第264話 邪神の像の破壊と世界樹の巫女

「クリフ!!邪神の像の目が赤いわ。」


「ああ。間一髪間に合ったな。」


世界樹を守る為に、邪神の像を破壊しようと精霊化して、邪神の洞窟に入ったクリフ達の目に映ったのは、赤い目をした邪神の像だった。


ダークエルフ達はこの邪神の像の前に世界樹の実を捧げている。捧げる量に問題が無ければ像の目は青く光り、少ないと黄色く光る。そして更に少なくなると赤く光るのだ。


今まで邪神の像の目が赤く光ることはなかった。それは、邪神の像の目が黄色く光り注意のサインを出すと、ダークランドに保管している世界樹の実を捧げてうまく調整していたからだ。


なぜ、そうまでして邪神の像に世界樹の実を捧げるかと言うと、邪神との契約である。一度、捧げた世界樹の実を勝手に食べたダークエルフの者がいたが、その者達は全員、死を遂げていた。


その状況を知ったダークエルフ達は、邪神の像の目が赤く光らないように気を付けていた。


そして、クリフ達の目の前には、今まで見たことがない赤い目をした邪神の像が立っていた。


(前に来た時より瘴気がひどい気がするな。まあ今は精霊化して浄化しながら来たから俺達に影響があるわけじゃないけど、ギリギリセーフだったな。)


『リン。普通に像を破壊すればいいのか?』


『はい。ですが念のため、像の周辺に結界を張って頂けますか?壊れた拍子に瘴気が噴き出すかもしれませんので。』


『オッケー』


「じゃあ邪神の像を壊すぞ。一応邪神の像の周りは結界で覆うし、俺達の周りにも結界を作っておくぞ。」


(さて像の破壊か・・・。あまり強い魔法だと洞窟自体を壊しかねないな。いや結界で覆ってるし大丈夫か。粉々にするのなら雷魔法かな。)


クリフはライトニングの魔法を唱えた。クリフの手から雷が邪神の像に向かっていく。雷が当たると、見事に邪神の像が粉々に砕け散った。リンの予想通り、邪神の像が砕けると同時に黒い靄が結界内に広がった。


(お~。リンのいう通りに結界を張っててよかった。まがまがしいぐらいの瘴気だな。これってほっておくと消えるのか?浄化した方が早いか。)


『リン、結界内の瘴気も浄化しといた方がいいよな。』


『はい。邪神の像は無事に壊せたと思いますが、真っ黒で確認ができません。浄化して像が砕けた事を確認する必要があります。』


『オッケー。』


クリフは浄化魔法を使い、結界内に溜まっている瘴気を浄化した。クリフの浄化魔法で結界内は徐々にクリアになっていく。瘴気がなくなると、そこには粉々になった邪神の像がバラバラに転がっていた。


赤く光っていた目は光を失い、黒くなっていた。


「やったわねクリフ。」


「これでもう世界樹の実を捧げなくて良いのね。」


洞窟内も再度浄化して瘴気が完全に無くなったのを確認して、クリフは精霊化を解いた。


「主様のおかげでこの大陸の問題が解決しました。ありがとうございます。」


「いや俺はちょっと手助けしただけだよ。タイミングもよかったしね。今までリンががんばってくれたおかげだよ。」


「はい。これでエルフとダークエルフが争う理由もなくなりました。今後はお互い切磋琢磨してこの大陸をよくしていければいいんですが・・・」


「もちろんです。ライシャさんと一緒に行動してダークエルフも私達と同じなんだってわかりました。エルフ全員がすぐという訳にはいかないと思いますが、協力していく事はできると思います。」


「そうね。サラサのいうように、同じ大陸で生活していく者同士、協力していかないといけないわね。少しずつ交流を深めて、こんな事が二度とないようにしないとね。」


(お~。世界樹の問題が解決したら、種族問題も解決したぞ。世界樹って素材としても優秀だろうから、これから大陸の外とかとも交流していくんだろうか?いや俺が仲介すればいいか。世界樹の素材を使った武器とか防具ならかなり人気が出るだろうし、それに世界樹の葉とか世界樹の雫なんかもアイテムとして優秀なはずだ。ゲームなら大体購入する事も出来ないほどのアイテムだもんな。)


「いいね。世界樹の素材は俺のいる大陸でも、需要がかなりあるはずだ。大陸が落ち着いたら俺のいる国とも交流してほしいな。」


「「もちろんよ。」」


「そうですね。この機会に大陸の外に交流を広げてもよいかもしれませんね。私も主様についていく予定ですし。」


「えっ!?やっぱりリンは俺についてくるのか?世界樹にいなくて大丈夫なのか?」


「もちろんです。世界樹には私の分体がいますし、丁度タイミングよくエルフの子とダークエルフの子がここにいます。二人には世界樹の巫女になってもらえば意思疎通もできますので。」


「「巫女!?」」


「ええ。二人にはエルフとダークエルフの橋渡しになってもらいます。この大陸をしっかりと導いてくださいね。」


「ライシャどうするのよ?このままじゃクリフについていけなくなるわよ。」

「そうね。何か考えないといけないわね。精霊様だけクリフについていくなんてゆるせないわ。巫女なんかにさせられたらずっとこの大陸から出られないわ。後で二人でどうするか話し合いましょ。」

「わかったわ。」


サラサとライシャの二人は、ヒソヒソと話しをしていた。その声はクリフやリンには届いていなかった。


「とりあえずダークランドとグリーンランドのみんなにこの事を伝えようか。きっと喜ぶだろうし。」


(これでようやく当初の目的だったプラチナスパイダーに手を付けることができるな。村に伝えた後、リンに聞いてみるか。てかリンは俺についてくるんだな。まあいいけど・・・サラサとライシャは難しそうだな。巫女なら大陸から出ることはできないだろうし・・・安心したような、ちょっと残念なような・・・)


邪神の像を破壊したクリフ達はダークランドとグリーンランドに、世界樹が守られ今後は安定して世界樹の実が取れる事を伝えた。


するとお互いの村が歓喜に包まれ、ダークランド、グリーンランド合同の宴会が行われることになったのだった。

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