第263話 世界樹の精霊リンと精霊化
「サラサ、ライシャ。たしか世界樹の精霊って世界樹から出れないって言ってたよな?」
「うん。言ってた。」
「ええ。私も聞いたわ。」
「ならこれって・・・」
この大陸にある邪神の像を破壊する為に世界樹の精霊と契約したクリフは、世界樹を出て、ダークエルフの住むダークランドへ向かっていた。
メンバーは、クリフにエルフのサラサ、ダークエルフのライシャ、そして・・・
「ふふふ。主様~。」
今も尚、クリフの腕にべったりと引っ付いている世界樹の精霊のリンだ。世界樹から離れられないと言っていたが、クリフと契約後そのままクリフ達と一緒に移動していた。
「なあリン。世界樹から出られないんじゃなかったのか?」
「主様のおかげです。本来なら世界樹を守護しないといけないんですが、主様と契約して力を与えてくれたおかげで世界樹には私の分体を置く事で、本体の私は自由に移動する事ができるようになりました。」
今のリンの姿は出会った時の少女ではなく、女神アイリーン様と同じような大人の女性に変わっていた。
「それにしても精霊っていつも姿を現しているモノなのか?俺のイメージじゃ普段は精霊界とかにいて、呼ばれたら現れるイメージなんだけど?」
「もちろんそうしている精霊もいるでしょう。ですが、私が主様と一緒に居たいのです。傍にいると力を貰えてすごく温かいんです。」
(これってもしかして、ただ俺と契約したかっただけなんじゃ・・・リンと契約してなくても邪神の像を破壊できたんじゃ・・・。なんかそんな気がしてきた。)
「リン様。クリフが嫌がってます。そんなに引っ付かなくても。」
「そうよ。クリフがかわいそうだわ。」
「あら。サラサさんもライシャさんも本当は同じようにしたいんでしょ。ダメですよ。遠慮しちゃ~。でも、クリフさんの片腕は私用ですからどちらか一方しか同じようにわできませんけど。」
(は~。こんな所セリーヌ達に見られなくてよかった。もし見られてたら刺されるよな。はっ!?そう言えば以前もこんな事があったような・・・)
『クリフ様。クリフ様?』
『セリーヌ!?どうしたの?』
『いえ特になにかある訳ではないんですが、なんかこう丁度今、クリフ様に念話しないといけないような気がしまして』
(さすがセリーヌ。さすが正妻。さすが異世界テンプレ。ナイスなタイミングで念話が入ったよ。でも見てないよね?どこかで監視されてる訳じゃないよね?)
お約束ともいえるタイミングでセリーヌから念話が入ったが、問題を解決する目途がたったので、近々戻れると伝えた所、待ってますねと声高く言われた。もちろんリンが腕に抱き着いている事は言っていない。というか言える訳がなかった・・・
「いやいやリン。サラサやライシャの言ってる事も一理あるぞ。今はそんな事してる場合じゃないだろ?早く邪神の像をなんとかしないと世界樹だって危ないんだぞ。それに俺はすでに結婚を控えてる身だぞ。」
「「えっ!?」」
「主様のおかげで世界樹はすでに復活しています。邪神の瘴気以上の力を主様から頂きましたので。それに主様が結婚していようとなかろうと私が主様を慕っているのは変わりませんから。それに主様なら何人奧さんがいても不思議じゃありません。」
「クリフって結婚してたの?」
「あれ?言ってなかったか?元々ここにきたのは結婚相手のドレスの素材を探す為なんだ。プラチナスパイダーの糸がドレスを作るのに必要だったんだ。」
「そ、そうなんだ・・・」
「ああ。ちなみに嫁は今6人いるぞ。」
「「!?」」
(やっぱり結婚してるって事はちゃんと伝えておかないといけないよな。指輪もしてたし気づいてるかも?とは思ってたけどどうやら気づいてなかったみたいだな。俺も散々サラサやライシャにはハーレムのエルフ枠とダークエルフ枠だな。って考えてたけど、結婚してる事を隠して行動してたらただの不倫だもんな。こういうのはちゃんと俺には結婚してる人がいます。って伝えて、それでもって言ってくれる人じゃないと。)
クリフのよくわからない理論で、結婚してる事をこのタイミングで暴露した事でクリフ達はなんともいえない空気に包まれた。
それでも目的は邪神の洞窟なので、クリフ達は微妙な空気のまま、邪神の洞窟へとむかっていった。
クリフはひたすら無言で歩く。腕に抱き着くリンをちょっとだけうっとうしいと思いながら。サラサとライシャは、「クリフが結婚してる。妻が何人もいる。何人もいるなら私も・・・」とブツブツいいながらクリフの後を歩いていた。
そして・・・
「ついたな。リン。洞窟に入る前に精霊化した方がいいのか?」
「はい。洞窟の中は瘴気で満ちています。私の解呪と主様の解呪で洞窟内の瘴気を取り払いながらの方がいいでしょう。」
「わかった。じゃあ・・・って精霊化ってどうやるんだ?」
「主様はそのままでいてください。私が主様と同化します。」
リンはそう言うと、抱き着いた腕をはなし、半透明になるとクリフの中に入って行った。すると、緑色のオーラがクリフの周りを包み込んだ。
(おーーー。これが精霊化か。)
(はい。私と主様が同化した状態です。)
(たしかにこれなら、いつも以上の力が出せそうだな。)
(はい。世界樹が近くにありますのでその分の力もプラスされます。正直この大陸で私と同化して精霊化すれば無敵と言っても過言ではありません。)
(たしかになんでもできる気がするな。)
(はい。私と主様の愛の大きさですね。)
(・・・)
(とりあえず解呪しながら進むか。)
リンとのやり取りが面倒になったクリフは、邪神の洞窟へと入って行った。もちろん解呪の魔法で洞窟内を浄化しながら。いつも以上の力で浄化できている事に驚きながらもズンズンと進んで行き、すぐに目的地の邪神の像のいる部屋に辿りついた。
部屋には変わらず邪神の像が立っていた。そしてその目は赤く光っていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます