第219話 再会と別れ

(どこの青春ドラマだ?)


クリフは、今地面に仰向けのまま倒れ込んでいた。


(この距離感・・・パインが手を伸ばして来るのを感じる。しょうがない。パインとの戦闘が楽しかったのも事実だしな。)


クリフは隣で同じように仰向けになって寝ているパインに手を伸ばした。もちろん拳はグーにしてだ。


お互いの拳がぶつかると、二人は大きく笑いだした。


「「ははははは。」」


二人が笑っていると、セリーヌ達が近づいてくる。


「クリフ様。大丈夫ですか?」


「パインも。大丈夫なの?」


クリフはセリーヌの、パインはナリアの手を取って起き上がる。


「セリーヌありがとう。大丈夫だよ。」


「すまないナリア。助かる。」


起き上がった二人は固く握手した。


「さすがクリフだな。聖剣がなければいけるかと思ったけど、無理だったみたいだ。」


「俺も勝てると思ったけど、勝ちきれなかったよ。でもすごく楽しかった。またやろう。」


「ああ。」


「ふふふ。男の友情ですね。」


「パイン?私達と一緒には来れないの?今のあなたならお父様もきっと喜んで受け入れてくれると思うわ。」


「ナリア・・・ありがとう。でもごめん。多分バハムートさんから聞いたとは思うけど、俺はこの階層から出られないんだ。」


「そう・・・。」


「そんな悲しそうな顔するなよ。俺は一度死んだんだ。それにお前らに再度会えただけで十分だ。まあずっと一人だから偶には来てくれるとうれしいけどな。」


「パイン・・・」


「とりあえず俺の知ってる事を話すぜ。クリフ。今日はここに泊まっていくんだろ?お前らの事を教えてくれよ。あれからどんな事があったのか?」


「あ、ああそうだな。食事でもしながらゆっくり話すか。」


「おっそりゃいいな。ここに来てから食事なんかしてないから楽しみだ。それにクリフと戦って腹が減ったぜ。」


「いやいや食事なんかしてないって言ってたじゃん。腹なんか減るのか?」


「そうだったな。だけどなんか腹が減った気分なんだよ。ほら早く準備してくれよ。」


そうして、食事の準備をし、クリフ達は再会を祝った。


「そういやパイン?さっきバハムートの話が出てたけど俺達の事知ってたのか?ここからは動けないっていってなかったか?」


「ああ。厳密い言えば出る事はできるんだ。キューブ様に許可を貰えばダンジョン内を移動する事ができる。バハムートさんがここに来てクリフ達の事を教えてくれたんだ。」


「そうか。」


「ああ。バハムートさんもクリフ達と一緒に行きたかったって嘆いてたぜ。」


「そう・・・バハムートが・・・。」


「それよりもクリフ達の事教えてくれよ。随分親しくしてるじゃねぇか?もしかしてそういう事か?」


クリフ達は、顔を赤くしながらもパインの質問に答えていった。時にはパインに茶化されながらワイワイガヤガヤと4人で夜遅くまでつまらない話で盛り上げるのだった。


「それじゃあな。クリフ達が奈落の底を攻略するのを祈ってるぜ。」


(パイン・・・できれば連れ出してやりたいけど・・・さすがにこれから先一人で過ごすのは大変だよな・・・)


「パイン・・・」


「そんな顔するなクリフ。昨日も行ったけど俺は満足してるんだ。だから俺の事なんか気にせず先に進め。魔族だって迫ってるんだろ?無駄にする時間なんてないはずだ。」


『マスター。私を召喚して頂いてよろしいでしょうか?』


『エバ?』


クリフは聖剣エクスカリバーを召喚した。元々エクスカリバーはパインが持っていた剣であり、パインとエクスカリバーはの付き合いはクリフよりも長かった。


『パイン?久しぶりね。』


『ああ。エクスカリバーか?久しぶりだな。』


『今はマスターに名前を付けてもらってエバって呼んでもらってるわ。』


『エバか・・・いい名前だな。』


『ええだからパインもエバって呼んでよね。それと、パインがさみしそうしてるから、しょうがないから私がパインの傍にいてあげるわ。』


『『えっ!?』』


『何を驚いてるの?パイン坊は昔っから私がいないとダメなのを知ってるからね。しょうがなしよ。しょうがなし。ボッチはかわいそうだしね。マスターいいですよね?』


『ああ。エバ。俺からもお願いするよ。パインを頼む』


『マスターありがとう。任されましたーーー。パイン。改めてよろしくね。』


『ああ・・・ありがとうエバ。ありがとうクリフ。』


クリフ、パイン、エバの念話は、エバが気を利かせて、セリーヌ達にも聞こえるようにしていた。


3人の話を聞いていたセリーヌ達は号泣だった。もちろんパインもだ。クリフはそんな様子をゆっくりと眺めていた。


「よかったですね。」


「ああ。これで一安心だ。俺達はパインの言うように攻略を続けよう。100階層までもう少しだ。」


「91階層からは普通のダンジョンって言ってたわね。」


「ああ。後は100階層まで進むだけだ。がんばろう。」


クリフ達はパインと別れ、91階層へと降りて行くのだった。


一方その頃・・・


魔族達は80階層のバハムートを倒し、85階層まで足を進めていた。徐々に距離を縮める魔族達。クリフ達は追い付かれるのか・・・


☆☆☆★★★☆☆☆


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