第272話 エターレイン領に人を集めよう
結婚式まで残り1カ月しかない日程の中、大使館設立の翌日からクリフ達は別々に分かれてエターレイン領に人を集める為に動き回っていた。
クリフは実家のボールド領で、父と兄に状況を伝えていた。
「なるほどな。たしかにそれはいい考えだな。俺の所は魔の森と隣接してる事もあって、親を亡くした子供とかは孤児院に多くいるし、王都と比べれば少ないだろうが、スラムだってある。奴隷もまあいるにはいるが・・・」
「奴隷はダメなんですか?」
「いやダメという訳じゃねぇ。だけど買うならちゃんと見極めないとダメだ。特に犯罪奴隷はな。」
(なるほど、確かに父さんの言うとおりだな。契約で縛るから大丈夫だと思ってたけど、元々が犯罪者なら何をするかわからないもんな。借金奴隷、戦争奴隷を中心に集めるのがいいか。)
「それとただ闇雲に集めるのはダメだ。どういった人材が必要なのかを先に考えないといけない。そうだな~クリフの領地の事を考えると、屋敷を守る騎士、孤児院を運営する人材、学校なんかの教育関係には奴隷を使ってもいいかもな。奴隷なら裏切る事がない。」
「なるほど。」
「それと孤児院に入ってる子供達はそれなりにうまくやれている。どっちかといえばスラムにいる子供たちを連れていく方がいいだろうな。その点は昔からずっと問題になってるからな。」
(たしかに孤児院にすでに入ってる子供なら、友達とか生活の基盤ができてるもんな。無理に連れてくる事はないか。どっちかと言うと生活に困ってる人を集めるって感じだな。教育さえちゃんとできれば将来的に領にとってメリットのある人材になる。その為の教育者は・・・ユーナとかジャンヌ、ソフィアあたりがベストかな。)
「そういえばクリフ。大使館が完成したんだってな。サラがこことも繋いでほしいって言ってたぞ。」
「あっ・・・」
(たしかに・・・主要都市は繋いだけど、自分の家の事忘れてた。これは母さんに怒られるヤツだな。)
「それは完全に忘れてたな。」
「はい。エターレインに帰ったら早急に設置します。」
「それがいいだろう。サラは怒ると怖いからな。」
その後も人材確保に関する相談を行い、クリフはエターレインへと戻った。屋敷に戻ると、クリフが一番最後だったようで、セリーヌ達も全員が戻ってきていた。
話を聞くと、どうやら全員が同じような話をされたみたいだった。全員の話をまとめて、方向性を決め、集める人材と組織が決定した。
クリフ・・・当主
セリーヌ・・・当主代行にて政務を担当
ユーナ・・・教会・孤児院や教育担当
ナリア・・・ダンジョン担当
ジャンヌ・・・ユーナの補佐
ソフィア・・・ユーナの補佐
グラン・・・軍事・警備担当
となった。
まだまだ、人材が不足してる中で、それぞれが信頼できる人に声を掛けたり、要所を任せることができる奴隷を購入したりと、1か月は今までの倍以上は忙しくなっていた。
そして・・・
無事に結婚式を迎えるのだった。
ちなみに、サラサとライシャは商会を立ち上げる事になった。どこも扱っていない世界樹の素材を扱う唯一の商会だ。そして、その商会が後に世界で最も有名になるレイン商会なのだが、この時はまだ誰も知らなかった。そして、結婚式当日時点では、まだ商会も立ち上がっていない。
立ち上げの経緯はサラサとライシャがセリーヌを訪ねる所から始まる。
「セリーヌさん。私達に商売を教えてくれませんか?」
「どうしたの急に?」
「ライシャと話して考えたんです。私達がクリフの為に何ができるだろうって。セリーヌさん達はクリフの為に、領地を盛り上げているのに、私達だけ何もしてないので。」
「それでサラサと話したんだけど、私達で商会を作ってエターレイン領を中心に盛り上げようと思ったの。ここなら転移魔方陣があるから各都市への移動も簡単だし、世界樹の素材はエターレイン領の特産でしょ。誰かがやる前に私達が中心となって進めたいの。」
「なるほど・・・それは確かに魅力的ですね。ですが・・・サラサさんとライシャさんにそれができるんですか?」
「「うっ・・・」」
「成功すればクリフ様やエターレイン領は今まで以上に発展します。ですが、商会を立ち上げるとなると身につけなければいけない事は非常に多くあります。サラサさんもライシャさんも商売に関しては素人でしょう?」
「必死で勉強する。セリーヌさん達を見て思ったの。このままじゃダメだって。クリフの隣に立つ為にも私たちもがんばらなきゃって。」
「私も。セリーヌさん達には負けない。必死で勉強する。クリフの為にがんばりたいの。だからお願い。私達に協力して。」
(ふふふ。サラサさんもライシャさんもこれなら安心ですね。クリフさんから与えられた大使館でぬくぬくと仕事をするようなら、そのうち追い出そうと思ってましたが、彼女らも本当にクリフ様の事が好きなんですね。ハーレムが増えるのは問題かもしれませんが、がんばろうとする彼女達を無碍にはできませんね。)
「わかりました。どこまでできるかわかりませんが信用できる人を紹介します。そこで必死に勉強してください。その方がOKを出せば商会を立ち上げましょう。」
「「ありがとうセリーヌさん。」」
今まで世界樹の大陸から出たことのなかった二人は素人同然だ。だけど、この1か月間必死に勉強した。それはクリフの役に立ちたい。クリフとともに歩んで行きたいという意思の表れだった。
この二人がクリフの嫁になる日は案外近いのかもしれない。
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