第268話 クリフの土下座

サラサとライシャとともにエターレイン領の屋敷へと帰ってきたクリフ。転移した先は屋敷の玄関の前だ。そして、玄関から中に入ろうとしたその時、玄関のドアが開いた。


「クリフ様~!」


玄関から飛び出してきたのはセリーヌだった。クリフは抱き着いてきたセリーヌをやさしく抱きしめた。


「ただいまセリーヌ。それにしても帰ってきたってよくわかったね。」


「もちろんです。家の中でゆっくりしてたら、いきなりクリフ様の気配がして帰ってきたのを感じました。いてもたってもいられなくなって外に飛び出してしまいましたわ。」


(えっうそ!?あの一瞬で?気配を感じたって絶対俺が転移する前に気付いてたよね。転移した時にはドアの向こう側にいないと説明がつかないけど・・・。でもさすがセリーヌって感じだよな。相変わらずキレイでかわいいし。あんまり深く考えるのは止めよう。今は家に帰ってきた事を、セリーヌに会えた事を素直に喜ぼう。)


そして、お互い抱き合って喜びあっていると、ふとセリーヌの目に、見慣れない女性が2人映った。


「クリフ様・・・後ろの方は・・・どなたですか?」


一瞬で温かい空気が冷えた・・・気がした。


「いやセリーヌ。これは違うんだ。前も念話で話しただろ?世界樹のある大陸で仲間になったというか。これから世界樹の素材をエターレインで取り扱う為に連れてきたというか。別に新しく婚約者が増えたとかそういうんじゃないんだ。本当に。」


空気が一瞬で冷たくなった事を感じたクリフは、あたふたしながら説明したため、何かまずい事があってそれを隠す為に言い訳しているような感じになった。普通に説明すればセリーヌもわかってくれただろうが、クリフの態度と説明は、よりセリーヌを不機嫌にさせてしまった。


クリフから手を離し、セリーヌはサラサとライシャの元へ向かう。そして、


「はじめまして。クリフ様の妻のセリーヌ・エターレインです。この度はクリフ様がお世話になりました。それで、あなた方は何様でここまで来られたのでしょうか?」


顔は笑顔だが、一切笑ってない雰囲気に、サラサとライシャは背筋をピンと伸ばし固まってしまった。


「セリーヌ・・・」


「というのは冗談ですよ。さあ中にお入り下さい。皆も待ってます。詳しい説明はクリフ様がしてくれるんですよね?」


「あ、ああ。」


「ライシャ。クリフの奥さんってすごく怖いよ。ここに住むのよね?大丈夫かな?」

「サラサ。気持ちはわかるけどここで引き下がったらクリフと一緒にいる事なんて不可能よ。」

「・・・そうね。わかった。頑張るわ。」


(セリーヌ怖ぇ〜。あの顔は絶対冗談じゃないよ・・・)


(クリフ様、後で詳しく聞きますからね。もちろんユーナやナリア達全員交えてですよ。)


(はい・・・)


(わざわざ念話で言ってくるなんて絶対怒ってるよ。土下座して誤り倒すしかないな。)


玄関から中に入ると、スライムメイドのスイムとクインが出迎えてくれた。他にもたくさんのメイドが出迎えてくれた。もちろんスライムメイドだ。


スイムとクイン以外はグランの眷属達だ。


「「おかえりなさいませマスター。」」

「「「「「おかえりなさいませご主人様」」」」」


「ただいま。スイムにクイン。」


「奥で奥様方がお待ちです。」


「えっ?」


(待ってるって何?俺帰って来る事一言も伝えてないよ?)


(私が念話で皆に伝えました。クリフ様が女性と一緒に帰ってきた。と)


(はは。なるほど。)


(セリーヌさん。それは説明を端折りすぎでは?絶対みんな怒ってるじゃん。いや間違ってはないんだけど・・・言い方ってあるじゃん。は〜帰ってきて早々修羅場って・・・部屋に入ったら速攻で土下座して謝ろう。言い訳はだめだ。先制謝罪しかないな。)


状況を理解したクリフは、サラサ、ライシャ、セリーヌを置いてダッシュで他の嫁達が待っている部屋に行き、扉を開けた瞬間ジャンピング土下座をして皆に謝った。


「みんなごめん!!!」


遅れてセリーヌ、サラサ、ライシャの3人が部屋に入ってくる。3人の目の前には土下座をしているクリフ。それを囲むように椅子に座ったまま無表情のユーナ、ナリア、ジャンヌ、ソフィア、グランの5人がいた。


「「クリフ・・・」」


「大丈夫ですよ。いつもの事ですから、みんな久々にクリフ様に会えて嬉しいんですよ。しばらく静観しててください。クリフ様に何かあるわけではありませんし。」


「「はい・・・」」


セリーヌ、サラサ、ライシャの3人が見守る(静観)する中、クリフへの追及が始まった。


「それでクリフ?何に対して謝ってるの?」

ナリアが先制してクリフを問い詰めた。


「新しい女性をここに連れてきたことです。」


「クリフさん。わかってませんね。私達はクリフさんが女を連れ込んだ事に怒ってるんじゃないんですよ。」


「えっ??そうなの?」


「はい。わかりませんか?」


「ごめんなさい。わかりません。」


ユーナが言う怒ってる理由がわからないクリフは素直にわからないと答えた。


「クリフ君が女性にやさしくて、クリフ君に惚れる女性が増えるのは予想してるんだよ。私達が起こってるのはね、クリフ君が何も言わずに連れてきた事だよ。」


「マスターよ。大方、先に言えば怒られるとでも思ったのじゃろう。じゃが言われずに女性を連れてこられた我達の気持ちがわかるか?せっかく結婚するのに捨てられるんじゃないか?と不安になるんじゃぞ。」


「あっ・・・それは・・・」


「クリフはそんな事ないって言うかもしれないけど、言ってくれないと伝わらないわ。今日だって何も言わずに帰ってきたでしょ。」


(たしかに・・・念話する。念話するって言っておきながら全然しなかったのは俺だ。グランの言うように言いづらかったから避けてたのも事実だ。それが彼女達を苦しめてたのか・・・ダメダメだな。俺は・・・)


「本当にごめんなさい!!みんなを捨てるなんてありえません。ダメな所は直しますので許してください!!」


クリフが精一杯謝り、部屋の中がシーンとなったタイミングで・・・


「わかったわ。しょうがないから許してあげる。おかえりクリフ。」


「ナリア。」


「初めからちょっと起こったら許すつもりだったんですよ。おかえりなさいクリフさん。」


「ユーナ。」


「でもほったらしは寂しいんだからちゃんと埋め合わせしなさいよ。おかえりクリフ。」

「そうだよ。あっおかえりクリフ君。」


「ジャンヌ、ソフィア。」


「今度こんなことをしたら我がマスターをブッ飛ばすのじゃ。ようやく帰ってきたの。おかえりじゃマスター。」


「グラン。みんな・・・ありがとう。ただいま。」


「ふふふ。それじゃ丸く収まった所で話をしましょうか。色々話しがあるんでしょ。」


「ああ。重要な話もあるから全員に聞いてほしい。」


再会して早々、土下座をしたクリフは、これからはしっかりと嫁達に連絡しようと再度心に決めた。


そして、世界樹の大陸であった事を説明するのだった。




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