第194話 奈落の底ダンジョン15階層~20階層

15階層を出発したクリフ達は20階層を目指しダンジョンを進んで行った。クリフ達の身に付けている指輪にはクリフが開発した感覚共有の魔法が付与されている。


この魔法は、指輪を持っている者が経験した事を他の指輪の所有者にも経験させる事ができる魔法だ。要はクリフ、セリーヌ、ユーナ、ナリアが指輪に感覚共有の魔法を付与しているので、魔物を倒せば普段の4倍の経験値が得られるという事だ。


なので、今日の攻略はナリアが前衛でユーナが中衛、後衛がクリフとセリーヌという陣形で進んでいる。クリフが中衛ではなく後衛になっているのは、戦闘はクリフ以外の3人で行い、クリフがひたすら自分の周りを、大小様々な大きさで多種類の属性魔法をぐるぐる回しているからだ。


昨日は、セリーヌとユーナが訓練の為にしていたが、クリフが行ってもその経験がセリーヌ達に共有される事になる。セリーヌ達にはひたすら魔物を倒してレベルを上げてもらい、魔力操作や気配察知などの細かい部分はクリフが行動して共有する事にしていた。


(感覚共有してるからって、気配察知とか覚えていない属性魔法とか覚えるって訳じゃないだろうけど僕が経験した事はセリーヌ達の経験にもなる。なるだけ色んな事をしてセリーヌ達を鍛えないとね。)


クリフ自身が作った魔法ではあるが、効果はまだよくわかっていなかった。さすがにクリフの使える魔法をセリーヌ達が使えるようにはならないだろう。クリフが参考にしたのは異世界テンプレでよくある経験値10倍とか、必要経験値10分の1のスキルなのだから。


朝の事があったからか、ナリアが先頭でとても張り切っていた。魔物を見つけるとダッシュで駆け寄り槍を一閃していた。


「ナリア。張り切るのはいいけど、がんばりすぎると疲れるよ?」


「このくらいなら大丈夫よ。せっかくクリフが指輪に感覚共有の魔法を付与してくれたんだもの。どんどん魔物を倒さないと。」


「ほどほどにね。」


その後も、ナリアを筆頭にセリーヌ、ユーナと連携しながら20階層まで進んで行った。


20階層のボス部屋の前で休憩しながら、セリーヌ達のステータスを確認すると、


セリーヌ・・・レベル45 → レベル46

ユーナ・・・レベル40 → レベル42

ナリア・・・レベル42 → レベル44


セリーヌ達のレベルが上がっていた。


「感覚共有の魔法はうまくいってるみたいだね。昨日は全然レベルが上がらなかったのに、今日はみんなレベルが上がってるよ。」


「本当ですか!?」


「うん。20階層までの魔物はたしかレベル20~30だったはずだから、それでもレベルが上がるなら効果が出てるって事だよね。」


「そうね。20階層までは余裕があったけど、21階層からは慎重にいかないとね。私達と同じレベルの魔物も出てくるだろうし。」


「そうだね。まあそこはうまく連携しながら進めば大丈夫だと思うよ。僕もちゃんとサポートするし。」


「助かるわ。でもなるべくクリフの力を借りずに攻略できるようにがんばるわ。」


「そうですね。クリフ様に頼り切りじゃダメですもんね。私も頑張ります。」


「私もです。」


「うん。それじゃあ20階層のボスを倒そうか。キマイラにスケルトンにゴブリンマジシャンだけど大丈夫?」


「ええ。セリーヌとユーナとちゃんと打ち合わせしたから大丈夫よ。」


クリフ達は20階層のボス部屋に突入した。ボス部屋にはいると、扉が閉まり、部屋の中央に魔物が現れた。事前情報通り、キマイラとスケルトンが5体にゴブリンマジシャンが3体だ。


「それじゃあ作戦通りに行くわよ。セリーヌは先にゴブリンマジシャンをお願い。ユーナはスケルトンを。」


「「わかりました。」」


(なるほどね。魔法を使うゴブリンマジシャンはセリーヌの魔法で攻撃して、スケルトンは相性のいいユーナが担当する。ナリアはキマイラと1対1で戦うって作戦か。)


セリーヌ達の成長の為、クリフは手を出さず戦闘を見守っていた。


ボスといえど、20階層ではまだまだ弱い。セリーヌの魔法でゴブリンマジシャンは瞬殺。スケルトンもユーナの聖魔法で一撃だった。ナリアもキマイラを前にして落ち着いて槍を振っていた。


(うん。ここまでは大丈夫みたいだね。問題なしかな。これから魔物が強くなってきたらこんなにうまくはいかないだろうから、明日はレベルを上げる事も意識した方がいいな。どうせならギリギリの戦いよりもレベリングしまくって強くなってから進む方が安全だしね。)


ナリア達の作戦が見事にはまり、ボスはあっというまに消えていった。


「セリーヌ、ユーナ、ナリアお疲れ様。問題なく倒せたね。」


「はい。ゴブリンマジシャンが魔法を使う前に倒すことができました。」


「私も。スケルトンが近寄ってくる前に魔法で倒せました。」


「キマイラが空を飛ぶとやっかいだと思ったから近づいて牽制しながら攻撃したけどうまくいったわ。」


「うん。まったく問題なかったよ。この調子で明日も頑張ろう。」


20階層を突破したクリフ達は魔物がいなくなった安全地帯で今日の攻略を終えて休む事にした。


クリフは部屋で休んでいたが、セリーヌ達はいつもの女子会を行っていた。婚約者となったナリアが主導でどうやってクリフと一緒に寝るかを真剣に話し合っていた。


ダンジョン攻略とは別にセリーヌ達の戦いは始まったのだった・・・


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