第326話 グランと7人の魔王 5

エメラルドに魔王の座を譲ったグランは、その連絡の為、グランの世界にいる他の魔王の元へ訪れていた。オーキン、ラミクイ、スケキン、ハピクイと連絡を終え、ゴブキンの元へと向かったのだが、ゴブキンはグラン達をゴブリン達の苗床にしようと襲い掛かってきたのだった。


「グランとエメラルドは、周りのゴブリン達を頼む。グランはエメラルドを守ってやってくれ。俺はゴブキンを倒す。」


「わかったのじゃ。こっちはまかせるのじゃ。マスターなら大丈夫じゃと思うが、アヤツも魔王じゃ。気を付けるのじゃ。」


「クリフ様・・・お気をつけて。」


「それはこっちのセリフだよ。じゃあお互いがんばるって事で。」


クリフはゴブキンと対峙し、グランとエメラルドは部屋を取り囲むゴブリン達を一掃しに行った。


「げへへまずはお前からか。グランは初めにやれないのは残念だが、お前もかなりの極上だ。グランは後のお楽しみに取っておくとしようか。」


「残念だけどグランには指一本触れさせないよ。魔王が死ねばバランスが崩れるかもしれないけど、グランに手を出そうとしたんだ。死んでも文句は言うなよ。」


「げへへ。威勢の良い女だな。魔王の俺様を殺すだって?ぎゃはははは。お前はまだ俺様の事がわかってないみたいだな。大人しくしてれば優しくしてやるぞ?まあ抵抗する相手に殺せって言われながらやるのも一興だがな。」


「お前とは、話をするのも無駄だな。来いラン!」


クリフは、久しぶりに神剣のデュランダルを取り出した。


(やっぱり魔王と言えば聖剣だよね。まあ神剣だけど・・・。魔族とか魔王特攻があるはずだし、効果はあるだろ。まあクッコロが見れないのは残念だけど、知ってる人のクッコロは見たくないからな。)


「な!?その光は!?」


「お前でもわかるみたいだな。だがもう遅い。お前の人生は今日までだ。ゴブリンに生まれた事を後悔して死ぬんだな。行くぞラン!」


『久しぶりにマスターと戦えるんですね。それにゴブリンですか・・・女の敵ですね。欠片も残らない様に消滅させましょう。』


クリフは、ランを握りしめてゴブキンへと向かって行く。ゴブキンも玉座に立てかけている大剣を握り、クリフの攻撃を防ぐ。


武器の性能の差がありすぎるのか、ゴブキンの持つ大剣は折れないまでも、クリフの攻撃を受ける度に欠けていく。


「くそっ!!なんなんだお前は!?」


「言ってなかったな。俺はグランの旦那だ。エメラルドが言うには俺は大魔王らしいぞ。」


「大魔王!?どういう事だ?おいお前ら。こっちに加勢しろ!」


ゴブキンがクリフの攻撃を受けながら周りに声を掛ける。しかし、ゴブキンの声を聞いて加勢するものはいなかった。なぜなら、すでにグランとエメラルドによって、部屋の中にいたゴブリン達は倒されていたからだ。


「ゴブキンよ。自慢の仲間達はすでにおらぬぞ。後はお主がマスターに倒されれば全て終わりじゃ。」


「なっ・・・」


「そういう事だ。あきらめるんだな。」


「ま、まて。俺を殺してもいいのか?俺は魔王だぞ?この世界の七大魔王の一人だぞ?俺を殺せば他の魔王が黙ってないぞ?それでもいいのか?」


「ああ。七大魔王が六大魔王になっても大丈夫さ。後の事はエメラルドがなんとかするはずだ。」


そう言ってクリフは、ランの力を開放してゴブキンを斬りつけた。斬りつけらたゴブキンは、上半身と下半身が分かれてそれぞれが灰となって消えて行った。


「ふ~。これで脅威は去ったな。」


「うむ。まあマスターからすれば脅威でもなかった気はするがな。後の事はエメラルドに任せばうまくやってくれるじゃろう。」


「姉様!?簡単に言いますけど、大事なんですよ。魔王が一人いなくなったんですから・・・せっかく連絡に言ったのに、又この事を伝えにいかないといけないし・・・」


(エメラルド・・・ゴメンとしか言えない。やっぱりゴブリンは魔王になってもゴブリンだったし、世界全体からみたらきっとこれでよかったはずだ。)


ゴブリン族の魔王が死んで、7人の魔王が6人になった事に世界が衝撃を受けるかと思われたが、事態は非常にスムーズに収束した。


ゴブキンを倒した翌日、一番面倒かと思っていたドラキンの元へ向かったクリフ達は、そこで魔王の座をエメラルドに渡した事と、ゴブキンを倒した事を伝えた。するとドラキンはクリフに興味を示し、クリフとの模擬戦が始まったのだ。


ドラキンの人化した姿は、筋肉モリモリマッチョの好青年で、クリフと模擬戦をすると、すぐにクリフにかなわないと思ったのか降参した。その後は、拳を交わせば人となりがわかるとでも言うのか、クリフとドラキンは意気投合した。


ゴブキンがいなくなっても問題がないどころか、いない方がうまくまとまるみたいで、他の魔王への伝達と地上への伝達も全てドラキンがしてくれることになった。その代わりにクリフは、時々ドラキンの元へ行き模擬戦をする約束をしていた。そんな一大イベントを、ずるいの一声でグランも参加する事になったのだが、終始なごやかムードでドラキンへの報告は終わったのだった。


そして・・・


「皆の者、我はマスターの世界で暮らすが、お主達もいつでも転移魔法陣でこれるのじゃ。時々は我のいる世界に遊びに来ると良い。我も又来るのでな。」


「姉様・・・寂しいですが、新しい魔王として仲間達を守っていきます。」


「頼んだぞエメラルド。」


「はい。クリフ様も・・・姉様をお願いします。」


「ああ。まかせてよ。」


スライム城に転移魔法陣を設置したクリフとグランは、別れの挨拶をした後、クリフの転移魔法でエターレインへと戻るのだった。





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