第267話 転移魔法陣とエターレイン領へ

プラチナスパイダーの素材を手に入れてグリーンランドに戻ると、エルフとダークエルフが対峙して何やら言い争っていた。


(おいおい、昨日の今日でもう争うのかよ。昨日の大宴会はなんだったんだよ。とりあえず場を収めるか。)


クリフはエルフとダークエルフの間に行き、状況を確認する事にした。


「どうしたんですか?声を荒げて。」


「あっクリフ。いいところに来た。クリフからも言ってやってよ。外の大陸と行き来する転移魔法陣はグリーンランドに設置するって。」


「何言ってるのよ。サラサ。転移魔法陣はダークランドに置くに決まってるじゃない。他大陸との交流だって私達の方がうまくやるにきまってるわ。クリフもそう思うわよね。」


「何言ってんのよ。エルフの方がイメージが良いに決まってるでしょ。」


「何言ってるのよ。エルフみたいな貧乳種族より私達みたいなスタイルの方が絶対印象が良いと思うわ。」


「何よ?」


「何?」


(げっ!!転移魔法陣の事でもめてるのか。それに・・・スタイルを言い出したらダークエルフが生まれた時の状況と一緒じゃないか。一難さって又一難かよ。まあ原因は詳しく話さなかった俺にあるのか。しょうがないうまくまとめるか。)


「サラサもライシャも待って。グリーンランドにもダークランドにも転移魔法陣は置かないよ。」


「「えっ!?」」


「どっちかにおけば揉めるだろうと思ってたからね。今のサラサとライシャみたいに。」


「「それは・・・」」


「まあ俺がはじめに詳しく言ってなかったのが原因だからしょうがないんだけどね。」


「なら転移魔法陣はどこに設置するの?」


「俺としてはグリーンランドとダークランドの中間。世界樹の横に設置しようと思ってる。あそこは森になってないから建物も建てやすそうだしね。」


「新しく村を作るって事?」


「そうだね。はじめから思ってたんだ。グリーンランドとダークランドって距離があるだろ?それに多種族と一緒にいたくないって人もいるだろ?だから中間にエルフとダークエルフが共存できる村があってもいいんじゃないかって。」


「「クリフ・・・」」


「そこまで考えてくれてたのね。」

「サラサごめん。私、自分の事ばかりだったわ。」


「それなら私もそうだわ。ライシャごめんね。」


(うんうん。すぐに仲良くできるのはさすがだね。これで元通りになるはずだ。後は転移魔法陣について説明しないと、とりあえず、ここにはダークエルフも来てるから俺の具体案を伝えるか。)


「エルフだけの村グリーンランド、ダークエルフだけの村ダークランド、そして、エルフとダークエルフが住む村、名前はそうだな、センターランドなんてどうだろうか?」


「センターランド。そこに転移魔法陣を置くのね。」


「ああ。詳細は俺が戻ってからになるけど、ここには特産となるモノが多い。世界樹の実に世界樹の素材を使った武器屋防具。世界樹の葉なんかも利用価値があると思う。それにプラチナスパイダーの糸を使った服飾関係。どれもこの大陸以外では手に入らないものだ。それを俺の領地エターレインから売り出せば人気が出るのはまちがいないだろう。」


「クリフって領主様だったのね。」


「ああ。まあなったばっかりだけどね。だからここの素材を俺の領地の特産品にできれば俺にとってもありがたいんだ。」


「我々にとっても外の世界と交流できるメリットがあります。クリフ殿に頼ってばかりですが、是非この大陸のモノを使ってくだされ。」


「村長、そう言ってくれると助かるよ。」


「ならクリフ。さっそくその転移魔法陣を設置しに行きましょ。設置したら帰るんでしょ。」


「ああプラチナスパイダーの素材も無事に手に入れたしね。」


「私もライシャも準備はできてます。向こうで転移魔法陣を設置したら私達はそこで生活すればいいんですよね?」


「うん。建物が出来上がるまでは俺の屋敷で住んでくれればいいから。」


「「わかったわ。」」


「ライシャ。これはチャンスよ。クリフの屋敷にいる間に仲を深めましょ。」

「わかってるわ。協力しましょ。抜け駆けはダメよ。」

「もちろんよ。」


「ん?どうしたの?」


「「な、なんでもないわ。」


サラサとライシャの内緒話はクリフには聞こえなかった。


(なんかこれって大使館みたいだな。でも転移魔法陣を使っての交流で他でも使えるな。王都と帝都、聖都を結ぶのもおもしろいかもしれないな。)


「サラサごめん。私、自分の事ばかりだったわ。」


「それなら私もそうだわ。ライシャごめんね。」


転移魔法陣の設置場所が無事に決まったので、クリフは村にいる大勢のエルフとダークエルフを引き連れて設置場所予定の世界樹の樹・・・の横に広がる幅3m程の木のない所にきていた。


「とりあえず簡易的なものを作っておくよ。村を作るのはみんなにまかせるから。ここで暮らしたい人を募ってくれるかな?」


「うむ。それはまかせておいてくれ。」


(転移魔法陣がある部屋。素材を置く部屋、作業する部屋・・・よくよく考えると簡易的なモノでもけっこう大変だな。)


クリフは土魔法で簡易的な家を作った。エルフとダークエルフが傍で驚きの声を上げているが気にせずに黙々と作って行った。


「よしひとまずこれでいいだろう。転移先の転移魔法陣をエターレインに設置したらそれを使って又ここに来るから。」


「わかりました。私達もダークエルフ達と話し合ってこの村をどうするか決めていきます。」


「うん。それじゃ頼んだよ。じゃあサラサ、ライシャ。行こうか。」


「「うん。」」


そうして、世界樹の大陸の問題は無事に解決したクリフはウェディングドレスを作る為の素材を手に、エターレイン領の自分の屋敷へと帰るのだった。


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