第204話 大精霊フェニックス

朝起きると身体が動かない事に気付いたクリフ。


(身体が・・・動かない・・・両手が・・・重い・・・)


クリフは何が起きた!?と一瞬思ったが、そんな思いは更に一瞬でなくなった。なぜ身体が動かないか瞬間に思い出したからだ。


(そうだった。今日はセリーヌ達と全員で一緒に寝たんだった。)


クリフは仰向けで両腕を水平に伸ばす形で寝ており、左隣りにはクリフの腕に頭を乗せて抱き着くセリーヌが、右隣には同じくクリフの腕に頭を乗せて抱き着くナリアがいた。ナリアの隣にはユーナが横向きの体制で寝ていた。


(昨日の晩は大変だった。たしかに僕の隣は二つしかないから一人は引っ付いて寝れないけど・・・。)


全員で寝るのは事前の取り決めで決まっていたが誰がクリフの隣に来るかは決まっていなかった。セリーヌ達は誰がクリフの隣になるのか話合い、時にはクリフが決めてと言い寄られ、困ったクリフは順番でいけばいいのでは?と提案するも、じゃあ今回は誰が良い?と再度詰められる始末だった。


困ったクリフは最終的に今日はじゃんけんで。と言って、じゃんけんに勝ったセリーヌとナリアがクリフの両隣を勝ち取る形になった。


両手は動かないし、足もガッチリと組まれていて全く動く事が出来なかったが顔だけは動かす事ができたので顔を左に向けた。


すると・・・


セリーヌはすでに起きておりバッチリと目が合った。目が合うとセリーヌは優しく微笑んだ。


(可愛い・・・ってそうじゃない。)


「おはようセリーヌ。起きてたの?」


「おはようございます。はい。10分前程でしょうか?クリフ様の寝顔を見てました。」


「起こしてくれたらよかったのに。」


「ふふふ。クリフ様の寝顔がとても可愛らしかったから起こすのを忘れてました。」


そう言ってセリーヌはクリフに顔を近づけて優しくキスをした。


「改めておはようございます。クリフ様。」


「うん。おはよう。」


(くそー。可愛すぎるだろこれは・・・。は〜・・・トイレに駆け込まないと・・・。)


「ちょっと!私達も起きてるわよ!」


クリフが顔を逆側に向けるとナリアが、そしてナリアの身体にもたれかかってるユーナが顔を真っ赤にしてクリフを見ていた。


「え〜っと・・・見てた・・・よね?」


「もちろんよ。セリーヌばっかりずるいわ。私もお、おはようのキスがしたいわ。」


ナリアに言われ、クリフはナリアに近づき優しくキスをした。


「おはようナリア。」


「うん・・・おはよう・・・クリフ。」


(うん。ナリアも可愛い。)


「私も!私もお願いします。」


クリフが動けないのでユーナはクリフにまたがり自分から顔を近づけてクリフにキスをした。


「ふふ。おはようございますクリフさん。」


「おはよう。ユーナ。」


(3人とも可愛すぎるだろ。)


異世界テンプレの朝のイチャイチャタイムを終えたクリフは。更に異世界テンプレの朝からトイレで賢者モードを経て、今日も奈落の底ダンジョンの攻略を開始するのだった。



朝から賢者モードになる毎日に慣れてきた頃、クリフ達は奈落の底ダンジョンの60階層まで進んでいた。


クリフは相変わらずのレベル900のままだったが、セリーヌ達はレベルを130まで上げていた。ちなみにこの世界のレベルの上限は99だ。セリーヌ達はこの世界でもトップクラスの実力を身に付けていた。


「ここに出るのは大精霊フェニックスよね?」


「うん。50階層に出たイフリートの上位版って感じだね。一度倒しても1回復活するらしいから2回倒さないといけないみたいだね。」


「2回倒せばいいだけでしょ?クリフの魔法で守られてるなら楽勝よ。」


「そうですね。50階層のイフリートも問題なく倒せましたし火山エリアの魔物達もうまく連携して倒せました。ここも油断せずにいけば大丈夫だと思います。」


「はい。この火山エリアで私も大分水魔法がうまくなりました。フェニックス相手でも通用すると思います。」


クリフ達は軽く作戦会議を行って、60階層のボス部屋に突撃した。ボス部屋は至る所に炎が舞っており、真っ赤な鳥が上空を飛び回っていた。


「あれがフェニックスね。セリーヌ。どうするの?」


「とりあえずここからユーナの水魔法と私の氷魔法を試してみるわ。ナリアは接近に備えて。クリフ様はサポートを。」


「「「了解。」」」


セリーヌとユーナがフェニックスに魔法を放つ。上空を飛び回るフェニックスは魔法を避けて行く。


だが・・・


セリーヌはうまくフェニックスを追い詰めるように魔法を放つ。ユーナはセリーヌの意図を汲んで、それに合わせて魔法を放った。


(うまい!さすがセリーヌだな。)


ユーナの放った魔法はフェニックスに直撃する。火の塊のフェニックスにとって弱点である水魔法は効果絶大だった。


魔法を喰らったフェニックスは先程よりも大幅に飛ぶスピードが落ちた。それを見るセリーヌはここぞとばりに氷魔法をフェニックスに放った。


さすがに飛び続けるのが難しくなったのか、フェニックスはゆっくりと地上に向かって降りてきた。


そしてそこにはセリーヌの指示の元、槍を構えるナリアがいた。


「さすがセリーヌ!作戦通りね。後は任せて。」


槍が当たる距離になり、ナリアは攻撃を仕掛ける。フェニックスは上空に逃げようとするが、魔法でダメージを受けているので思うように動けないのか、ナリアの攻撃を防げないでいた。


チャンスと捉え、ナリアは次々に攻撃を仕掛ける。耐えきれなくなったフェニックスは最後に大きな叫び声を上げて、激しく爆発するのだった。


「ナリア!?」


爆発に巻き込まれたナリアを心配するセリーヌ。


爆発の煙が収まると・・・


誇りまみれになったナリアが手を振っていた。


「よかった。」


(危ない危ない。結界魔法をかけといてよかった。この辺りから魔物も強くなるだろうし、そろそろ僕も戦闘に参加しようかな。)


ナリアの無事を確認したクリフは、安全地帯となったボス部屋で夜営の準備を行うのだった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る