第214話 神龍バハムート

「力は十分にわかりましたので、どうぞ先にお進みください。」


クリフ達が唖然とする中、体長10メートルを超えるドラゴンが精いっぱい身体を小さくしてそう言ってきた。


奈落の底ダンジョン80階層のボス部屋へと突入したクリフ達。奈落の底ダンジョンの今までの最高到達記録は、71階層なので、それ以降はどんな魔物が出るのか、ボスはどんな魔物なのか全くわかっていない。


情報がないまま突入した80階層。そこにいたのは神の名を持つドラゴン、神龍バハムートだった。バハムートは人語を話し、討伐ではなく力を示せば先への扉を開くと言ってきた。


クリフは情報のないまま戦うのを危険だと思い、相棒の『エバ』と『ラン』を取り出し神龍バハムートに向かっていき切り付けた。


すると・・・


先ほどの態度はどこに行ったのか、神龍バハムートは急に態度を変え、クリフ達に対し土下座する勢いで降参の意を示してきたのだった。


(えっ!?これどういう事?力を示すも何も軽く攻撃しただけなんだけど・・・。もしかして武器をしまったら攻撃してくるとか?いやいやいや仮にも神の名前をもってるんだ。そんなずるい事はしないよな?・・・しないよね?)


クリフは、剣をしまって、バハムートに話かけた。


「え~っと扉を開けてくれるって言う事でいいんだよね?」


「はい。もちろんです。すぐ開けますから。どうか殺さないで。」


(いやいやアナタ死なないって言ってたじゃん。)


目の前のバハムートはクリフがよほど怖いのかブルブルと震えていた。


「いやいや降参してる相手に剣を向けたりしませんから。ほら。もう剣もしまってるでしょ」


クリフとバハムートのやり取りを聞いて、遠くで避難していたセリーヌ達が近づいてきた。


「クリフ様。大丈夫なんですか?」


「うん。なんか、扉を開けてくれるみたい。」


「もちろんです。すぐに開けさせていただきます。」


(なんか口調も変わってるし・・・)


バハムートはダッシュで扉を開けた。扉の先には下に降りる階段が見えていた。


「クリフさん。折角だしバハムートさんに奈落の底の事色々と聞いて見ませんか?」


「それはいい考えだね。」


クリフは扉を開けて戻ってきたバハムートに話掛けた。


「バハムート。ちょっと話をしたいんだけどいいかな。」


「はい。何でも聞いてください!!」バハムートは直立して姿勢を正した。


(大きすぎて話をするのがしんどいな。グラン達のよう人化できないのかな?人化できなくてもサイズを変えたりすることができれば助かるんだけど・・・)


「いやいやそんな感じじゃ逆に話しづらいよ。別にとって食う訳じゃないからもっと楽にしてよ。普通に話してくれたらいいから。それよりバハムートが大きすぎて話がしづらいんだけど、人化とかサイズを小さくしたりとかできないの?」


「う、うむ・・・そうか。ならそうさせてもらおうか。」


そう言って、バハムートはみるみる小さくなっていった。最終的にはクリフ達と同じぐらいの大きさになり、先ほどの威圧感は全くなくなった。ちょっと可愛らしさすらあった。


「あら?小さくなれるのね。そして可愛いわ。バハムート。よかったら私達と一緒に先に進まない?」


ナリアは小さくなったバハムートが気に入ったのか仲間に誘っていた。


「すまない。その申し出は非常にありがたいが、我はお主達とともに行く事はできない。」


「どうして?」


「我はこの階層からから動く事ができん。いや正確には動く事はできるのだが、神との約束で我はこの80階層に留まらなければならぬのだ。神との約束は契約と同じだ。破る事はできん。折角誘ってくれたのにすまんな。」


「そんな・・・。」


「だが・・・そうだな。折角きたのだ。なんでも聞いてくれ。我の知ってる事なら話そう。我の元に人が来るなど久しくなかったからな。たしかにすぐに先に行ってしまうのは味気ない。」


(ん?久しくなかった・・・という事は人が来た事があるって事か。久しくって言ってるから魔族達が先に進んでる可能性はこれでなくなったな。でも前人未踏って言ってたけどそうではないんだな。)


「ここって前人未踏の地って聞いてたんだけど、俺達以外にも来た事ある人がいるんだね?」


「そうだな。いつぐらいに来たか覚えてはおらぬがお主達が初めてではないな。」


「そっか。じゃあバハムート。一緒に食事でもしながら話を聞かせてよ。」


「おおそれはありがたいな。食事など久しくしておらぬからな。」


「ドラゴンステーキとか、野菜もパンの色々あるから。あっドラゴンにドラゴンの肉ってNGだった?」


「いやそんな事ないぞ。71階層から79階層に出るドラゴンだろ?俺はレッドドラゴンの肉が好物だ。」


(おっ。特に同じドラゴンだからダメとかはないんだね。やっぱりレッドドラゴンか。たしかに食べた中ではレッドドラゴンが一番おいしかったもんね。ドラゴンも同じような味覚をしてるのかな?」


「レッドドラゴンならたくさんあるから大丈夫だよ。」


そういって、クリフはバハムートがいる傍でバーベキューの準備を始めた。バハムートが人型になれるならコテージの中でもよかったが、小さくてもドラゴンだ。家の中では動きづらいと思い、外でのバーベキューになった。


そして、クリフ達は81階層からの事、奈落の底ダンジョンの事など、バハムートの知っている情報を教えてもらい、先へと進むのだった。


☆☆☆☆☆


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