第216話 進めない81階層・・・

81階層に入ってからクリフ達は思うように先に進めないでいた。下への階段がなかなか見つからないのだ。


81階層に降りてすぐの部屋から黄色の扉を開けて、すぐに出てきたデュラハンを倒してから、クリフ達はひたすら黄色の扉を開けては先に進んだ。


20部屋目に到達した時に、それは起こった。行き止まりではなく、上に上る階段目の前にあったのだ。つまり振り出しに戻ったのである。黄色の扉には入る目印が残っていたので戻ってきたのは間違いなかった。


今度は別の扉を進もうかとも考えたが、クリフ達は再度黄色の扉を開けた。普通なら中にいるのはデュラハンのはずだ。しかし、クリフ達が黄色の扉を開けて中に進んでもデュラハンはいなかった。


「デュラハン・・・いないですね。」


「一度倒してるからでしょうか?」


「多分ユーナの言う通りだと思うよ。再発生するのに時間がかかるんだと思う。もしかしたら明日になったら復活してるのかも。」


クリフの予想は当たった。その日下へ降りる階段を見つける事が出来なかったクリフ達は翌日、同じように81階層を進む。まずはクリフの言ったように魔物が復活してるか確かめる為、通った事のある部屋に入った。すると・・・中にはしっかりと魔物が復活していた。


ただ、クリフ達は中の魔物を見て驚いた。昨日その部屋で倒した魔物は、頭が3つある犬の怪物ケルベロスだったからだ。だが、今目の前にいる魔物はデュラハンだった。


「どういう事?」


「1日経つと魔物が復活するのと、ダンジョンの中がシャッフルされるんじゃないかな?だから多分だけど宝箱とかも復活してるだろうし中身も違ってると思うよ。」


「・・・なるほど。ありえますね。宝箱を入手できるのも、魔物が再出現するのも、私達のレベルアップを考えるのならいい事だと思います。ですが、先に進めないのはちょっと危険ですね。」


「たしかに、セリーヌの言う通りだね。さすがに昨日1日進んで下に降りる階段が見つからなかったのはちょっときついね。」


(何かヒントみたいなモノでもあればいいんだけど・・・。ゲームとかなら道案内とか壁にヒントが彫られてるとかあると思うけど、ここってゲームじゃないからな~。テンプレ展開ならどんなのが起こるんだろう?実は下への階段は入口にありました。とかかな?いやでも、下に降りたって同じ階層なんだからそんな事はありえないよな・・・えっ?ありえないような??)


「そうですね。このまま下への階段がなかなか見つからなかったら、魔族達が追い付いてくるかもしれませんし。かといって、別々に進むのは危ないし・・・。」


(そうなんだよな~。扉は4つ。俺達は4人・・・それぞれが別の道を進めるならダンジョン攻略の効率は4倍になる。かといって、セリーヌ達を一人で進ませるのは危険だしあり得ない・・・どうしたものか・・・。)


クリフ達は結局、この日も下に降りる階段を見つける事ができなかった。80階層に上る階段がある部屋。スタート地点に戻ってきたクリフ達は今日の探索を諦めて階段を登っていく。


もちろん80階層には階層主の神龍バハムートがいた。出会った時と同じように大きな姿のままで。


「どうしたのだクリフ達よ?お主達は先に行ったのではなかったのか?」


「実は、81階層を探索してるんだけど下に降りる階段が見つからないんだよ。昨日も今日も一日部屋を移動してたけど、出てくるのは魔物か宝箱だけなんだよ。バハムートなら何か知ってるかと思って。」


「そうだな。一度81階層を経験した者達なら多少のヒントは構わぬだろう。クリフよ。一度しか言わぬからよく聞くのだ。『見えている物だけが全てだと思うな。』我に言えるのはここまでだ。」


「見せている物だけが全てではない?それって・・・。」


「後はクリフ達で考えてみる事だ。」


「わかった。ありがとうバハムート。みんなで考えてみるよ。もしかしたら魔族達がここに来るかもしれないからバハムートも気を付けてね。」


「な~に、我は死ぬことはない。その者達が我が試練をクリアすれば同じように先に通るだけだ。悪いなクリフ。魔族とは言え依怙贔屓はできん。」


「うん。わかってる。」


その後、クリフ達は夜営しながら明日の行動を話し合い、移動した先の部屋をくまなく調べながら進んで行く事を決めたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そして・・・


奈落の底ダンジョン71階層では・・・


「おい。どういう事だ。先に進めないではないか。」


「しばらくお待ちくださいファルカス様。今調べておりますので。おい早く扉を開けろ。」


魔族達が71階層の扉の前で立ち往生していた。


その数ざっと20名だ。帝都を襲った全員で奈落の底ダンジョンに来たのだろう。クリフ達が何カ月かかけて進んだ道を魔族達は驚異的なスピードで進んでいたのだ。


一行に扉があかない事にイライラするファルカス。我慢の限界が来て、


「もういい。俺が直接ブチ開けてやる。」


そう言って、扉に進み、扉を破壊しようと思いっきり扉を殴りつけた。


だが・・・


ファルカスの拳は扉には当たらなかった。いや正確には扉に当たらずすり抜けたのだ。


「なるほど・・・こういう事か。」


ファルカスが71階層の扉の謎に気づき、魔族達は先に進もうとする。


しかし、71階層の扉から先に進めたのは20人中5人だけだった。


「これは!?」


「うむ。通り抜けれたのは上位級の者だけか。もしかすると、これ以上は上位の存在しか先に進めぬのかもしれぬな。」


「なるほど・・・」


クリフ達が81階層で四苦八苦している頃、魔族達が徐々に迫ってきているのだった。


☆☆☆★★★☆☆☆


お読みいただきありがとうございます。

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