第 51話

試合会場の降り盛り上がりを見せる会場を後にした。部屋に戻る途中でハマイルさんと会い、会食する事になる。


ハマイルさんの店、リンゴの卵亭に入り個室に入る。リーンハルとルーニーはまだ興奮覚めやらぬといった状態だったがご飯を食べて落ち着きを取り戻した。

「リオンさん、あんなに大々的に良かったんですか?」ハマイルさんもライズのやり方に少し思う所が有ったらしい。


「ん~、ライズにはめられました」

そう苦笑いするしか無い状況だろう。


「しかし助かりました。実はリオンさんの名前を語る奴が商売の邪魔をするようになってしまいまして、ほとほと手を焼いてました」


「ハマイルさんの所までですか? かなり組織的な動きですね」


「いえいえ、リオンさん達が私のお店に顔を出してくれると助かります。それだけで宣伝になりますから」


「僕達もハマイルさんにはお世話になっています。そんな事で良ければお安い御用です。


ハマイルさん。僕とカーリ、アルネは少しの間リュックニーに行きます。どの位の時間が必要かわかりません。


その間、ルーニーとリーンハルにあの部屋を使わせてもらえますか? 僕達もラピスやマリエラにいる時は拠点として使いたいと思っています。お願い出来ますか?」


「大丈夫です、むしろこちらからお願いしたい位ですよ。Aランクのパーティーメンバーがお店の上に居るなんてこんな完璧は泥棒対策はありませんからね」


翌日、ライズの使者に付き添われ、ライズがいる宿に向かう。

ライズは優雅に紅茶を飲みくつろいでいた。部屋に入るとライズがアルネに抱きつく。アルネが小さい子供をあやすように頭を撫でる。何かいつもの光景になってる。


「所でリオン、まだアルネとカーリには手を付けていないだろうな?私の許可無しに子供等作らせ無いからな」ライズが真剣な顔で言う。

アルネがライズを見て「子供がませたこと言わないの。それに今そんな事してる場合じゃ無いんだから」

「そうそう。ライズの許可何か必要無いしね」カーリの言葉にライズが泣きそうな顔をする。


カーリがお菓子を取りライズに渡し「美味しいから食べよ」

そう言ってなだめる。ライズが機嫌を治し嬉しそうにアルネとカーリの間に挟まりお菓子を食べている。


何かいつも思うが違う世界に迷い込んだように見える。

執事長が部屋に来て馬車の準備が出来た所を伝える。

「ライズ、私も行かないと駄目? 馬車はしんどい」カーリが涙目になっいる。


「ライズ、カーリは僕が連れて行きます。何処に向かえばいいですか?」


「何だリオン、カーリを1人占めするきだな。私のカーリを取るな」ライズが甘えたようにカーリに抱きつく。


「ライズ、カーリを馬車に乗せるの結構大変なんだけど、それにライズ達の到着には会わせるように移動するので問題無いですよ」

僕がライズをなだめる。


「では1時間後にマリエラのギルドに来てくれ、オランは昨日のうちに戻っている。私もオランに会って昨日の報奨を渡す奴を決めんといけんからな」

「わかりました。では1時間後に」ライズに挨拶を済ませ僕とカーリだけ先に戻る。リーンハルとルーニーは今後ライズのお守りをお願いしないといけないし、少しライズの扱いに慣れてもらわないといけないしね。何て言い訳して丸投げして帰ってくる。


カーリを連れて空間移動魔法を使い神谷さんに会いに来る。神谷さんが忙しく作業をしているが僕達を見つけると手を止めてこっちに来た。

「やあ、カーリにリオン。戻ったのか?」


「神谷さんお久しぶりです。すみません仕事の邪魔をして」


「いや、そうでも無い。今は磨ぎの最中だが、1日2日で終わる仕事じゃ無いし丁度休もうと思っていた所だ」


「神谷さん、これを渡そうと思って持ってきました」

取り出したのはワンダーエイプの腕の骨を10本、アンデットスライムの魔石を2個。

「珍しい物が手にはいってのでお裾分けです」

神谷さんがワンダーエイプの骨を見て持ち上げる。軽いなと言って感心したかのような顔をしている。

「聞いていいかな、アンデットスライムの魔石はどのように使うのか知ってるか?」


「ワンダーエイプの骨を加工するときに魔石を火にくべて使います。そうすることで魔石の魔力が骨に移ります。ワンダーエイプの骨はただの炎では加工出来ないので魔石を使い加工します。魔石の数が少なくてすみません。ですが骨10本なら行けると昔から言われているので、すみません素人なのに聞きかじった情報で材料を集めて来てしまいました」


「いや、いつもありがとう。大切に使わせてもらうよ」

「ちょっと見てもらえるか? 前回もらったミノタウロスの角で作った単刀だ」


「いい出来だと思います。後は刃入れだけですね」


良かったと神谷さん安心した顔をしていた。その後少し神谷さんと世間話をした後、ギルドに向かう。


受付でオランさんをお願いすると執務室まで案内してくれた。

オランさんとライズ達の到着を待っていると別の冒険者が入ってきた。

「ちょうど良かった。リオン君、紹介するわ。マウンテンドラゴンの装備をあげる事になった冒険者よ」

「男性がアンプ ホリーで女性がアンナ メリー よ。2回戦で対戦した冒険者、覚えている?」


「昨日の事なので良く覚えています。初めましてリオン レース レインと言います。こちらが、パーティーメンバーのカーリです。他のメンバーは後程来たときにまた紹介します」そう言って2人と握手する。


「俺達と戦った子もパーティーのメンバーか?」


「リーンハルですか? あの子はいずれパーティーメンバーになる予定ですが今は教え子です。ラピスのギルドから預かっている子なので僕の元を卒業した後にメンバーに入る予定です」


「そうか、あの子のランクはAランクでは無いよな」


「そうですね。ギルドのランクで言うとDランクです、ただギルドの依頼をこなしていないなのでランクが低いだけです。今、リーンハルとルーニーの2人に勝てる人はこの国の中では少ないと思います」


「何か、いやになるな。俺達より若い奴に簡単に負けたなんて、まして冒険者になりたての若者に負けるなんてな」


「そうでも無いですよ、あの子達は強いです。年齢を気にしても仕方ありません。だが貴方達はあの子達に無い経験が有ります」


「ふん、なぐせめてもらわなくて結構だよ」


「そうでも無いよ、リオン自体がランクを気にしていないし、他国のダンジョンに入りたいからAランク取った位だしね」

「カーリが言う?」

「だってそうでしょう」

「否定しないけど」


「ちょっと待って。貴方達は他国のダンジョンに入りたいからランクをあげたの」

それまで黙っていたアンナが声を上げる。


「はい。僕は基本的にギルドのランクに興味がありません。お金が欲しいだけならDランクもあれば十分です。

プライドや自尊心で冒険者をやるくらいなら、はなからやらない方がいい。僕はそう考えています。命をかける仕事です。自分の信念で動く事が大切だと思います」


「つまりそれがギルドのランクに従わないと言うこと?」アンナから再度突っ込みが入る。

「ハッキリと言います。僕達のパーティーは純粋な人族がいません。なので各々のルールで物事を考えています。もちろんリーンハルとルーニーは純粋な人族です。ですが僕達は生まれが違います。育ちが違います。成人して世の中を知るまでの常識が違います。その全てが何故、人族の常識に合わせる必要が有るのでしょうか? だた、僕達も生きる為にある程度人族のルールを守って生活しています。それは僕達の常識を曲げて行っています。そ…」


「待って!!!」オランさんの声が響く。

「待って! リオン。それ以上は止めて。私も貴方達の事は知っている。それを理由にしないことも知っている。悪かった、君達がどう生きているか、その気持ちを考えずに今回呼んでしまった事を謝罪する」


「オランさん。僕こそ言い過ぎました。貴女の気持ちを考えずにすみませんでした。」


ガチャっドアが急に開く。ライズが険しい顔ではいって来る。

「アンプ ホリー、アンナ メリー今日はすまなかったな。わざわざ呼び出して。報奨についてだが、悪いがお前らにはやれん」

「さっきの話しを外で聞かせてもらった。何故この国の冒険者は質が悪いか良くわかった。私もオランも元々Aランク冒険者だ。国外の常識についてもいささか覚えが有る、それゆえ冒険者のレベルがある程度上がるまで国外に出さない措置を取って来た。それが失敗だったのであろう。はっきりと言う。

現在のオーヂエンのAランクは他国のCランクと変わらん。勿論リオン達を除いてだ」


アンナが顔を赤らめ「ふざけた事を言わないで下さい。あのスカルプ ダシャナですらCランクですか、確かにドラゴンに逃げられました。それでもドラゴンがいた時ですらCランクだと言うのですか?

私達はあのテイマーに憧れて冒険者になりここまでやってきました。貴女はその全てを否定するおつもりですか? 貴女にそこまでの権限がおありですか?」


ライズが決意した顔で言う

「はっきりと言おう。スカルプ ダシャナはDランク以下の実力だ。ドラゴンは有る契約に基づきスカルプと行動を共にしていた。その契約を反古にした後、スカルプに残ったのは国外追放だけだった」


アンプが信じられないと体を震わせる「ではドラゴンは誰の言う事を聞くのですか?あのドラゴンを動かす事が出来る奴等この国いはいないでしょう。その事を何故黙っているのです。我々国民をばかにして貴族達が楽しむ為の存在では無いでしょう」


「ドラゴンなら我々と協力関係を結んでくれている。スカルプの存在が無い方がより話しが早く進んでいる。ドラゴンと我々を繋げてくれた者は別にいるし、その者はスカルプ等が足元にも及ばない力がある。

そもそもドラゴンを頼らずとも自分の力で生きる力がある。つまり国を頼らずともいきれる力が有るのが冒険者だ。

冒険者であるお前らが自らの教示を持たない事に私は驚く。お前達もスカルプと同じか?」ライズが本音を話す。


「ライズ様は何をよまい言を言われる。

ドラゴンと繋がっているなど誰が信じましょうか? それなら証拠を見せて頂きたい。それ程の人物がいるのなら私達に逢わせてもらいたい」アンプが勝ち誇ったように良い放った。


ライズがこっちを見る。仕方ない、話しを終わらせよう。

「証拠が欲しいなら見せますよ」

僕の言葉にアンプとアンナが振り向く。


「僕の旧性はリオン ダショナ。僕がドラゴンとタイナー サバス イーヂエン殿下を繋げました。証拠が欲しいなら今すぐにでもお見せ出来ますがどうしますか?」


アンプが驚きを隠せずに震えている、やはり信じられないのだろう。

「そんな事を我々に言ってどうする。もし本当なら、我々が人に話すとどうなる、噂はすぐに広がるぞ」


「それなら心配要りません。誰も信じ無いでしょう。僕達が何も言わないのはそれがわかっているからです、折角なのでお連れしますよ。その上で話したければどうぞ」


僕は1歩前に出て2人の様子を伺う。そしてとどめをさす。

「どうします。いった後は自力で帰って来て下さいね、帰りまでお守りするつもりはありませんからね」


アンナが強気に言う「ふざけるな!お前の仲間がそんな事されたらお前はどうるんだ?」


「僕は困りません。僕の仲間は帰って来るのに何の心配も無い位、実力があります。

それで行くのですか?行かないのですか?」


アンナが強気に言い放った。

「私は行く」

リーンハルとルーニーを見ながら言い切る。

「こんな子供に出来て私に出来ないはずは無い!!!!」

アンナは物凄く興奮している。


アンプはドラゴンが怖いのだろう。青い顔です行かないと決めた。

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