第30話

アメールの村でリーンハルとルーニーに付き添いギルドの依頼をこなす。

バウド猪はすでに1人でも倒せるようになっている。2人の成長の早さに驚きを覚えてしまった。


ルーニーは魔法にたいし苦手意識があったが魔力コントロールを毎日行っているのが良く分かる。身体強化のかけ方が早く、詠唱も破棄している、またモンスターによっては身体強化を倍がけしたり工夫が見られる。


リーンハルは魔力が増してきているようで初期魔法のアイスボールだけでホックスエアーを倒したり魔法を剣に乗せてモンスターを切ったりとかなりの成長だ。これならDランク昇格も早いだろう。


「リーンハルとルーニーはレベルはどの位になった」 ルーニーが教えてくれる。


「私はレベル10でリーンハルがレベル11です」


「早いね。そんなに上がったの?」 ラピスを出る時はレベル4だっのに。


「ここはモンスターも多いし冒険者の数も少ないからレベルをあげるのにはちょうどいいです」


「はは、じゃあ戻ったらダンジョンは10階層までは2人を連れて行って問題なさそうだね。やっぱりここに連れて来て良かったよ」


ここの事を話すと経験の浅い冒険者がどっと来そうだな。ここに人が増えればギルドも繁盛するだろうし、ある程度なら広がってもいいかな。


依頼をこなしギルドに戻る。カーリが何かイライラしながら文句を言っている。カーリの周りには若いドラゴン達がいる。

リーンハルがカーリに声をかけた。


「リーンハルお帰り、いつもの事だよ」と言って中に入る。僕が最後にギルドに入るとサンリューチュさんに捕まる。


「リオン、私の目を見て正直に答えて下さい。貴方は、アルネとカーリの事をどう思ってるの?」


「大切なパートナーです」


「それは公私共に?」


「はい?」公私共にってどういう意味


「カードさん聞きましたか?アルネもカーリも困ってます。これ以上は2人に言い寄らせないで下さいね」


「わかりました。約束しましょう。リオンすまなかったね!君の気持ちを考えずに」 カード ハバルがそう言うと出て行った。


リーンハルとルーニーが嬉しそうにアルネとカーリに「良かったね」と言って抱き合っている。


僕は何をしたのでしょうか? 夜部屋にいるとアルネとカーリが入って来た。

アルネとカーリが声揃え「リオン、これこらよろしくお願いします」

と挨拶された。で、良くわからずに僕も「よろしくお願いします」と頭を下げる。


アルネが抱きついて来た。


アルネってこんな人だっけ。で、2人の話しで段々と話しの流れがわかってきた。 僕は2人と交際する事を宣言した事に気がついた。


まあ、嫌いじゃないから良いか。2人共優しいし正直好きだし。


でも僕の方が先に亡くなるのに良いのかな、それだけが僕の中では心配な出来事だ。


翌日フルと共に外で魔法の練習をしていると、空にワイバーンの集団が現れる。ランバートさんとアルネ、ルーニーが外に飛び出して来た。


一匹のワイバーンが降りて来る。ワイバーンの背中から若い女性が降りてきた。


その姿を見て膝をつき挨拶をする 「お久し振りです。聖騎士長  アルム ファン リウム公爵様、お会い出来て嬉しく思います。まさか隊長自らお越しになるとは思ってもいませんでした」


アルム ファン リウムは僕より7歳年上の25才。

見た目は白銀の髪に戦士とは思えない華奢な体型、160cmで細身な体でありながら、幼い頃より剣と魔闘術の才能に恵まれ、天才の名を欲しいままにしてきた。


細身な体からは思いもつかない強さを発揮する。18才の時、最年少で聖騎士となり20才の時には、最年少で聖騎士長になった希代の天才である。


「リオン~ 堅苦しい挨拶は抜きだ。共に風呂に入った仲だろう」


「アルム様、誤解を招く言い方は止めて下さい。お互いに子供の時分の事です」


「もー、相変わらず堅苦しい事を言って姉を困らせる。でもそんな所も好きだぞ」 アルムが平伏している僕に抱き付き背中をバンバンと叩く。


「リオン、元気にしてたか?何で姉を訪ねて来ない。何時でも私はお前の見方だぞ。

も~、いっつもそうやって自分だけで色々解決しようとして。お前の姉として悲しいぞ」


ランバートさんが困惑しながら「アルムさんで良いのかな? 俺はギルドマスターのランバートだ。本日は捕縛した族の引き渡しで良いのか?」


「お前がランバートか? タイナーの代わりに来た、アルム ファン リウムだ。飛行隊をここに降ろす、許可を貰えるか?」


「あ、ああ」ランバートさんが困惑している。いやアルネやルーニーも困惑しきっている。


「ランバートととやら、族の元に案内しろ」アルムが不機嫌に告げると首都を警備する聖騎士隊がギルドに入って行った。


「リオン? この方はリオンのお姉さんなの?」アルネが近づいてきて聞く。


「キャ! お姉さんなんて、この子可愛い。所でリオン?彼女出来たんだって? 姉に紹介しなさい」アルムがグイグイと来る。


「姉さん、そんな話しどこからきいたの?」本当に情報網がすごすぎる。


「私の情報網を甘く見たら駄目よリオン。これでも王都を守護する聖騎士長ですからね。私の情報網はこの国の全てに張り巡らされいるわ」アルムがドヤ顔している。


ドヤドヤと聖騎士隊が出てきて「隊長、我々は族を連れて先に戻ります。どうぞごゆっくり」そう頭を下げて飛んで行った。


サンリューチュさんが出て来てこっちを見る。 「リオン君。出来ればお姉さんを皆に紹介してくれと嬉しいかな」

サンリューチュさんの渾身の笑顔がかえって怖い。


「アルム公爵。中にいきましょう」そう声をかける。


「やだ。お姉さんって言ってくれないと私ここらから動かない」


ハァ。始まった。アルムのお姉さん病。毎度思うけどこれどうにかならないのかな?

「姉さん、ここでは話しも出来ません中に入りましょう」


アルムが両手を前に出し「ん」と言う。 仕方なくアルムをおんぶしする。アルムの昔はなかった胸の膨らみに少しドキッとした。


昔はこんなこと考えずに会えたのに少しの寂しさを覚える。


ギルドの中に入り椅子に座らせる。アルムの機嫌が治ったようで少しほっとした。


ランバートさんとサンリューチュさんが挨拶する。

「アルム公爵、本日は族の引き取り有り難うございます。私はアメールのギルドマスターのランバート ルイ レイ。こちらが妻のサンリューチュと申します。よろしくお願いします」


「よい、そんなかしこまった挨拶は不要だ。モンナからも2人の事は聞いている。それより、弟のリオンが世話になった。姉として挨拶が遅れた。申し訳ない」 アルムが頭を下げる。


カーリが来て小声でせがむ「リオン説明して」


「皆、ごめんね。驚かせて。アルム ファン リウム公爵は僕の従姉で、元婚約者です。僕の父だった人が一方的に婚約を破棄しましたが。ただ昔から仲が良く未だに姉弟のように接してくれています」


その言葉に皆一様に驚いている。


僕のお祖父さんは一代伯爵を賜った豪傑で、かの剣聖 レース レインのパーティーメンバーでもあった。


その時知り合ったのがアルムの父方の祖父だ。僕のお祖父さんとアルムの祖父は非常に仲が良く祖父同士が生きている時に僕とアルムの婚約が成立したが、父 スカルプ ダシャナが一方的に婚約を破棄、それが元でお祖父さんから勘当されてしまった。


現国王のタイナ-が恩赦で拾ってくれて何とか事なきを得た。


アルムの母はスカルプ ダシャナの姉で、アルムとは子供のころは良く一緒に遊んだ仲だ。 未だに僕も事を弟として可愛がってくれる稀有な人だ。


「私は今でもリオンの婚約者だと思っているわ。リオンは私の全てだもの」


「姉さん、それは言ってはいけない事ですよ、それに僕は楽しくやっています」


アルムが寂しそうに僕に抱き付きついた。アルムは20才を過ぎている。貴族の世界においては行き遅れと後ろ指を刺され苦しい思いをしながら結婚を拒んでいる。


そうアルムは子供の頃、有ることで子供の出来ない体になってしまった。

アルムが子供の時、有る出来事て、生死をさ迷う出来事がおきる。

いかに武術の天才と言えどかなわない物がる。アルムは生死の境を何度も往復する。その後、体調は良くなったものの子供の出来ない体となってしまった。


スカルプ ダシャナはその話しを聞くや否や婚約を破棄したのだ。


お祖父さんはアルムの体の事を知った上で婚約を継続させようとしていた。

その結果、スカルプ ダシャナは勘当。あれ程望んだ爵位拝命を逃した原因の1つだった。


アルムの父は祖父より公爵を受け継ぐ。だが元々体が弱かったアルムの父はアルムの成人を待ってアルムに爵位を譲り今は隠居生活をしている。


「リオン、いつもごめんね。姉さんしっかりしないとね。貴族何だから好きな人と結ばれる事は決して無いからね」

アルムの悲しそうな顔を見るとやりきれなくなる。


アルムを向いてはっきりとした口調で伝える。「姉さん、僕のパートナーを紹介するね。アルネ リカリオとカーリ ベルトルトです」

アルネとカーリが緊張ぎみに挨拶をした。


「ホォ、私のリオンを射止めたのは貴女達ね」アルムが立ち上がり2人を真っ直ぐに見る。


「リオンは幼少期から人がしなくてもよい苦労をしてきました。リオンの姉としてお願いがあります。

どうかリオンに幸せを教えて下さい。この子は人を信用できなくなる出来事に沢山会いました。その為か心を閉ざしてしまい、首都にいた時の仲間はタイナ-とモンナ、後は私位の者です。

そんなこの子に好きな人が出来たと伺い物凄く喜びました。2人共、どうかリオンをよろしくお願いします」 そう言って頭を下げる。


「「よろしくお願いします」」


一呼吸おいてアルネが 「私達もお姉さんと呼んでいいですか?」


「もちろんよ。首都に来ることが合ったら何時でもいらっしゃい。貴女達2人はもう私の家族です」


「「有り難うございます」」 アルネとカーリが喜んで泣いている。


ランバートさんが「アルム公爵、良ければ本日はこちらでお休みになられてはどうでしょう。

リオンのお陰で色々落ち着きを取り戻しています。折角なので少しリオンとゆっくりされてはいかがですか?」


アルムが立ち上がりランバートさんを見る。「ランバート、有り難う。人の心を無くしたリオンが貴方を信用している理由がわかる気がします。

でも、公爵って以外と忙しいのよ。今日は帰るわ。時間のある時にこっそり来るから、リオンの話しを教えてね」


姉さんがアルネとカーリの前に来て

「アルネ、カーリ。これからもリオンの事をお願いね、この子自分勝手で融通きかない所が有るからしっかり手綱を持って振り落とされないようにね」 カーリとアルネが笑いながらうなずく。


「姉さん。悪口は、聞こえない所でしてもらえると嬉しいな」


アルムが「悪口じゃ無いわよ。今日は姉として帰ってあげる。でも私も諦めた訳じゃないからね」


「うん。いつもの姉さんで良かった」


アルムがハグしてくる。「いつまでも1人じゃ無いんだからあの娘達を大切にね、それと2人と別れたら私の所に来なさい。私の隣はいつでも空席よ」


「じゃあね」アルムが笑顔でギルドを出ていく。


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