第29話

気が付くとテントのような所にいた。ラーネの体の矢を取り出した後、ドラゴン達がわざわざ建ててくれたらしい。


アルネとカーリに支えられて外に出る。ラーネとマーマン、カードバハルがいる。


「リオン。今回は我が娘を助けてくれて有り難う。またこれで1つ貸しが出来たな」


「カード ハバル、気にしなくて良いよ。それより呪いのついた矢だ、放ったのは人か?」


「最近、我が娘を捕らえ自らの国に連れて行こうとする輩が出てきた。

和義と言われる国の者達だ、奴らは四聖獣なるもの信仰しているらしく、そのうちの1つ青龍が我が娘ラーネだと言って来た。

勿論そんな戯れ言に付き合うつもりはない。 そうしたところ無理やり連れて行こうとして我らと争いになった。

当然われらが負けることは無い、そのうちの和義の国の者が呪いの矢を娘に打ち付け亡き者としようとした」


「カード ハバル、僕達人間が勝手な思い込みで迷惑をかけた」


「リオン。お前が謝る事は無い。お前は我々の仲間だと言うことをギル様を始めみんな知っている」


「和義の国の者達はもういないのかい?」


「いや、今夜にもやって来るはずだ。我が娘の力が弱まるのを待って連れていくつもりだ」


「なら僕達も共に戦う。アルネ、カーリ準備は出来てるかな?」


「問題無いよ、リオンあんたは寝てな。そんな連中私達だけで大丈夫だよ。何よりリオンにこんな辛い想いをさせた事を後悔してもらう」いつになくアルネが怒りを現にしている。


アルネもカーリも暴走しないと嬉しいけど。


夜になり暗くなって来る。

辺りが不穏な空気入り包まれる。カード ハバルとマーマン ハバルが前に真ん中にラーネ ハバルがいる。


僕はラーネの後ろに陣取りラーネの左右をアルネとカーリが固めた。


後ろからラーネを狙って矢が放たれた。シュッ ギャン、ドン。パン。


後ろから放たれた矢を刀で弾き、もう1本はそれて地面に刺さった。最後の1本は避けきれず僕の左肩に刺さってしまった。


呪いの矢だ。最後の力を振り絞り広範囲に渡り威圧をかける。かなりの数の人間がここに集まったのが分かる。


「アルネ、カーリ悪いけど頑張ってもらってもいいかな?まもなく威圧もかけれなくなると思う」


アルネが精霊魔法の詠唱を始める

「黒き精霊達よ、我が声を聞き、我が声に従え。血の命約に沿って我が力となれ」


カーリが四つんばいになり「バーサーカーモード」と唱える。

身体強化を最大限にした状態だろう。体から覇気を放ちドラゴン達ですらその姿に恐れをなしていた。


「リオン私達はOKよ、何時までいけるわ」


その言葉を聞いて威圧を止める。


「カーリ、暴走するなよ」


「お前もなアルネ」


アルネが最後の詠唱を唱える


「黒き精霊よ全てを捕らえよ、黒の鎖」


地面から黒い鎖が飛び出し姿が見えない者達を1人残さず捕らえる。その鎖の速さに皆ついて行けず僕達以外の人間がみんな捕らえられた。


その中に一際大きな個体があった。


隠匿魔法で姿を消していたが鎖は逃さなかった。


カーリは四つんばいのまま崖を駆け上がり鎖に捕らわれた者達を瞬時に殺して行く。皆首を跳ねられる。死んだ者が順番に黒い鎖から解放されしたに落ちてきた。


領主と思われる男と大きな個体を残しカーリが戻る。


大きな個体の隠匿魔法が取れると白い大蛇がいる。大蛇は薬で操られているのかふらふらと動いているだけだった。


「君は何故ここに来た?」大蛇に話しかける。


「人よ、私を殺してくれ」 大蛇はそれしか言わない。

刀を出し右手だけで大蛇の首を切って倒す。 大蛇の口から幻覚草の臭いがした。


「カード ハバル。この人間は僕に預けてもらえるか? こいつは王につきだし正式に和義の国に抗議する。そうすれば君たちに襲いかかる奴が減るだろう」


「リオンに任せよう。それよりリオンの治療が先だマーマン、お前はアメールに行きランバートと司祭を連れてこい。

リオンに呪いの矢が刺さった事を伝えて連れてこい。

ラーネお前は首都に向かい、タイナーとモンナと会え、この現状を伝え兵士を送るように言え。ギル様のお言葉だ。しっかり伝えろ」


「カード ハバル。ラーネは王とあった事があるのか?」


「心配無い。2回程あっている」


僕達が領主と思われる男の元に行く。アルネの魔法により口にも鎖が入り舌を噛めないように押さえられている。 僕が刀を構え男の首に当てる。


「これから聞く事に正直に答えろ殺しはしないが、痛い思いをする事になる。 お前は国王命令で国交の無いこの国に来たのか?」


男がうなずく。アルネが耳元で嘘だと言う。


アルネはある程度人の嘘を見抜く能力があるらしい。


「お前は宗教の信仰の為にここに来たのか?」 男が首を横にふる。アルネが嘘だと言う。男がアルネを睨む。


「最後だ。お前は仲間全員で今日来てのか?」 男が首を横にふる。アルネは嘘だと言う。


僕は刀を男の顔に向け真横に切り裂いた。目を潰し、目が見えないようにした。男の血から幻覚草の臭いがする。


どうやら儀式等で通常のようにしようしているらしい。やな臭いだ。


マーマンがランバートさんと神父のマシュ―さんを連れてやって来た。


マシューさんの神聖魔法により呪いの矢を取り出しヒールをかけて貰った。

ランバートさんが罪人を捕らえる為の魔道具を使い男を取り押さえる。マーマンの背中に乗りみんな揃ってアメールのギルドまで来た。


ギルドに入るとサンリューチュさんとリーンハル、ルーニーが出てきた。ドラゴンを間近で見たリーンハルとルーニーが震えて座り込んでしまった。


マーマンにお礼を伝える。マーマンが人の姿になる。

サンリューチュさんとランバートさんが捕まえた男を牢に隔離した。


ギルドにある牢屋はあらゆる魔法も効かない特殊構造になっている上に特別の鍵が幾つもある。

流石にそんな所にまで仲間も来ないだろう。


アルネとカーリに支えられギルドの食堂に来て座る。


マシューさんからは最低3週間は戦いはしないことを言われおとなしくするこになる。牢屋から戻ったランバートさんが来て向かいに座る。


「なあリオン、リーンハルとルーニーをどうやって指導している?」


「何か駄目なことでもありましたか?」

何か心配になってしまう。


「駄目なものか。逆だよ。状況判断が早い、駄目だと思ったら素直に引く。これが出来る冒険者は必ず成長する。


まして最後まで生き残る事が一番だ。それは恥ずかしい事じゃない、それが出来て初めて冒険者になるんだ。


驚いたのはまだある。弱いモンスターも丁寧に確実に倒す。やたら剣を振り回しておちゃらけたり、遊んだりしない。


油断せずに止めまで刺す。 普通このくらいのランクだといい気になって無茶したり。言うこと聞かなかったりするもんだ、どうやったらこの2人みたいに育つんだ? 何か秘訣がおれば教えてくれよ」


「何も無いですよ、有るとするとこの2人が素直で真面目なんだと思います。


それよりランバートさん僕は3週間程戦えないのでその間ここでお世話になります。

よろしくお願いします」


ルーニーが喜んでいる。サンリューチュさんから魔法を教えてもらう約束をしていたそうでまだ残れると聞いてよろんでいた。


カード ハバルとマーマン ハバルがギルドに入って来た。


「ランバート殿、先程は無理を言ってすまかった。お陰で助かったよ」


「いいって事よ。それより今回俺達が動けなくて悪かった。立場上どうにも出来なくな」 ランバートさんが頭を下げる。


「ランバート殿、お互い様だよ。私もなかなか気兼ねなくここには来れない。私も力になれない事も有るだろう」


カチャっと音がしてドアが開く。一瞬緊張感が走る。ラーネ ハバルが入って来てカード ハバルの前に来る。


「お父様、タイナー様とお会い出来ました。一両日中には族を引き取りに来ると返答です」


「わかったご苦労、お前も休みなさい」


「ランバート殿、これは私の娘、ラーネだ。マーマンと元にここにもお邪魔するだろう。仲良くしてやってくれ」


ラーネが立ち上がり「初めまして、ラーネ ハバルと申します。

ランバート様、奥様よろしくお願いします」 サンリューチュさんが恥ずかしいそうにもじもじしていた。


「リオン、実はサンリューチュと結婚する事にしたんだ。これからはここに落ち着いて生活していこうと思っている。

リオンも、カード バハルも何かあったらまた協力してくれるか?」


「喜んで協力します」


「私もだランバート殿おめでとう」


その後は2人の結婚もあり盛り上がりった。首都を追い出されたあの時、僕はたまたま、アメールに来た。

それも迷子になってここに来た、これが運命何だろうか?本当にいい人と出会えた。心からそう思う。

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