Day5 送り火(お題・線香花火)
ぽん! ぽぽぽん!!
……そういえば、三年前、ここで花火を見ていて座長に出会ったのでした……。
防火、消火設備で囲った一角の本物の花火が楽しめる花火広場。その中で親子連れが手持ち花火で遊んでいるのを、千代はぼんやりと見ていた。
あのとき埠頭には子供の頃に家族で何度か遊びに行った覚えのある船が停泊していた。ふらりと桟橋を渡って入り、誘われるように遊具を巡って、気が付いたら、ここで花火を見ていた。
隣に厳つい男が心配げな顔でついていて『お前もやるか?』と線香花火をくれたのだ。
「打ち上げ花火っていうのはな、元は飢饉で死んだ人間の魂を供養し、送る為のものだったんだ」
「……座長……」
あのときと同じように、いつの間にいたのか、人に化けた虎丸が線香花火を渡してくる。
「送り火には少し早いがやるか?」
「はい」
一本手に取る。周囲に気づかれないように指先で火をつけてくれた。
オレンジの玉が大きくなり、ぱちぱちと金色の火花が散る。やがて、火花が消え、玉がぶるりと揺れて落ちる。
あのとき、この落ちた玉を見て、何かが切れたように千代は泣いた。
「……座長、後二本、父と兄の分も貰えますか?」
「おうよ」
また一本、差し出され、火がつく。自分の肩を抱く、彼の腕の暖かさを感じながら、千代はじっと、はかない火の玉を見詰め続けていた。
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