第262話 世界樹の精霊
クリフ達の見つけた階段は螺旋状になっており、特に何かが出てくるという事はなかった。
階段を最後まで降りると、目の前に緑色に光った玉がふわふわと浮いていた。光ってると言ってもその光はとても弱々しかった。
「ねえクリフ。あれが精霊なの?」
サラサが問いかけると同時に目の前の光の玉は強く、そして大きく光った。光が収まるとそこには、アイリーンによく似た少女が立っていた。
「アイリーン・・・様?」
「「えっ?」」
(アイリーン様に似てる・・・けど違うか。そもそも身長が全然違う。あれが世界樹の精霊かな?)
「よく来てくれました勇者クリフ。アイリーン様があなたをこの地に呼んでから、あなたが来るのを待ってました。」
「「勇者!?」」
「クリフって勇者だったの?」
「クリフは勇者・・・クリフは勇者・・・」
「いや、まあ確かに勇者・・・かな。」
(まさか精霊にいきなり素性をバラされるとは。まあ別に隠してる訳じゃないからいいんだけど・・・てか世界樹の精霊は俺の事を知ってるのか・・・)
「それより、あなたは世界樹の精霊様で間違いないのですか?」
「はい。私が世界樹の精霊です。クリフさんがアイリーン様と一瞬間違えたのは私がアイリーン様から生み出された精霊だからです。今は力を失ってこんな姿になっていますが、本来ならアイリーン様と同じ姿なんですよ。」
(なるほどね。そういう事か。ていうか俺のテンプレアンテナすごいな。思った通りの展開じゃん。)
「力を失ってるのは邪神の瘴気が原因ですか?」
「さすがですね。もうそこまで調べたんですね。その通りです。」
「精霊様は全てを知っているんですね。どうして精霊様は解決しなかったんですか?」
「したくてもできなかったのです。私はここから出る事ができません。エルフやダークエルフの者がここまで来てくれれば伝える事はできたのですが、今までにここに来た者は最初の巫女以外には一切おりませんので。」
「巫女?」
(なるほどなるほど。元々は巫女がいて世界樹の精霊様と意思疎通ができていたが、巫女が死んでからは意思疎通ができなくなったのか。いやいや、巫女の引継ぎがちゃんとできてなかったのが原因じゃん!!)
「はい。私がここから動けないので、重要な事は巫女を通じて伝えていたんです。ですが、ダークエルフの騒動の時に巫女が命を失いました。元々争いなど無縁の場所でしたので次代の巫女の事など考えていませんでした。巫女が亡くなって初めて、次代の巫女の選定ができない事に気付いたのです。」
「・・・。」
(まあ誰にだってミスはあるか・・・。終わった事を言ってもしょうがない。世界樹の精霊様はここで起きた事を全て知ってるみたいだし、これからどうするかが大事だよな。よし。)
「精霊様はここで起こった事、今の状況も含めて教えて頂いてよろしいでしょうか?私が精霊様に代わり、この事態を解決したいと思います。」
「ええ。わかりました。まずは今の状況をお伝え致します。邪神の瘴気について知っているという事は邪神の洞窟に行ったんですよね?」
「はい。」
「全ての原因は邪神の像にあります。あれはエルフが邪神に唆されてダークエルフに姿を変えた頃です。ダークエルフになった者達は邪神の用意した像に世界樹の実を捧げるようになりました。捧げた実は邪神の像から出る瘴気によって瘴気に侵され、土に還っていきます。邪神の目的はこの大陸を瘴気まみれにして、世界樹を枯らす事でした。私の力を使って瘴気を浄化していったのですが、瘴気を浄化するのに力を使う事で、世界樹の力は年々衰えていきました。世界樹の実の数が減っているのもその影響です。」
(概ね予想していた通りだな。なら邪神の像を破壊すればうまく収まるのか??)
「なら邪神の洞窟に行って、邪神の像を壊せば、状況は解決するんですか?」
「クリフ。でも邪神の像を壊すと呪いを受けるんじゃないか?」
「はい。ライシャさんの言う通り、邪神の像には壊した者を殺す呪いと世界樹の実を捧げなかった時に契約違反で死の呪いがかかる魔法がかかっています。」
「ならどうやって壊せばよいのですか?」
「クリフさん。私と契約して頂けませんか?クリフさんなら邪神の像を壊しても呪いを受けずに済むかもしれません。ですが、相手は神なので、何があるかわかりません。私と契約し精霊化した状態で邪神の像を破壊すれば呪いを受けずにこの大陸を元に戻す事ができると思います。」
「契約・・・ですか?」
「ええ。私も大分力が落ちています。クリフさんと契約する事で力を元に戻さないとこの大陸は滅びてしまいます。」
(ここに来て精霊が仲間になる・・・か・・・。えっ!?これってハーレム計画の精霊枠が埋まるって事なのか?いや精霊様はここから出られないって言ってた。契約しても基本はここにいるのか?契約したら呼び出しもできるだろうからやっぱりハーレムメンバーが増える・・・のか・・・)
クリフはどうするか一瞬悩んだが、悩んだ所で解決する為には精霊と契約するしか方法がないので、契約する事に同意した。
「わかりました。世界樹の精霊様と契約します。」
「ありがとうございます。これでこの大陸が救われます。クリフさん、いえ我が主よ。私に名前を付けてください。それで契約となります。」
「名前・・・。そうだな~。アイリーン様と似ているからアイリ、いやリーン・・・。うんリンにしよう。」
「素敵なお名前ありがとうございます。私は今から世界樹の精霊リンです。主様これからよろしくお願いします。」
「うん。よろしくね。」
(プラチナスパイダーを探しに来ただけなのに、けっこう大ごとになってるな。さすが俺。異世界主人公のトラブル体質はどこに行っても定番だな。)
世界樹の内部で精霊と会い、この大陸を救う為に精霊と契約を交わしたのだった。
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