第218話 90階層のボスは・・・
「「「「パイン!?」」」」
奈落の底ダンジョン90階層まで進んだクリフ達の前にいたのは元勇者で死んだはずのパインだった。
「久しぶりだなクリフ。」
その声はとてもさわやかな声でクリフ達は本当にあのパインなのか戸惑った。
「本当にパインなのか?」
「ああ。」
そう言ってパインはこちらに近づいて来る。クリフは一瞬身構えたが、次の瞬間、あっけに取られた。
「すまなかった。」
そう。近づいてきて何をするかと思えばいきなり頭を下げ謝ったのだ。
「「「「!?」」」」
「クリフ。あの時は俺を止めてくれてありがとう。セリーヌにユーナ、それにナリア。あの時はすまなかった。俺はもう死んでいるから謝罪する事しかできないが、もう一度会えたらきちんと謝罪しようと思っていた。」
「クリフ様・・・」
(死ぬ前のパインは確かに憑き物がとれたような顔をしてた。今は嫌な感じはしないし、あの時と同じ顔をしてる。生き返った?でもなんで?たしかに一度死んだ人が生き返って仲間になるってよくある展開だけど。)
「パイン。顔を上げてくれ。俺は君の謝罪を受け入れるよ。」
「そうね。私も許すわ。パインがああなったのに、少なからず帝国の影響があったのも事実だしね。それに、今は幸せだしね。」
「ナリア・・・ありがとう。みんなも・・・そう言ってくれると助かる。」
「それで、どうしてパインはここにいるんだ?死んだんじゃなかったのか?わからない事だらけだよ。教えてくれ。」
「ああ。たしかに俺はあの時死んだ。だけど神様が現れてな。ここにスカウトされたんだ。魔王の核がここにあるのは知ってたから、ここに入ればきっとクリフに又会えるだろうと思って引き受けたんだ。まさかナリアやセリーヌ、ユーナまで一緒だとは思わなかったけどな。」
「神様?」
「ああ。このダンジョンを管理してる遊戯神キューブ様だ。」
(遊戯神・・・会った事あったかな?思い出せない・・・)
「じゃあ俺達と戦うのか?」
「ああ。俺を倒せないようじゃ、このダンジョンはクリア出来ないだろうし、それに・・・純粋に、クリフとは又戦ってみたいと思ってたからな。」
「パイン・・・」
「色々聞きたい事はあるだろうが、ここにきたならまずは俺と戦ってからだ。奈落の底90階層の主パインにな。」
「わかった。」
「クリフ様・・・」
「セリーヌ、安心して。パインからは嫌な感じは全くしない。それに・・・俺は負けないよ。」
すると・・・
クリフの前に、木剣が現れた。
「これは?」
「別に殺し合いをする訳じゃないんだ。これならセリーヌ達も安心できるだろ?俺ももちろん木剣を使う。」
「パイン・・・あなた・・・」
クリフは木剣を拾いパインと対峙する。
「試練なのに木剣で本当によかったのか?」
「ああ。別に命のやり取りがしたい訳じゃないからな。こっちの方が気にせず思いっきりやれるだろ?」
「本当は?」
「お前が聖剣持ったら勝てねーだろ。」
「やっぱりね。」
クリフはそう言ってパインに攻撃を仕掛ける。
(悪いけど圧勝させてもらうよ。さすがに聖剣を持ってないパインなら楽勝だろうし。)
クリフは素早くパインの後ろに周りこみ一撃で勝負を決めようと剣を振り下ろす。
クリフは勝利を確信したが、パインはクリフの動きが見えていたのか、クルッと振り返ってクリフの剣を受け止めた。
「なっ!?」
「今度はこっちの番だ。」
パインがクリフに攻撃を仕掛ける。パインの攻撃は早く、そして的確にクリフの急所を狙ってきた。
(早い!?コイツ本当にパインか?前と比べて強すぎないか?なら・・・)
クリフは転移魔法を使い、パインの背後に移動した。
(もらった!!)
クリフの攻撃がパインを捉える。
だが、クリフの攻撃は空を斬り、パインには当たらなかった。
「危ない危ない。やっぱりその転移魔法は反則だよな。」
「今のは転移?どうして・・・。それにその力は・・・」
「戸惑ってるようだな。いいぜ教えてやる。俺はここの管理を任された時に神様からスキルを一つもらったんだ。そのスキルはコピーって言うんだが。」
「まさか!?」
「そうだ。これは相手の能力やスキルをそのままコピーするスキルだ。だから今の俺は、クリフと全く同じ強さになってる。」
「なんてチートな・・・」
「ちーと?よくわからんが安心しろ。このスキルはこの90階層でしか使えない。言っただろ?試練だって。ここは自分と同じ能力のヤツと戦う試練だ。」
(なるほど。自分の分身と戦うみたいなものか・・・。たしかに定番と言えば定番。テンプレではあるな。)
その後は一進一退の攻防が続いた。どちらも同じステータス、同じ魔法、同じスキルが使えるのだ。なかなか勝負はつかなかった。
(なるほど。だから真剣じゃなくて木剣で戦おうって言ったのか。聖剣出されちゃ勝てねーって言ってたのも納得だ。だけどこれも悪くない。)
「笑ってるわ。」
「二人共、楽しいんでしょうね。」
「子供みたいですね。」
セリーヌ達は、二人の戦いを暖かい目で見ていた。はじめはハラハラしていたが、二人が笑顔を浮かべながら戦ってる姿を見て、単純に安心したからだ。
そして・・・
最後は結局、勝負がつかないままお互い倒れこんだのだった。
☆☆☆★★★☆☆☆
お読みいただきありがとうございます。
新作も無事に投稿致しました。ブログでは先行的に公開しています。
引き続き、評価に応援、よろしくお願いいたします。
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