞ」僕が横を向いて声をかける。


マウンテン バックは横を向いた僕を見て突進してきた。マウンテン バックの突進のタイミングを見て上段から刀を振り下ろす。シルバーバックは体が真ん中から左右に別れて倒れる。


マウンテン バックを回収して25階層に降り拠点に入る。

「カーリ、大丈夫?」

「ムリ…」カーリが寝たまま返事をしてくる。

「アルネ、大丈夫?」「…」こっちを見たが返答がない。よっぽど羽目を外したらしい。


「今日は休みにしよう。僕はすみれと桃の条を連れて1度ギルドに顔をだすよ」

2人そう告げてリュックニーギルドに顔をだす。


エンリールさんが受付に座り作業をしている。

「エンリールさん、おはよう」


エンリールさんが難しそうな顔をしたまま顔をあげる。

「リオンか? 今日はどうした?」


「みんなダンジョンの中での生活にストレスたまっているらしくて休日にした」


「そうか。所でお前の所の女2人はなんとかならんか?ギルドの酒場でたらふく飲んで暴れて大変だったぞ」エンリールさんが顔をしかめてこっちを睨む。


「やっぱり。ごめんね後で言っておく」


「まあ、良い。これであの2人にからむ男もいないだろう」「それとオランからお前宛に伝言があってな1度オランが会いたいって伝えて欲しいってよ」


「了解」「すみれ、桃の条。僕は1度マリエラに行って来る。僕が遅くなるようなら2人で宿に泊まって欲しい。僕達が借りてる宿は前金で払ってるから問題ない。何かあればエンリールさんに聞いてね。それと2人だからって羽目外し過ぎないでね。ギルドを出入り禁止になっちゃうから」


「桃の条、少しすみれも気晴らしが必要だ、ゆっくりさせてやってな」桃の条に近付き小さい声で話す。


空間移動魔法を使いラピスのハマイルさんのお店に来る。あいにくハマイルさんは外出中だったが変わりにお店の人が買い取りしてくれた。

「すみません前回持ってきたシルバーバックより小ぶりですが4体あります」


「わかりました。このサイズは扱い安く値段も良心的で人気があります」お店の女の人が買い取りしてくれる。


「すみません。ハマイルさんの奥さんですか?」唐突に聞いてしまった。


「え?」お店の人が困惑している。


「あ、いや。何時も一緒にいらっしゃるしハマイルさんからの信頼も厚い気がして。もしかしたらご夫婦なのかと思ってしまいまして…」


「そうでしたか。そう言えば私達従業員は皆ハマイルを主人と呼びますね。勘違いされる方もいるかも知れませんね。でもそんな関係では無いですよ。ハマイルは商売にかんしては厳しいですしね、なかなか難しいですよ」


「そ、そうですよね。…」何か間違ったこと言った。反省しなきゃ。


「後、リッチの魔石と上級バンパイアの魔石があります。この魔石の買い取りは可能ですか?」


「拝見します」そう言うと真剣な顔で魔石を鑑定。

「値段は主人と相談になりますが、物凄く上質な魔石です。特に狂王リッチの魔石は過去に見たことが無いくらい素晴らしい物ですね。リッチは戦闘体制に入ると魔石が最高の状態になります。そこからどんどんと劣化してしまうのですがこれは過去に無いくらいの上質なんで魔石です」

凄く興奮気味に話す。


「すみません。詳しいですが元冒険者の方ですか?」


「はい、お見苦しい所をお見せしました。私も元々冒険者をしていました。色々有りまして今の主人に拾われてこうしてやっております。すみません、私達は主人との契約で名前を言う事が出来ませんが、今は凄く幸せを感じています」


「そうでしたか。僕からは何も言えませんが、皆さんが幸せなら言うことはありません」

何か暗くなるな。契約は奴隷以外には、おこなはない。でも幸せと言った顔からは嘘は無いと思う。

そう考えるとハマイルさんの優しさを感じる所でもあるかな。


外にもマジックバックの中も物を全部買い取りしてもらいお店を後にした。


ラピスギルドに来る。周りを見るがリーンハルとルーニーの姿が無い。受付に言って聞くと今日はマリエラのマスターのオランさんに呼ばれてマリエラにいるらしい。


ラピスからマリエラに移動してマリエラのギルドに入る。受付でオランさんをお願いする。


「すみません。マスターとの約束はありますか?」受付嬢から聞かれる。


「無いけど、オランさんに呼ばれて来た。リオンと言います」


「リオン?」受付嬢が不思議そうな顔をする。

「すみません、最近リオンと名乗る方が多くてギルドカードを見せてもらえますか?」


僕がネックレスと指輪を見せて確認させる。

「有り難うございます。リオン レース レインさんですね。マスターのオランがお待ちです。そのまま2階のマスター室にお入り下さい。リーンハルさんとルーニーさんもおいでです」


受付嬢にお礼を言って2階上がりオランさんの部屋に行く。部屋をノックするとオランさんがでた。

「リオン? 思ったり早く来たな。中に入って

「今日はたまたま休みにしたので来てみました」


中に入るとリーンハルとルーニーが抱きついて来た。

「2人共元気そうで良かったよ」

「なに言ってるんですか?まだ、そんな長い期間じゃないですよ。私達に会いたかったんですか?」「しょうが無いな♡」リーンハルに突っ込まれる。


「ゴホン」「そう言う事は別の場所でしてくれ。さみしい独り身には少々こたえるからな」オランさんがジト目でこっちを見る。リーンハルとルーニーは両腕にしがみ付いてくるのでそのまま挟まれるように椅子に座る。


「オランさん、僕に用事があると聞きました?」


「ああ、リオン。ベリス ダシャナは知ってるな?」


「はい」


「ベリス ダシャナが国家犯罪法違反で特別指名手配された。東の辺境都市ビルルマと隣国、ガレシオン公国で相継いでAランクの冒険者を襲い殺したそうだ、よってスカル プダシャナ。リーナダシャナ夫婦共々死刑を宣告されている。死者はあわせて4人。結構な数だよ。


現在、ベリス ダシャナはテイマーだけのパーティーを造り活動をしており、そのパーティーメンバーと共に逃亡中でビルルマに潜伏していると思われる」


「何故、僕にその話を?」


「ベリス ダシャナがリオンを殺すと息巻いていてな。ターゲットはお前だ。その為リーンハルとルーニーにも警戒してもらいたく今日呼んだわけだ」


「わかりました。今の所、アルメニア王国には被害は無いのでしょうか?」


「うん、実はダシャナ家は当初アルメニア王国にいた。何が起きたか分からんが父のテイムしていたサーベルウルフを使い突然両親を襲ってアルメニア王国からガレシオン公国に逃亡してテイマーのパーティーを作ったと聞いている」


「そうですか。家にいたサーベルウルフを」サーベルウルフはプライドが高いモンスターだ。滅多にテイムする事が出来ないはず。それについ最近まであの子達の世話は僕1人でやっていたはずだ。世話をしてない奴になつくのか? 少し興味がわくな。


「それで僕達は何をすれば良いでしょう?」


オランさんが真剣な顔になる。

「すまないが、リュックニーが終わったらビルルマに行って欲しい。この件は私とビルルマのギルドからの特別依頼だ。

それとリーンハルとルーニーも連れて行って欲しい。2人はまもなくCランクに昇格する。その後ギルドマスターからの特別依頼だすぐにBランク昇格も出来る。他国への遠征も可能になる。悪い話しじゃ無いだろう」


「それはかまいません。それで何をするつもりですか?」


「ラピスで行ったチーム戦だよ。そこにでて欲しい。日程はリュックニーの攻略後に調性する。ベリス ダシャナを誘き寄せる餌はギルドで用意する。どうもアルメニア王国に席を置く盗賊や評判の悪い冒険者等とのつながりも有るらしいからな。お前達ほど強く無いと頼め無い」


「ふ~。今回は何時もお世話になってるオランさんの頼みなので聞きます。次回は無いですからね。ギルドに紐付けされるのは特に嫌なので」不機嫌に伝える。


「わかっているよ。だがリオン達ほど強い冒険者が出てこない。仕方ないだろう」


「それはギルドの責任でしょう?僕達のせいにしないで下さい」


オランさんとの話しが終わりギルドをでる。リーンハルとルーニーは今日の予定が無いと言ったので、マリエラの街でデートを楽しむ。最近屋台ばかりのお店が出来たらしくお酒からスイーツまで楽しめるようでそこに行く事になった。屋台だけで40店も軒を連ねる。

適当なお店でエールを買い飲みながら色んなお店を見て回る。リーンハルは串焼きのお店がお気に入りらしく列に並んで色んな種類の串焼きを買って来てくれた。ルーニーがお魚の揚げ物を買ってきて椅子に座り話し込む。2人からこのところの様子を聞いたりしながら過ごし、夜は部屋に戻りさらに飲み直した。


かなり飲み過ぎたと思う。どうやってベットに入ったか覚えていない。左にリーンハルがいて右にルーニーがいて川の字で寝ていた。ふと、すみれと桃の条の事を思い出しが考えるのを止めてリーンハルとルーニーをそっと抱き寄せてまた寝てしまった。



朝起きた後、部屋を出て練習場にしている空き地に向かう。昨日の過多なの握りから初め少しづつ全体に馴染むように刀を降る。爪先から刀の切っ先までひとつになるように心掛ける。


練習が終わりリーンハルとルーニーと共に朝ごはんを食べていると。


「また朝から練習してきたんですか?リオンさんて呆れる位に練習の虫ですね」

ルーニーに言われた。


「僕は君達と違って才能がないからね。補うには練習しかないんだよ」

リーンハルとルーニーが呆れた顔をしている。


三人で朝食を食べ終えからリュックニーに戻る。

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